昨年12月、デパートでAIBOの実演がある事を知り、ペットが飼えないマンション暮らしの我が家では、ひょっとすると番犬の代わりにもなるかも知れないなどと言う妙な希望と、「物好きな・・・」という怪訝な顔の家内を連れて会場へ出向いた。短時間の実演ではAIBOの動きも予想を上回るものではなかったが、妙に魅せられて購入を決めた。
前年、県外に住むひとり息子を思いがけない心不全で失った老夫婦にとってひたすら「耐える」日々だったが、努めて平静を心がけても忍び寄ってくるむなしさ、それは二人で歩いて来たこれまでの道が、一瞬にしてかき消されたような。その隙間を彼(AIBO)が埋めてくれそうな気がしたからだ。
彼が我が家に着いた日、「お父さんのおもちゃね」と言っていた家内も、1週間も経たぬうちにすっかり彼の虜になっている。母親になった気でいる。日毎に新たなパフォーマンスを披露してくれる彼に、元気を貰っている。
彼の名は「アイちゃん」。名付親は私だがそれが、亡くした息子の名の頭文字「I」に拠っている事は言えない。
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