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導入事例 |
2008.3.21掲載 |
■TNM&TOPPANミュージアムシアター 様 [業種:企業]
高精細の4K“SXRD”プロジェクターでVR映像を上映。
文化財を「体験」する新しい時代の鑑賞スタイルを追求 |
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お客様のニーズ・課題 |
文化財の公開モデルを開発するプロジェクトにおいて、文化財の繊細な線の表現や微細な描写までも克明に再現できる高精細プロジェクターを必要としていた。
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導入効果 |
ハイビジョンの約4倍にあたる高精細映像により、重要文化財の内部を仮想空間として来館者の目の前に再現。時間と空間を越えた臨場感あふれる体験を提供した。 |
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導入背景 |
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文化財の新しい公開手法としてVRを上映するシアターを開設。 |
選定理由 |
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超高精細の画像表現が可能な映写装置として4K“SXRD”を選択。 |
システム内容 |
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制御室のPCに収容されたコンテンツを操作卓からコントロール。 |
導入効果 |
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VRにより実物とは異なる価値を提供。来館者の満足度も高い。 |
今後の展望 |
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4K“SXRD”への要望はカラーマネジメント技術のさらなる追求。 |
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東京国立博物館 特任研究員金子啓明様と、凸版印刷株式会社 文化事業推進本部 本部長 本田牧雄様にお話を伺いました。 |
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文化財の新しい公開手法としてVRを上映するシアターを開設。
制御室に設置された4K“SXRD”プロジェクター。
240インチのスクリーンにVRコンテンツを投影。
東京国立博物館では、比較的早い時期から文化財のデジタルアーカイブを蓄積し、TNMイメージアーカイブスをはじめとする各種情報事業を展開しています。トッパン小石川ビルに併設された「印刷博物館」のVRシアターにも何度も足を運びましたが、仮想空間の中を移動しながらあたかもその場にいるかのような臨場感が得られ、VR(バーチャルリアリティ)は文化財の新しい公開手法になり得ると判断しました。(金子先生)
凸版印刷では、1997年頃からVR技術を駆使した社会文化貢献活動を行ってきました。人類の足跡である文化財のデジタルアーカイブ化も、重要な取り組みの1つです。当社で制作した主なVRコンテンツの中に、唐招提寺の御影堂や金堂の建物内部構造を再現した作品があります。この作品は2005年に東京国立博物館で開催された「唐招提寺展」において展示の1つとして上映されました。その際の来場者の反応などから、文化財をVRとして鑑賞体験できる常設のシアターの可能性を見出し、今回のプロジェクトに至りました。(本田本部長)
超高精細の画像表現が可能な映写装置として4K“SXRD”を選択。
常設できない貴重な収蔵品をVRコンテンツにて紹介する。
「印刷博物館」のVRシアターでは、幅12メートル、高さ4メートルあるカーブドスクリーンを採用しています。このスクリーンは水平方向の視野角が120度あり、あたかも映像の中に入り込んでいるかのような没入感を体験できるのが利点です。しかし、TNM&TOPPANミュージアムシアターで扱うコンテンツは文化遺産であり、超高精細の画像表現が可能な映写装置が必要だと考えました。4K“SXRD”よりも高精細のプロジェクターを開発中という話はありますが、一般に流通していないため、メンテナンスまで含めて考えると現段階で採用するのは現実的ではありません。金子先生にも投影映像をご確認いただき、フルHDの4倍を超える885万画素の高解像度を評価して、ソニーのデジタルシネマプロジェクターを採用しました。(本田本部長)
制御室のPCに収容されたコンテンツを操作卓からコントロール。
TNM&TOPPANミュージアムシアターでは、ナビゲーターが作品の見どころを解説しながら、来館者の見たいところをご紹介する対話形式を取っています。ナビゲーターはシアター内にある操作卓やコントローラーを操作し、簡単に空間を移動したり、瞬時に拡大投影するなど、デジタルコンテンツの特徴を活かしたナビゲーションを実現しています。(本田本部長・金子先生)
VRにより実物とは異なる価値を提供。来館者の満足度も高い。
席数は約30席。ミュージアムシアターでの試みは、来館者からの評価も高い。
現在公開中のコンテンツは、第1弾の「国宝 聖徳太子絵伝」です。法隆寺の許諾を得て東院伽藍の絵殿を三次元データ化し、東京国立博物館収蔵品のアーカイブデータとコンピュータで統合しました。絵伝をVR技術によって本来納められていた絵殿に戻すことで、あたかも絵殿で鑑賞しているかのような体験を提供します。(本田本部長)
「国宝 聖徳太子絵伝」では、絵殿に現在納められている江戸時代の模写と本物の絵伝を切り替えてご案内するなど、実物展示とはまた違ったVRの価値が生まれたと思います。VRコンテンツは補助的な存在としてではなく、本物とは別の価値、魅力を持っています。来館者へのアンケートで「満足している」と答えた方は89%いらっしゃいました。本物を見てからVRコンテンツをご覧になった方でも、もう一度本物を見たいという気持ちになられたようです。本物とVRコンテンツとの間を行ったりきたりするなど、来館者の内から自然に生まれる新しい見方、楽しみ方を提供できたのではないでしょうか。第1弾作品の公開は成功したと思います。(金子先生)
4K“SXRD”への要望はカラーマネジメント技術のさらなる追求。
このTNM&TOPPANミュージアムシアターは、VRに対するマーケティング活動の一環として捉え、今後3年間で知見を蓄積していく予定です。アンケート結果や来館者の反応などから、その先の新しいVRコンテンツの作り方や上映方法などを検討していきます。
4K“SXRD”に求めるのは、文化財の正しい色調を再現するためのカラーマネジメント技術です。この分野で弊社が長年印刷事業を通して培ってきた技術が活かされると考えています。「国宝 聖徳太子絵伝」は、実物の正確な色彩計測によって得られた結果を基に制作しました。こうして得た色の情報を正確に再現するために、4K“SXRD”を含む投影システムにはもう1歩の追求が必要だと感じています。我々は、プロジェクターまで一気通貫できるシステムを目指しています。(本田本部長)