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正ちゃんの即効!カメラテクニック講座

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正ちゃん三脚メーカーに行く
正ちゃん 最近の小型カムコーダーは優れた手振れ補正が搭載されたものが多くて、手に持ったスタイルでの撮影でも安定した映像を撮影することが出来るようになりました。 しかし、より落ち着いた撮影には三脚が欠かせません。今回は三脚メーカーにお邪魔して工場を見学し、扱い方の注意点など直接聞いてきました。
タク 正ちゃん先生、この三脚なんだかゴリゴリ音がするんです。しかも、チルト方向のストッパーが効かないんです。
正ちゃん それは、チルトのストッパーディスクが削れてしまって、アルミ屑が出ているせいだな。卓、ストッパーを半効き状態で使ったんじゃないか?
タク えっ、チルトの重さの調整にこのレバー(ストッパー)を使っちゃいけないんですか?
正ちゃん 卓、いい機会だ。三脚メーカーに今から出かけるぞ。今日は徹底的に三脚を勉強しよう。
三脚メーカーのマーケティング担当の山口さんと設計の里吉さんが迎えてくれました。
まず最初に工場を見学させて頂きました。
山口さん : 正ちゃん先生、ようこそいらっしゃいました。
君が卓君だね。
さぁ、いきなりだけれど、工場見学からはじめましょうか。

マーケティング山口さんと設計里吉さん

卓 : うわぁー、ここは何をしているところなんですか?

切削工程を手作業とマシーンで行っています

里吉さん : ここでは、三脚のヘッド部分の切削工程を、手作業とマシーンの両方で行っているんですよ。自動切削マシーンは主に精密な曲線が必要なパーツに使っています。
里吉さん : そして、こちらが、組み立て部署です。
組み立ての中でも、一番難しいのが、このグリス塗りなんです。

グリスを滑らかに塗るのは非常に難しいようです

卓 : これはどこの部分なんですか?
里吉さん : パン/チルトの重みを作り出すトルク発生器の部分です。竹べらで1/100mmの精度で塗っていきます。多く塗りすぎても、少なくてもダメなんです。今はこの作業を機械化できないかと検討しているのですが、まだまだ、職人技に勝るものがないのです。
山口さん : そして、こちらが出荷前のチェックを行う、出荷倉庫です。

出荷直前の三脚

卓 : どれもこれもきれいな仕上がりですね。
山口さん : ありがとうございます。ここでは一つ一つ仕様を満たしているかのチェックは当然やっていますが、最後にアルコールを染み込ませた布できれいに仕上げる作業を入れているんです。
山口さん : それでは、場所を変えて、三脚の取り扱いなどご説明しましょう。
続いて三脚の取扱い注意点や選び方、メンテナンスなどについて伺いました。
卓 : 初めに、三脚の扱い方で注意が必要なことを教えてください。
里吉さん : まずはやってはいけないことの筆頭は、60℃以上の場所に長く置くことですね。夏の車の中に放置するのはよくありません。水準器の気泡がなくなる場合がありますし、カウンターバランスのバネに塗ってあるグリスが溶け出す場合があります。
後、ヘッドに砂が入り込むのはよくありません。浜辺での撮影のときなどは、必ず三脚は立てておくことをお勧めします。60℃以上の温度と砂は用心です。
卓 : レンズの時もそうでしたが、高温と砂は大敵なんですね。
里吉さん : はい。まずそれを気を付けて下さい。それと、長く使わない場合でも、半年に一回くらいはパン・チルトを数回動かしてもらいたいです。動かすことで、グリスの劣化を抑制することが出来るんです。
卓 : わかりました。次は三脚の種類について教えて下さい。三脚にはカーボン脚とアルミ脚の2種類がありますし、2段脚と3段脚とこれまた2種類ありますが、どのように選んだらいいのでしょうか?

ねじれ剛性の強い脚

山口さん : お薦めはカーボンの3段脚ですね。アルミに比べ、カーボンは軽く、強度もあり、腐食にも強いんです。ただ、欠点は少々高価ということになると思います。
また、2段脚と3段脚の比較では、3段脚はたたんだ寸法が短いために持ち運びしやすいですし、2段脚に比べて低い位置のセッティングが出来ますから、ローアングル撮影に有利です。そして、2段脚、3段脚に関係なく、できればねじれ剛性の強い脚(=ツイン脚。上2本・中2本・下1本)を選ぶとよいと思います。でもこれも、良いものは少し高価になりますけどね。
  もう一点付け加えるとすれば、スプレッダーのタイプがあります。グランドスプレッダーのほうがねじれ剛性は高いのですが、多用途に使いたい場合は、場所を選ばずどこでも三脚をセッティングできる、ミッドスプレッダータイプの方が使い勝手がよいと思います。

ミッドスプレッタータイプ(上)と
グランドスプレッダータイプ(下)

卓 : カーボンの3段脚でツイン脚(上2本・中2本・下1本)タイプ、ミッドスプレッダーですね。購入するときの参考にさせてもらいます。最後に、三脚を長持ちさせるためのメンテナンス方法を教えてもらえませんでしょうか。
里吉さん : それでは、最後に簡単なメンテナンス手法をお話しておきましょう。
三脚は意外にハードな使われ方をされているようで、長く使っているとがたつきが出る場合があります。ヘッドのパンでガタが気になる場合は、ボールレベラー(写真下左)の六角ボルトを締め付けると改善される場合がありますし、脚のガタなら脚取り付け部(写真下中央)の六角ボルトを締め付けてみてください。それと、脚を伸ばしたときにロックする部分が緩むと、転倒事故につながりますから、脚のストッパー部(写真下右)も時々は締め付けてあげてください。
卓 : 僕の三脚がガタガタしているのはボルトなんだぁ。ありがとうございます。

ボールレベラー締め付け部(左) 脚取り付け部(真中) 脚ストッパー部(右)

正ちゃん 今日は三脚の選び方や、メンテナンスなど常にコンディションの良い状況で使うためのノウハウを教えていただき、ありがとうございました。
まとめ
今後、16:9の撮影が多くなると思われます。
横に長い画面の撮影では、水平のずれが気になってきますし、特にパンニングのスムーズさは、より大切になってきます。
思いどおりの映像を撮るためには、カメラに合ったしっかりとした三脚を使うことをお薦めします。
正ちゃん
次回 帰ってきた卓君は、早速、ボルトを締め付けていました。みなさんも、ご自慢の三脚をチェックしてみたらいかがでしょうか。三脚はメーカーの違いで、構造にも違いがありますので、今回の内容はあくまで参考としてお考えください。
さて、次回はオーディオ(マイク)編の予定です。ご期待ください。
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