映像制作機材
カメラ機能活用集
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第5回 明るい環境で
■はじめに
人間の眼は、明るい環境で花束を見たときでも、花束の明るさや色合いなどを実物どおりにとらえることができます。
これは、人間の眼がより広いダイナミックレンジ(処理できる明るさ(輝度)の範囲)を持っているためです。
しかし、カメラで同じ花束を撮影すると、白い部分などがつぶれて見える"白つぶれ"が起きた映像になることがあります。例えば"設定前"の映像では、光が当たっている花びらや綿毛が実物よりも白くつぶれています。
これは、花びらや綿毛部分の信号の輝度が、カメラのダイナミックレンジを超えているために起こる現象です。
この場合、被写体の輝度が高い部分の信号を、カメラのダイナミックレンジに収まるように圧縮することによって、
"白つぶれ"のない映像を撮影できます。
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■ソニーのカメラの特長
ソニーのカメラは、白つぶれを防ぐ機能として、KNEE(ニー)機能を搭載しています。被写体の信号を、どのレベルから圧縮するか(ニーポイント)、また、どの程度圧縮するか(ニースロープ)を設定することにより、"設定後"のように光が当たった花びらや綿毛などが"白つぶれ"していない映像を撮影することができます。
また、KNEE機能はこのほかにも、複数のカメラを使った撮影でも便利です。複数のカメラを使った撮影では、各カメラの角度や距離によって被写体の輝度が変化するため、カメラごとにKNEEの設定が必要です。カメラごとにKNEEを適切に設定すると、各カメラの映像の印象が同じ(同一設定)になり、最終的にスイッチャーなどで映像を切り換えても違和感のない映像を撮影することができます。

KNEE 機能を搭載している主なソニーのカメラ
HDW-900 シリーズ、HDW-750/730シリーズ、
DVW-970シリーズ、PDW-530/510シリーズ、
DSR-450/400シリーズ、MSW-970シリーズ
■カメラの設定方法
KNEE(ニー)は、PAINTメニューのKNEEページで設定できます。

1)PAINTメニューのKNEEを開きます。
2)KNEEをON(デフォルト)に設定し、KNEE POINTを50.0から109.0の範囲で設定します。
3)KNEE SLOPEを−99から+99の範囲で設定します。

KNEE POINTを低く、KNEE SLOPEを高く設定すると、高輝度の被写体を"白つぶれ"させずに撮影することができます。
"設定後"の映像では、KNEE POINTが80.0、KNEE SLOPEが−40に設定されています。


設定値はDSR-450WSLの場合です。お使いのカメラやライティング環境によって、同じ設定でも映像の色合いなどが変わることがありますので、必ず映像を確認しながら設定を行ってください。
お使いのカメラに付属の取扱説明書などもあわせてご覧ください。
■技術情報
ダイナミックレンジとは
カメラなどのデバイスが処理できる輝度信号の範囲です。ビデオ信号のダイナミックレンジは一般的に100%から110%ですが、ビデオカメラ内部の信号処理では、より大きなダイナミックレンジの信号を処理することができます。例えば、ソニーの2/3型CCDカメラのダイナミックレンジは、最大約600%です。(カメラの設定によって、最大値は異なる場合があります。)
KNEE(ニー)とは
被写体の高輝度部分の信号を、カメラのダイナミックレンジに収め、約109%(ホワイトクリップポイント)以内のレベルで出力されるように圧縮する機能です。
一般的に、ニーポイントは、人間の肌の輝度と言われている、85から100前後に設定します。
また、ニースロープは高く(+側に)設定し、ニースロープの傾斜を緩やかにすればするほど、圧縮率が高まり、より高いレベルの信号までカメラのダイナミックレンジに収まるようになります。しかし、その反面、色信号も同時に圧縮されるため、ニーポイントを超えた信号の色合いが薄くなるとともに色相が変化し、"白つぶれ"しているような映像になることがあります。この場合、KNEE SATURATION機能を併用して色の鮮やかさを調整すると便利です(第2回参照)。
被写体の輝度に応じて、自動的にニーポイントを調整するDCC(Dynamic Contrast Control:ダイナミックコントラストコントロール)機能を搭載しているカメラもあります。DCC は「オートニーコントロール」と呼ばれることもあります。