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interview
(*肩書きはインタビュー当時のものです。)
2002年5月リニューアルしました、AIBOインタビューですが、リニューアル第2弾のインタビューは、この6月20日〜23日に開催される「ROBOCUP2002 福岡・釜山」の"ソニー4脚ロボットリーグ"チェアマンである、弊社デジタルクリーチャーズラボラトリーの藤田雅博に、"ソニー4脚ロボットリーグ"の今年の展望、注目点。
また、ロボカップで使われたどのような技術がAIBOの進化に使われるかなどのお話を伺いました。

ROBOCUP2002のホームページはこちら


―― いよいよ開幕する「ROBOCUP2002(ロボカップ2002) 福岡・釜山」ですが、その中で藤田さんがチェアマンをつとめる"ソニー4脚ロボットリーグ"ですが、2001年シアトル大会と今年の大会の違いについて、まず教えていただけますか。
藤田:今年の大会から競技場のサイズとルールを変えました。昨年までは2 m x 3 mの競技場の大きさにロボットが3対3でサッカーをしていたのですが、今年は縦横とも約1.5倍広げ、ロボットの数も増やして4対4としました。また、ワイヤレスLAN(IEEE812.11b 周波数2.4GHz帯)の使用も今年から認めるようにしました。
―― 変更した理由は何ですか?
藤田:変更したのはいくつか理由があるのですが、まずロボットが速く動くようになってきたので、今までのフィールドが狭くなったということがあります。ロボットの台数を増やしたのは、3台では、ゴールキーパーに1台専用に使うと、残りは2台しかないので、ディフェンスやオフェンスの連携をとった戦術が生まれにくいということがありましたが、4台であれば、ゴールキーパー以外の3台で連携をとったチーム戦術が生まれ、いかにロボットを動かすかという戦術が重要になります。

ロボットの動かし方も幅が広がり、さらにおもしろい試合になると思います。また、今年からワイヤレスLANの採用をしたのは、チーム連携に関係があります。研究のレベルがあがり、ロボットをより複雑に動かそうとした場合、ロボット間のコミュニケーションが必要になります。ロボット同士の連携をとるために、自分の位置、ボールの位置、味方の位置などを情報交換し、チームの連携戦術が主な目的です。これは、すでにミドルサイズリーグでおこなわれています。この通信手段をうまく使って,チーム戦術を組み立てられるところは注目です。

もう1つは、PCを利用した開発環境の提供です。ロボカップでは、OPEN-Rというソフトウェアアーキテクチャを利用していますが、その枠組みをPCの世界まで広げ、OPEN-Rエミュレータという環境を提供しています。PCを利用したアルゴリズムの開発と、ロボットの組込みソフトウェアとソースコード互換のOPEN-RエミュレータでPC上で開発したソフトウェアを簡単にロボットに組込みソフトウェアとして利用することが可能になりました。アルゴリズムとしては最初はCPUパワーやメモリーサイズを気にせず開発ができるので非常に効率のよい開発ができると思います。

―― 今までのソニー4脚ロボットリーグサッカーとは違ったものになってきますね。
藤田:そうですね。チーム内の各ロボットの情報をいかにうまく伝え、自分の情報と処理するか重要ですね。コミュニケーションがとれることで、今までは、各ロボットがボールの行方を捜していたところが、チーム内のどれかのロボットが見つければ、その情報が伝わり、近くにいるロボットがボールに向い、他のロボットがパスを受けるために動くというサッカーらしい戦術がとれるようになります。いわゆるコンピューターの分散処理がロボット間でできるということです。
---チームプレーを考えて実行できるとさらに本物のサッカーらしくなってきますね。
藤田:以前よりおもしろくなると思います。しかし、ワイヤレスLANを使うのはいいことばかりではないのですよ。「ソニー4脚ロボットリーグ」では、AとBの2フィールドで試合はおこなわれますが、ワイヤレスLAN を使うロボットが4台×2チーム2×2フィールドということで、16台分の周波数帯域が必要になります。

ロボカップ会場では、他のリーグでもワイヤレスLANを使いますし、また、ROBOTREX会場でも使われていますので、トラブルが予想されます。トラブルが発生したとき、いかにリカバーするか、ワイヤレスLANに頼らない動きにシステマチックに切りかえられるか、ここもシステムをつくる上でのポイントといえます。
――各チームの腕のみせどころというわけですね。ところで、今年は"ソニー4脚ロボットリーグ"に何チームエントリーしているのですか。
藤田:今年は、米国のジョージア工科大、オーストラリアのニューキャッスル大、メキシコのモントレー工科大の3チームが増えて、合計19チームです。
――注目のチームはどこですか。
藤田:私はチェアマンなので、特定のチームをあげるのはちょっと言いにくいですね(笑い)。新しく参加したチームも未知の力を持っているのであなどれないです。昨年参加した九州工大と福岡工大の統合チームは、初出場でベスト8でしたからね。また毎年上位に食い込むチームは蓄積された技術、研究成果がありますから、ワイヤレスLANの採用やロボットの数がかわったことで有利になるかもしれません。

――リーグ戦以外にも今年の"ソニー4脚ロボットリーグ"には見所があるとお聞きしましたが。
藤田:昨年もおこなったのですが、ロボカップチャレンジを今年もおこないます(CA注:6月22日 土曜日開催。開催時間は当日会場でご確認ください。)これは、サッカーではなく、規定競技をいかに速く正確におこなうかというタイムトライアルです。試合で勝つだけで優劣を決めるのではなく、自律型ロボットの基本的な技術に焦点を当てた競技です。各大学のプログラムの腕が問われるので見ていただくとおもしろいと思います。

今年の規定競技は、標識のパターンを素早く認識し、その標識にあった行動をするタイムを競うパターン認識チャレンジ、2体のロボットで協調して棒を押すコラボレーションチャンレンジ、散らばっているボールをいかに速くゴールに集めることができるかを競うボール集荷チャレンジです。
――試合とは違ったロボットの動き、スピードといった各大学ごとの研究成果、プログラム技術が表れておもしろそうですね。
藤田:そのほかに今年は、OPEN-R SDKの発表もあったので、20〜23日のお昼休みの時間(13:00前後)を利用して、OPEN-R SDKの説明とデモンストレーションをみなさんにお見せしようと計画しています。

ロボカップ参加の各大学に協力してもらって、OPEN-Rのデモをお願いしています。ロボットのプログラミングやOPEN-Rに興味のある方には非常におもしろいと思いますので、ぜひ見ていただきたいですね。

――ロボカップはロボットのサッカーをただ見るだけでなく、その技術や研究を発表する場でもあるのですね。来場されたみなさんは、このあたりもぜひ注目ですね。このロボカップで使われている技術で近い将来、ロボットに搭載できそうなものはあるのでしょうか。
藤田:そうですねぇ、例えば、自己位置同定という技術は近い将来に載せられるのではないでしょうか。自己位置同定というのは、ロボットが自分自身の位置がフィールドのどの辺りに位置するか、まわりの情報から計算するというものです。いまは、フィールド内にマーカーとして色のついたポールをたてて、ロボットがカメラで、そのポールとゴールの位置から自分の位置を計算し、確認しています。

今年からは、ワイヤレスLANの導入により、仲間との位置関係も把握できるようになりますね。この自己位置同定の技術を応用すれば、家の中のどの部屋に自分がいるか認識できますので、ロボットが部屋から部屋へと移動するのも容易になったりすると思います。
――ところで、藤田さんはロボカップに関わり、"ソニー4脚ロボットリーグ"のチェアマンほかに、今はどのようなお仕事や研究をやっているのでしょうか。
藤田:今は3月に発表した2足歩行ロボットSDR-4Xの研究を主にやっています。ROBODEX2002でも披露したのですが、SDRには顔の認識、音声認識、環境認識とその対応の技術がはいっており、技術的には進んでいます。しかしながら、人と自然に話して共存していくロボットにするには、画像処理、音声処理、物理的インタラクションや動きの表現など研究していく課題がたくさんあります。また、私は主としてソフトウェア系の研究をしているのですが、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアの性能があがって、例えば走るAIBOが出てきた場合、走っている最中の環境から正確に情報をとって、計算し、認識をするといった問題をどのように解決するかなど、ソフトとハード両方を考えていく必要がありますね。
――そうですね。PC上でプログラムがうまく動けばいいというわけにはいかない、ロボットはハードとソフトが融合してはじめてうまく動作するということですね。本日は、お忙しいところ、ロボカップ2002"ソニー4脚ロボットリーグ"を中心にお話をありがとうございました。
最後にこのインタビューを読んでいただいているCLUB AIBOのメンバーの方、AIBOファンの方、ロボットに興味がある方にメッセージをお願いします。
藤田:新しい技術をSDRやAIBOにどんどん入っていくように、今後も研究を続けていきますので、SDRやAIBOの機能、性能、動きを注意して見ていただけるとうれしいです。新しい発見があるかもしれないですから。
SDRやAIBOに期待していてください。
――本日はありがとうございました。
藤田さんは、AIBOの研究がスタートした1993年よりソニーにてロボットの研究開発に関わっていらっしゃいます。AIBOの産みの親のひとりというわけです。
最近は、ROBOCUPのチェアマンと2足歩行ロボットSDR-4Xの研究に忙しくされていますが、藤田さんの研究された成果は、今後のAIBOにも活かされていくことでしょう。どんな技術がAIBOに載るか、みなさんも期待していてください。
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