法人のお客様 事例 ファンと共に創る、世代を超えて楽しめるボールパーク

ファンと共に創る、世代を超えて楽しめるボールパーク

全国のカープファンとスタジアムをつなぐ「ライブ応援システム」

広島東洋カープ様は、「カープ女子」と呼ばれる女性ファンも多く、老若男女問わず広島県民に愛される地域密着型の球団。球団本拠地となる「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島(以下、マツダ スタジアム)」には、家族や仲間と観戦を楽しめるさまざまな座席や子どもの遊具を設置。早くからボールパーク化※にも取り組み、試合のない日もスタジアムを開放し、地元の人たちが併設されたカフェに立ち寄れるなど散策コースとしても楽しめる魅力的なスタジアムを実現しています。そんな広島東洋カープ様が、今回新たなサービスとして取り入れたのが、遠隔地にいるファンとスタジアムをつなぐ「ライブ応援システム」。2019年2月のオープン戦での導入以来、球団の方だけでなく多くのカープファンの心をつかんでいます。このサービスを提案するきっかけや運用までの軌跡とともに、実際にライブ応援を利用された方々の生の声をご紹介します。

※ボールパーク化:球場を単なる野球場として捉えるのではなく、さまざまなアトラクションを用意し、食事や座席なども充実することで、誰もが楽しめる環境を整えること。

一人ひとりに寄り添う演出で、ファンの心をつかむ

マツダ スタジアムは完成して10年。ちょうどスタジアム内の設備リニューアルの時期を迎え、広島東洋カープ様からは「3世代が来場し、楽しめる球場づくり」の一環として、新たな映像システムを考えて欲しいというご要望がありました。球団との対話で感じたのは、広島にプロ野球球団をずっと残したいというオーナー様の熱い想いと、ファンを含め球団全体をひとつの家族ととらえる姿勢でした。球団やファンの現状を分析していく中で、球場に足を運ぶ観客のリピート率が高く、子どもからお年寄りまで幅広い世代に支持され、多くの県民に愛される “テーマパーク”のような存在であることを実感。そこで、一人ひとりのファンの気持ちに寄り添い、世代を超えて楽しめる演出や、ファン層を全国的に拡大するため県外にいるカープファンをも取り込み、観客同士が絆を深めるようなビジュアルコミニケーションができないかと考えました。

そこから生まれたのが、この「ライブ応援システム」。球場に来られない遠隔地のファンが試合中にメインモニターに登場し、スタジアムで観戦する家族や友人をはじめ、観客全員に30秒ほどのメッセージを語りかけてもらうというもの。地元を離れた方や球場に来ることが難しい方にも、スタジアムにいる観客と一体感を味わえる新しい応援スタイルを提供しています。このシステムは、誰でも使える一般的なビデオ会議システムを利用。機材を持ち運び可能にするとともに、携帯電話のLTE回線を使うことで、全国のどこでからでも生中継が行える仕組みをつくりました。

そのほか、遠隔地のファンだけでなく、スタジアムに来場された観客にも楽しんでもらえるように「ファン投影システム」を提案。ファン一人ひとりに注目するという演出コンセプトから、ディープラーニングの顔認識機能を使って観客の表情をメインモニターに映し出すことで、試合中にいつ自分が映るかわからないドキドキ感とともに観戦できるエンタテイメント性を加えました。「ファン投影システム」は、毎試合で利用され、球場内を盛り上げるのに一役買っています。

遠隔地のファン(左側)とスタジアムの観客(右側)をライブ中継でつなぐ「ライブ応援システム」
観客一人ひとりの表情を多分割映像で表示する「ファン投影システム」

ファン同士をつなぐ新たなコミュニケーションの場

初めて「ライブ応援システム」が運用された2019年3月末のオープン戦。生中継終了後には、球場の観客から自然と拍手がわき起こりました。ファンを家族ととらえる球団ならではのアットホームであたたかな演出が好評で、オーナー様からは「毎日やれないか」と言われるほど。すでにライブ応援は25回を越え、多くのファンが生中継に出演。入院中でスタジアム行けない方が病院から声援を送ったり、八丈島の高校からサプライズ中継で、スタジアムで観戦していた修学旅行中の生徒たちにメッセージを送ったり、広島から離れて暮らすお孫さんからおじいちゃんやおばあちゃんに向けて「こんど遊びにいくね!」というメッセージが送られたり、婚約者カップルへのお祝いメッセージも届けられるなど、カープファン同士をつなぐ新たなコミュニケーションの場となりつつあります。また、大好きな選手へのメッセージをスタジアムに直接届けられるとあって、多くのファンにとって満足度の高いサービスになっています。

9月15日の対ヤクルト戦では、中国電力・東京支社様からライブ応援が行われました。中国電力様は、「ドッテン生中継!」と題して、自社が提供する「カープ応援メニュー」サービスにご加入されているお客さま限定で、「ライブ応援」への参加者を募集されています。当日、参加された方たちは、球場にいる何万人もの観客を前に緊張しながらも、この日を最後に引退するエルドレッド選手への感謝のメッセージを元気いっぱいに伝えてくれました。終了後、「みんなの前で応援するのは緊張したけど、球場のお母さんやお姉ちゃんと一緒に応援しているみたいでおもしろかった!」と、東京でお留守番の妹さんは少し照れながらも楽しそうに答えてくれました。また、カープファンのママ友を集めて「カープ部」を結成したという広島出身の女性は、応援後「小さい頃からよく応援に行っていたのを思い出しました。また球場に行ってカープ部のみんなと観戦したくなりました!」と少し興奮気味に感想を述べてくれました。

9月15日の対ヤクルト戦で、球場のメインモニターに映されたライブ応援のオープニング映像
中国電力・東京支社様から生中継されたライブ応援の映像(左側)とスタジアムで観戦するご家族の映像(右側)
中国電力・東京支社様に常設されている「ライブ応援システム」
ライブ応援に参加されたカープファンの皆さま

地域に密着し、「3世代が来場し、楽しめる球場づくり」に挑む広島東洋カープ様。ファンを家族のように考える球団の姿勢や想いを共有しながら、当社はこれからも広島東洋カープ様の挑戦をサポートし続けます。

土井(技術・フロントSE担当)

今回、映像システムをゼロから提案し、機材だけでなく演出まで含めて徐々に形ができあがり、最終的に球団の方だけでなくファンの方にも喜んでもらえて、非常にやりがいのある仕事でした。自分たちが手掛けた演出で、観客の方が驚いたり、喜んだりしてくれる姿をダイレクトに見られるのは、このライブ応援ならではの醍醐味ですね。「ライブ応援システム」の運用はまだ始まったばかりですが、先日はアメリカにいるエルドレッド選手が出演してくれました。今後、海外からの中継もますます増えると思いますが、例えば5Gの技術を掛け合わせれば、月などからの生中継も夢ではありません。カープファンのネットワークを、広島から宇宙にまで広げていけるような新しい提案をしていきたいと思います。

伊藤(技術・ソフトウェア担当)

スタジアムで使用される大規模な映像システムは、多くの機器で構成されるため、自社製品だけではなく他社製品も学びながらシステム全体の構築を進めました。現地のサポートメンバーの助けを借りつつ、オープン戦直前まで何度も検証を重ね、ようやく完成させることができました。今回学んだのは、ゴールとなる演出部分から逆算してシステムをつくることの重要性でした。単に製品やソフトを組み合わせるだけでは、観客に喜んでもらえる演出はできません。どんな演出をしたいかに合わせて、どれだけシンプルなシステム構成や運用を実現できるか。技術者の目線だけでなく、球団様やファン目線で考えることの大切さを実感しました。この先も、他球団の方から「うちでもやりたい!」と言われるような新しい演出をつくっていきたいと思います。

高橋(営業担当)

映像機材だけでなくスタジアムでの演出まで含めた提案だったこともあり、試合がない日にはスタジアムに足を運び、メインモニターに中継映像や多分割映像を映して「こんなふうに見えます!」と球団の方たちと何度もやりとりしながら、どうやったら観客を喜ばせられるか検討を重ねました。実際にライブ応援で盛り上がるファンの姿を目にしたときには、「この仕事をやってよかった」と心から思いました。お客さまからも、ただ機材を納品するのではなく、ファンの心をつかむ演出提案を評価していただきました。今後も、皆さんに楽しんでもらえるような演出を毎年提案し、ファン一人ひとりに寄り添った演出で球場というエンタテインメント空間を盛り上げていきたいと思います。

写真左から、伊藤、高橋、土井