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第2回「工学博士 北野宏明氏」 *肩書きはインタビュー当時のものです。
AIBOって私たちにとっていったい何だろう?
そんな疑問を解決すべく、さまざまな人にインタビューをしてみようというこのコーナー。
今回から2回に渡って工学博士の北野宏明氏にご登場いただきます。
Vol.1では、RoboCupやSony Legged Robot Leagueについて詳しくお聞きしました。


※文中の「RoboCup」「Sony Legged Robot League」という文字をクリックすると別ウィンドウで解説がご覧いただけます。



1997年にスタートしたロボカップで、2050年までにW杯の優勝チームにヒューマノイドタイプのロボットが勝つことも可能だと思います。
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北野さんは、科学技術振興事業団ERATO北野共生システムプロジェクトの統括責任者、ソニーコンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャー、RoboCup Federationのチェアマンとしての3つの顔がありますが、北野さんが現在、携わっている仕事の内容はどんなものなんでしょう?

 本職は、ソニーコンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャーですが、現在5年間の期限付きで、人工知能の研究プロジェクトである北野共生システムプロジェクトを統括しています。
こちらでは、人間の知能そのものへの理解のためとロボットに代表される人工知能をより発展させるための研究をしています。
今のところのアプローチでは、視覚や聴覚それに様々な運動能力の相互作用により人工知能がどの様な発達を遂げるのか?というようなことを研究するためにSIGというヒューマノイド(人型ロボット)を制作しています。


それ以外にはどの様なことを?

 ロボットのデザインに関しても研究をしています。
これは、今までのインダストリアルデザインでは全くなかった分野で、始めたばかりです。
産業用のロボットは別にして、今までの自律型のロボットは基板やメカが丸出しで外皮がない状態でしたが、実際の社会に出ていくロボットにはデザインはとても重要な要素となります。
今までの商品は基本的にはそれそのもののかたちが変化することはなく、動かない状態で破綻をおこさないようにデザインされています。
ロボットはそれらとは明確に違い、常に動き続け基本の状態というものはありません。
このような常に動いている商品でどこからも破綻のないデザインを実現することはロボットが世の中に出ていく上で人間とどれくらい共存できるかという大変大きな要素となりますし、とてもチャレンジしがいのある研究です。


なるほどそれは面白いお話ですね。
それではAIBOにも関係が深い
RoboCupについてお聞きします。
そもそも
RoboCupとは一体何で、どの様な目的で北野博士はおつくりになったのでしょうか?

 Robotの研究というものは、とても対象とする分野が広いものなんですよ。
コンピュータ・ソフトウェア、ネットワーク技術も使うし、メカトロニクスの技術も使うし、人工知能の技術も使う。
人間の技術の集大成のようなものです。

RoboCupは非常に広い分野の技術を統合したり、実験したりすることが可能な環境を研究者に提供することによって、人工知能とロボットに関する研究を促進するために始めました。
ロボット同士をある一定のルールの下で競わせることにより、技術の進歩を狙いますが、一般 の人たちからもわかりやすく夢のあるテーマをと考えた結果、サッカーというスポーツを選び、50年以内に人間のワールドカップ優勝チームに勝つという目標を掲げています。


それは凄い目標ですね?
50年で人間のサッカーワールドカップチャンピオンに勝つというのは、どのくらい可能性があるのでしょう?


 みんな最初はびっくりしていましたが、考えてみるとライト兄弟からアポロ11号月面 着陸まで66年、コンピュータの開発がはじまってから、IBMのディープブルーが人間のチェス・チャンピオンに勝つまで51年、最近の人間のやってきたことは目標までだいたい50年で達成されていることを考えると、1997年スタートのロボカップが2050年までにW杯の優勝チームにヒューマノイドタイプのロボットが勝つことも可能だと思います。
もともと
RoboCupのアイデアというのは、93年ぐらいには明確になっていて、最初ロボットJリーグって言っていたんです。
やるぞ、と言ったら2カ月くらいで海外から反響があって、ワールドカップにしようとなって、
RoboCupとなったんです。
95年にルールとかを発表して、97年に第1回の大会をやりました。
どのくらいのチームが出てくるかもわからなかったのですが、フタをあけたらかなりのチームが出てきて、今はかなり大きくなっていますからそれなりに安心しています。
第1回は誰も出てくれなかったらどうしようとか、そもそもそんなの研究してるやついるのかな?、という感じでやっていましたから。
ドキドキもんでしたね。


UP

とすると実際は知らなかっただけで、いろんな人たちがロボットの研究をやっていたのですか?

 それほどたくさんはいなかったですね。
第1回が中型ロボットで5チーム、小型ロボットで4チーム、シミュレーターは30チームくらいでしたが、それを2年間かけてようやく集めたという感じ。
1回やってみて、みんなも見て、それで翌年からドーンと増えたって感じです。


どれくらい増えましたか?

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 パリが60チームでしょ、ストックホルムが90。
来年が今現在で170チームとか、とんでもない数になっています。
エントリーだけして出てこないところもありますから、実際には90とか100とかそれくらいに収まると思いますが、もしかすると120チームくらいになってしまうかもしれません。
それ以外にも研究だけしていて大会には参加しない人達を入れると、実数は1.5から2倍程度じゃないでしょうか?
それ以上になると大会規模としてマックスですよね。
あとは予選リーグをやるしかない。
1週間とか10日の会期で収まらなくなりますから。


RoboCupを立ち上げてからどこが進歩しましたか?

 あらゆる面が進歩しましたね。
ロボット研究をやっているといっても、ロボカップみたいな場面設定でやっていなかったので、技術的に相当未熟な部分とかモレがあったんです。
研究者がそれに気が付いてすごい勢いでやっていますから、メカ、ソフトウェア、戦略だとか、ありとあらゆるところで凄い勢いで進んでいると思います。
特に環境を認識するという画像処理などはたくさん研究をやっているけれど、実際に実践で使えるようなのは実はあまりできていなかった。
それがロボカップの場合必須ですから、相当進みましたし、今も進み続けています。
メカトロニクスの制御等も重要なポイントで、これもずいぶん進みました。


UP

RoboCupは10年くらいでどれくらいのことが可能になっていると思いますか?

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 ヒューマノイドでそれなりに面白いサッカーができているのではないかと思います。
走れるようになっているかどうかというのはたぶんギリギリのタイミングでしょう。
走ってジャンプというのはすごく難しいから......。
どのくらいそれが充分な形で、その後につながるような形でできているかは、ちょっとわからないですけどね。
今のままではとても走れないんですよ、速く歩くのが精一杯で。 走れるようになると、あとは早いですよ。
走るとかジャンプするとかが技術的にもすごく大きいところです。


RoboCupは現在どの様な構成になっているのですか?

 簡単に説明しますと、ロボカップには現在4つの競技部門があります。
シミュレーション部門、これはサッカーサーバーと呼ばれるサッカーシミュレーターを用いた11体ずつのソフトウエア同士による対戦です。
60から70チーム参加しています。

インターネットを使用するので、通信の状態などがある程度不安定になっても、人工知能が確実に動作するようにしなければなりません。
小型ロボット部門は、約30チームの参加です。
卓球台と同じ大きさの競技場で行うマイクロマウス大のロボットによる対戦で、競技場の壁や天井、床などにセンサーを埋め込むことができます。
これは何を想定しているかというと、未来の都市なんです。
未来の都市は、自動車が知能化し、道路が知能化し、都市自体が様々な形で知能化していきます。
そのような中でのインタラクション(相互作用)による制御というものが重要なのです。
中型ロボット部門は、30-35チーム参加しています。卓球台9枚分の大きさの競技場で行う座布団大のロボットによる対戦です。
こちらは逆に周りにセンサーなどを埋め込むことができません。
全くの自律でのチャレンジということになります。
それぞれ現在は、車輪を装備したロボットが主流ですね。
そして、AIBOを使用して競技する
Sony Legged Robot Leagueにです。

Sony Legged Robot Leagueについて伺いたいと思います。
このリーグが発足した経緯、競技ルールなどはどうなっているのでしょうか?


 第1回は出てなくて、隣接の展示会でエキジビションをちょっとやったくらいなんですよ。
パリのときにSony Legged Robot Exhibitionってのをやって、50体くらい連れていきました。
そうしたらバカ受けに受けて、ストックホルムで正式にリーグにしました。
パリのときは3チーム貸して、エキジビションのリーグをやりました。
昨年は9チーム参加しました。
今年のメルボルンでは、12チームでリーグ戦をやる予定です。


リーグに参加しているAIBOは市販のタイプと同じものなのでしょうか?

 Sony Legged Robot Leagueは一般に販売されているAIBOとは少し違う研究者向けのAIBOを使用しています。
各チーム3体ずつ参加するワンメイク競技で、ハードウェアの改造はできません。
ですから皆、ソフトウェアつまり自律行動する4足歩行のロボットをどの様に制御していくかということが重要な競技です。
AIBOは、見かけによらずというか大変高度なAIを装備したロボットで,画像認識も含めて4足歩行の制御というのは大変難しいテーマですが、それだけにチャレンジしがいのあるリーグとなっています。


99年にストックホルムで行われたSony Legged Robot Leagueで印象に残ったチームはどちらですか?

 やはり、優勝したLaboratoire de Robotique de PARIS(LRP)ですね。
パリの3銃士チームといっていましたが、AIBOの歩行動作を大変きめ細かく制御していました。
AIBO EXPO99でも来日してデモンストレーションをやってもらったので、ご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ふつうのAIBOとは全然違うきびきびした動作が印象に残っていませんか?
そういえばLRPのメンバーの一人は、AIBOの動作制御の論文で博士号をとりました。
たぶんAIBOの研究でとった初めての博士号ではないでしょうか?
それと、東京大学の制御のアプローチで、AIBOにヘディングをさせたのは、大変ユニークなアプローチだと思います。


RoboCupのこれからのスケジュールや展望について教えていだだけますか?

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 2000年はメルボルン、2001年はシアトルで、そして2002年サッカーワールドカップの年には日本で開催される予定です。
今年からヒューマノイドのエキジビションをやります。
2002年からはヒューマノイドのリーグ戦やりますから、こうなるとまた技術が進むと思いますよ。
この年は
RoboCupにとってもエポックメイキングな年になるのではないでしょうか?

 また、今のところは正直言って研究者の人たちが見ていて楽しい程度にとどまっていますが、
RoboCupはその年の研究成果 は全て公開して研究者みんなが共有できるようになっています。
この仕組みによる相乗効果でどんどん
RoboCupが発展していくことには疑いの余地はありません。
最近の新しいアプローチとしては、大規模災害の時などに役立つロボットを研究するRoboCup Rescueや、ロボットに興味を持ってもらい、将来の研究者を育てることができるような教育プログラムでもあるRoboCup Juniorもスタートさせました。
もちろん
Sony Legged Robot Leagueも今年は格段の進歩を遂げているでしょう。
今後ますます楽しみというところです。みなさんも応援してください。

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