法人のお客様Networked Live 事例紹介 東海テレビ放送株式会社 様

東海テレビ放送株式会社 様

フラッグシップサブを10年先まで見据え“IP”に
ST 2110環境の充実と設計の最適化で
高いコストパフォーマンスを実現

東海テレビ放送様は、制作系サブ設備更新にあたり、ソニーのNetworked LiveによるIPベースのプロダクション設備を導入され、2023年2月から運用を開始されました。

東海テレビ放送株式会社
技術局 映像制作部 主幹
日髙丈尚 様

東海テレビ放送株式会社
技術局 映像制作部 主査
渡部克弥 様

東海テレビ放送株式会社
技術局 映像制作部
金山龍平 様

フラッグシップサブとなる“Aサブ”の更新

今回更新を行ったのは制作番組を担うAサブになります。当社では、制作系のスタジオとしてAスタ・Bスタ、サブとしてAサブ・Bサブがあるほか、報道用のNスタ・Nサブ、小規模のPスタ・Pサブ、それぞれ4つのスタジオとサブがあります。A・Bスタの面積は同等ですが、A・BサブのうちAサブは帯情報番組だけでなく全国ネットの番組や特番なども制作できるような「オールマイティに対応できるサブ」として作っています。

A・BサブとA・Bスタはそれぞれ隣り合わせとなっていて、局舎建設時から自由に組み合わせて使えるような設計としております。Aサブは、平日午前9時50分から放送している情報番組「スイッチ!」のほか、バンテリンドーム ナゴヤ(2023年6月現在)からの野球中継や競馬中継、ゴルフ中継での受けサブ、毎年3月に全国ネットで放送している「名古屋ウィメンズマラソン」のセンターサブなど特番の収録にも使用しています。

Aサブの旧設備となるスイッチャーやルーターなどの主要部は2006年に導入をしたもので、各機器の保守終了などが迫っていたことが今回の更新の大きな理由でした。今回は照明系設備やCG系設備を除く、スイッチャー・ルーター・モニター・TD/PD/TK卓・VE卓・VTRラック・音声卓など、映像系・音声系を中心とした更新を行いました。

10年後を見据えればIP、局舎の恵まれたネットワーク環境もIP化への後押しに

更新の計画は2020年にスタートしました。当初はSDIベースとIPベースの両方で検討を始めました。担当者間では、IPも規格的に成熟してきており、この先を見据えるならIPにしておくべきではないか…という考えもありました。

当社の回線センターは2017年にSMPTE ST 2022-6ベースでIP化しており、大きなトラブルもなく運用できていたので、社内的にはあまりIPへの忌避感などはありませんでした。

他にも、中京競馬場やバンテリンドーム ナゴヤとのダークファイバーが敷設済であり、またCATVの心線貸しサービス対応のダークファイバ―も入線し始めているため、IP化による「リモートプロダクション」の実証実験などを進めやすい環境が整いつつあります。

加えて、A・Bサブのマシンルームは背中合わせとなっていますが、仮にAサブ更新で十分な容量のスパインスイッチなどを導入しておけば、今後のBサブ更新時には乗り入れも容易で、「リソースシェア」なども実現しやすい環境です。これらのことを考えると、IP化により見通せるメリットの方がはるかに大きく感じられました。

時間経過と技術革新でリーズナブルに、IPが「十分に見合うコスト」に

しかし2020年の段階では、IPはSDIに比べて大幅に高コストだったため、IP化は諦める方向に傾いていました。その後、更新が1年延期になったことも関係すると思いますが、要求仕様を再び詳細に煮詰めて各社からご提案をいただく段階になって、ソニーからとても魅力的なIPベースの提案をいただきました。そのおかげで一気に方針がIPへと傾くことになります。

正式な発注を行った2022年初頭にかけ、IPを巡る周辺環境にも技術革新が進みました。例えばマルチビューアーや音声ミキサーなど、周辺機器のSMPTE ST 2110対応も進み、必要とするSDI-IPゲートウェイの数やMUX/DEMUXなどの数も激減し、コストダウンにつながりました。

IPベースの提案については、ソニーが最も具体的でした。全国や世界での導入実績の豊富さ、その安心感もあり、ソニーの「Networked Live」でのIP化の方向が固まりました。

最適化され減ったIPゲートウェイ

将来を見据え選んだ拡張性の高いスイッチ

「今までと変わらない使い勝手」こそがIP化の大成功

Aサブ更新にあたってのコンセプトは「今までと変わらない使い勝手」と「IP化による『メリットだけ』を上手に享受する」の両立でした。IPに特化することではなく、IP化ならではのメリットを享受できるようにすることに重点を置きました。常駐スタッフだけが扱うなら良いのですが、デイリーの番組では、月に1回しか触らないような外部スタッフも設備に触れます。SDIベースでやってきた人が扱えないシステムにはしたくありませんでした。

ユーザーインターフェースの面では、従来通りクロスポイント制御のハードウェアリモートコントロールパネルを各卓に設置してもらったほか、ソニーに作ってもらったカスタムのアプリケーションでの集中設定なども行えます。また、ソニーにSIを担当していただいた当社の大型中継車と同様のユーザーインターフェースに対応していただけたことで、初めて触れるスタッフでも違和感なく操作できるようになりました。

加えて、従来システムでは、システム構築を担当する人間の能力に依存してしまう部分も大きかったですが、今回の更新で、画面のGUI上で、映像からタリーまでわかりやすくルーティングもできるようになり、番組にあわせたシステムの変更も容易になりました。

導入当初は「IPになったから」ということで、皆さん勉強にいらしたのですが、使い勝手は今までと全く変わらないので拍子抜けして帰っていったほどです。「IPだから何かが変わった」というより「今までと変わらなく使えた」ことこそが大成功でした。

従来と変わらないハードウェアパネルの設置

システム設定を行うソニーSI製アプリケーション

IPシステムをいかした今後のビジョン

2023年2月末の運用開始から1週間ほど「スイッチ!」の放送をAサブから行い、その後、全国ネット番組「名古屋ウィメンズマラソン」のセンターサブとしてAサブを運用しました。この間、私たちが立ち会ったほか、ソニーの担当者さんも初の全国放送運用のためお立合いいただいたのですが、何事も起こらずに無事に放送ができました。何も起こらないことのほうが気になったほどです。特に「名古屋ウィメンズマラソン」の時は、サブ内が機材やスタッフで溢れかえっていたこともあり、ソニーの皆さんには別室で待機いただいたのですが、結局一度もお呼びすることはありませんでした。

現時点の総合評価は「IPにしても変わらず使えている」状態で、「IPにしてよかった」はこれからです。当社では、中継用に導入しているシステムカメラHDC-5000シリーズのCCUをIPオプション付きで導入しており、リモートプロダクションの実験や検証に取り組んでいきたいと考えています。

「Networked Live」でのIPサブをいち早く導入したことで、実際にやってみてスキルアップを図れる環境が手に入りました。とても大きな布石になったと感じており、現場の意欲向上にもつながっています。具体的なことは一切決まっていませんが、今後の更新でも、Aサブに引き続きIPシステムの導入を考えていくつもりです。

フォローの手厚さも「ソニーにしてよかった」ところ

IP化や「Networked Live」の検討にあたっては、導入済みの他局・他系列局の見学をアレンジしていただいたり、IP中継車の持ち込みデモを実施いただいたり、導入後のイメージもかなり具体的に掴むことができました。さらに私たち現場に向けたIP勉強会の開催だけでなく、上層部にもわかりやすくIPの解説を行ってくださいました。おかげで導入への意志決定もかなりスムースに運んだと思います。

関わっていただいた皆さんのお人柄の良さだけでなく、ソニーは仕事すべてが本当にきっちりとしていたのが印象的で、とても大きな安心感がありました。それらもソニーにしてよかったと思うところです。

取材:2023年5月

Networked Liveとは

「Networked Live」で実現した名古屋ウィメンズマラソンのマルチな映像制作

インターネット配信で東海テレビプロダクション様がクラウド中継システム「M2 Live」を運用

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