テレビ愛知株式会社 様は、制作スタジオ・サブの設備更新にあたり、ソニーの「Networked Live」によるIPベースのプロダクション設備を導入され、2024年8月から運用を開始されました。
同社 総合管理局 技術センター 技術部 安松 侑哉 様に、導入機材・システムのコンセプトや成果・評価について伺いました。
テレビ愛知株式会社
総合管理局 技術センター
技術部 安松 侑哉 様
当社には、制作系の第1スタジオ・サブと報道系の第2スタジオ・サブがありますが、今回、設備更新を行ったのは、第1スタジオ・サブになります。今回の更新におけるコンセプトの1つがIP化でした。今後を考えると「IP化していく流れは間違いないだろう」と思っていました。IP化することで、実際の設備の運用を通じて、将来に向けたIP運用のノウハウを蓄積していこう、と考えました。
今回の更新計画検討時にライブプロダクションスイッチャー『MLS-X1』が発表されました。『MLS-X1』はIPベースでの運用に一層フォーカスしていることと、HD運用時に1プロセッサーで4M/E、64入力/64出力に対応していること、さらに4Uサイズのコンパクトな筐体にも魅力を感じました。特に野球中継などにおいては、従来の3M/Eスイッチャーでは不足を感じる場面が多かったこともあり、できれば4M/E欲しいと考えていたので、ぴったりでした。
『MLS-X1』はM/E数が多いので、スイッチャー卓の3M/Eコントロールパネルとは別に、1M/Eタイプの一体型コントロールパネル『ICP-X1116』も導入しました。これからは放送だけでなく、インターネット配信なども行う必要があり、一つのM/E列を使って、別のスイッチャー担当が仕込みを行ったり、インターネット配信を行ったりするなど、多面的な用途を想定して、2台のコントロールパネルを接続できるようにしています。
『MLS-X1』は64入力あるので、マスタールームからの外線系なども含めて、全ての信号を入力することができ、システムのシンプル化と柔軟化につながりました。キーヤー数も増え、機能も充実してパワフルになったことで、従来は3M/Eでギリギリやりくりしていた場面も、3M/Eで余裕になりました。
TK卓でテイクするスーパーについては、従来はDSKを外付けしていましたが、『MLS-X1』内蔵のキーで賄えるようになりました。以前は、動画や動きのあるテロップなどはXDCAMやキャラクタージェネレーターから出していましたが、クリッププレーヤーが内蔵となったことで、スイッチャー単体でも出せるようになりました。少し長い尺の素材でも対応でき、マクロを組めばタリー連動のような形でプレイさせることができます。
今回の更新では、スタジオ内での運用は勿論ですが、中継に持ち出した際の運用性も念頭において機器選定を行いました。ソニーのシステムカメラは豊富なラインアップがありますが、まだまだHDでの運用がメインになることから、マルチフォーマットポータブルカメラ「HDC-3000シリーズ」の中から選定することにしました。このシリーズの中でも、『HDC-3500』は、HDトランクやHDプロンプターといった映像伝送機能が充実しており、中継で利用することを考えると大変魅力的でした。また、今回のタイミングでは導入を見送りましたが、光学式可変NDフィルター『HKC-VND50』を、後から実装できる拡張性があることも高評価でした。これらの観点から、『HDC-3500』6台を導入しました。スタジオでは、3台をペデスタル、1台をカメラクレーンで運用し、番組によって、さらに2台増設して使えるようにしています。
カメラコントロールユニット(CCU)についても同様に、中継持ち出しを考慮して、ハーフラックサイズのCCU『HDCU-3500』を選択しました。当社の情報・バラエティ番組では「パラ収録(全カメラの同時収録)」が多いので、『HDCU-3500』ならば、パラ収録に便利なCCUレコーディングオプション『HKCU-REC55』を搭載できることも、大きな決め手となりました。
専用の収録アプリケーションソフトから、6台分のCCUに対して、一斉にRECのStart/Stop制御ができ、効率的です。また、各CCUは1.2TBの大容量のメモリが搭載されているので、長時間の収録でも、VTRチェンジなどで撮影を中断することもなくなります。
CCUレコーディングオプションを導入すると、CCUにST 2110インターフェースオプション『HKCU-SFP50』が実装できなくなってしまいますが、この点については、外部のSDI/IPコンバーターを活用することで、問題なく運用ができています。
CCUレコーディングしたファイルは、一度CCU内部に収録されますが、このデータを外付けのUSBストレージに自動転送して取り出しています。また、CCU内のファイルは、FTPによるネットワーク転送も可能です。2025年中には、局内のネットワーク側も対応ができる見込みですので、FTP転送機能を活用して、撮影から編集まで物理メディアを介さないワークフローが完成する見込みです。
今回はハードウェアのマスターセットアップユニット(MSU)に代えて、カメラコントロールネットワークアダプター『CNA-2』とWeb MSUライセンス『HZC-MSUCN2』を導入しました。Web MSUは、同一カメラネットワーク上のWebブラウザ経由で、システム内のカメラシステム全体を統合監視・遠隔制御ができるアプリケーションで、サブ内のどこからでもアクセスして、カメラオペレーションができる点が大変便利です。今回、VE卓をサブ内の最前列に配置し、2列目の操作卓は、番組の特性に応じて任意の作業ができるスペースにしています。KVMスイッチにより、どの卓でもどの作業でも行うことができますので、VE卓にオペレーターがいる場合でも、2列目の操作卓からWeb MSUにアクセスし、VEオペレーションのフォローをすることもできるようになりました。これはハードウェアタイプのMSUでは実現できなかった柔軟なオペレーションで。まさに「どこからでも機器にアクセスできる」というIPシステムの魅力ですね。
今回、メインのモニターパネルにはマルチビューアーを導入し、マルチビューアー用には法人向けブラビア「BZ40Lシリーズ」を導入しました。メインのモニターパネルに75インチの『FW-75BZ40L』を2面、音響卓と照明卓に55インチの『FW-55BZ40L』を各1面の計4面を配置しています。メインモニターには32型業務用4K液晶モニター『PVM-X3200』、各卓のピクチャーモニターには18型マルチフォーマット液晶モニター『LMD-A180』を配置しています。マルチビューアー1台からメインのモニターパネル2面、もう1台から音響卓・照明卓の2面、という構成のため、マルチビューアーの障害対策や遅延対策としてメインのモニターパネル下段には、『LMD-A180』を10台配置しています。
本番中はサブの照明をダウンライトのみにしますが、事前準備中は蛍光灯もつけて作業しています。そのため、以前は座る場所によってモニターが見づらくなることがありました。「映り込み」を大幅に抑えた「ディープブラック・ノングレアコーティング」を備えた法人向けブラビア「BZ40Lシリーズ」は、蛍光灯をつけているときでも映り込みが気になるような場面はなく、とても満足しています。
『PVM-X3200』と『LMD-A180』はもとより、「BZ40Lシリーズ」も同じソニー製なので、気になるような発色の違いはなく、それぞれのモニターの機種を意識せずに運用できています。
今回の更新では、「放送と配信を1つのサブシステムで同時に行うことによる省力化」もテーマとしていて、これを実現するために『ICP-X1116』を導入し、スイッチャーパネルを分けることにしました。実際、生放送と配信の2プログラム制作の機会がありましたが、この時には、サブ内2列目の卓の右端に『ICP-X1116』を配置し、タブレットPCにスイッチャーのWebメニューを表示し、放送とは別の配信を、スイッチャー担当が1人で、ミキサーやテロップも兼務しました。『MLS-X1』自身にもマルチビューアー機能がありますので、それも活用しました。
ライブ配信にはCMはありませんので、放送側のCM中もカメラマンやスタジオフロアにはそれを意識してもらう必要があります。今回の更新では、ライブ配信などマルチプログラム制作に対応したタリーシステムをソニーに組んでもらいました。
この事例ではサブ内にコントロールパネルを置きましたが、「Networked Live」なら、同室である必要もなく、ネットワークさえ引ければ、どこでもスイッチングができますし、完全に別の番組も制作が可能です。そのあたりもIP化のメリットだと感じます。
番組ごとの準備や片づけは、「Networked Live」の導入で早くなりました。番組管理ソフトを用いて、保存していたシステム構成・設定を簡単に読み込めます。マルチビューアーのレイアウトも一緒に管理できるので、同じ番組でも、ディレクターによって異なるレイアウトの好みを個人別に保存できます。VE担当からは「楽になってやりやすくなった」、スイッチャー担当からは「やれることが増えた」と好評です。
「Networked Live」は、「操作性はそのままに、できることが増えた」という印象です。導入前はIP化すると障害が見えづらくなりそうな心配がありました。しかし、それもソニーの提案してくれた「Zabbix」の導入で、全体を一目で把握できます。ネットワークの死活監視、帯域ひっ迫から各機器の温度上昇やエラーなど、何か問題があればすぐにアラームを出してくれます。スポーツ中継用のスローサーバーも今回はIP化しましたが、通常は電源を入れていません。サブが立ち上がってスローサーバーの電源を入れていないとアラームが鳴ります。CCUの電源が入っていないだけでも鳴ります。こういうケースは、SDIベースでは「画が出ない」「リモートが利かない」だけでしたが、「Networked Live」でシステム全体の障害可視性が向上しました。
今回の更新では、他社も含めて検討をしましたが、ソニーにお願いしてよかったと思います。私たちの現状の使い方をよく理解してくれていて、IP化するにあたって、SDIでの使い方をそのまま踏襲できるような提案をくださいました。経験値も大きく、他社製の音声系についてもソニー側で検証をしてくれて、全体に責任を持っていただけたことで、安心して任せることができました。各機材についても、私たちの要望を満たしてくれる新しいモデルが出揃ったところだったのも、絶好のタイミングだったと思います。保守にも加入し、何かあっても即座にリモートで診断をしてもらえる体制になったのも、大きな安心感につながっています。
今後は、リモートプロダクション的な運用も考えています。通常はリモートプロダクションというと、全てネットワーク伝送ですが、回線費などのバランスを考えて映像の伝送のみSDIで行うパターンです。『HDC-3500』を中継先に持ち込み、『CNA-2』でリモートコントロールすることで「VEは局のサブで」というスタイルです。
今後は報道系の第2スタジオ・サブの更新、さらにはマスター更新も控えております。今回導入したIPサブを積極的に活用し、知見を高め、局全体のIP化に挑んでいきたいと思います。
※本ページ内の記事・画像は2025年2月に行った取材を元に作成しています