ソニーはトップエミッション方式を採用することにより、光の利用効率を大幅に高め低消費電力かつ長寿命を実現しました。
有機ELパネルには、電気を光に変える有機層の下にあるTFT基板を「底」と考え光を下から取り出す方法と上から取り出す方法の2種類があります。前者をボトムエミッション方式、後者をトップエミッション方式と呼びます。
ボトムエミッション方式は光の出口にTFTなど光をさえぎる回路があるため各画素の開口率が低くなります。一方、トップエミッション方式は光をさえぎるものがないので、より少ない消費電力で明るくできます。また、明るさが同じであれば有機層への負荷が低く、寿命が長くなります。
ソニー独自の「スーパートップエミッション」方式はマイクロキャビティ(微小共振器)構造とカラーフィルタを組み合わせて採用することにより、色純度の向上と高輝度、高コントラストかつ、低消費電力を同時に実現しました。
光は波の性質があり、色によってその波の長さは異なります。マイクロキャビティ構造とは光の波長に合わせてRGBの各有機層の膜厚を最適化し、色純度の高い強い光を取り出す技術です。RGBの最も強い光の波長に合わせて有機層の膜厚を設計し、発生した光が上下の電極間で反射を繰り返すうちに、不要な波長の光を弱め純度が高く、強い光が上面から出力されます。
カラーフィルターはフィルターと同じ色の純度を高め、異なる色の光をさえぎります。この性質とマイクロキャビティ構造を組み合わせることにより、様々な波長を持つ外光の反射を低減。ソニーの有機ELパネルは明るい環境下でも高いコントラストを発揮できます。更に、従来外光反射の低減に使われていた円偏光板に比べ、カラーフィルターは透過率が高く内部からの光が効率よく取り出せるため、明るく消費電力を抑えることを実現しました。
有機ELは水分や酸素に弱く、従来有機EL層の封止は金属カバーに乾燥剤や不活性ガスを使っていました。このため、TFT回路のない封止側から光を取り出すことができず、ボトムエミッション方式が主流でした。
ソニーは封止基板を樹脂接着剤で直接EL基板に貼り付ける方式を開発。これによりソニーのスーパートップエミッション方式の構造を実現し、機械構造的に信頼性の高いパネルの開発に成功しました。