ご担当者の紹介
びわ湖放送株式会社
放送管理局技術部
卯路 純治 様
びわ湖放送のCMデスクを担当。2003年より技術部へ出向しスタジオやENG・中継等のSWER、カメラ、番組TD等の業務に従事し数多くの番組に携わっている。
びわ湖放送株式会社
アナウンサー
黒川 彩子 様
2020年にびわ湖放送に入社し、制作部兼アナウンス室に所属。制作AD・ディレクターとして自ら取材を行いながらアナウンサーを兼務。BBC生放送番組『金曜オモロしが』担当。その他『高校野球ハイライト』『高校バスケ女子実況』などスポーツ番組も担当。
弊社ではこれまで取材や収録の現場でクラウドを使用する機会がありませんでしたが、セッティングまでの時間短縮や気軽に行える素材伝送等の面でワークフローの効率化ができると考えています。しかし、使用するインターネット回線の環境によっては一概に全て効率よく使えるというものではないと感じており、まだまだ使用できる場面の選定は必要だと思っています。
弊社は地域に根差した放送局として、昨年で開局50周年を迎えました。自社での積極的な番組制作のほか、AIアナウンサーやIP技術を採用したスタジオサブなど、最新技術を活用したシステムの構築にも力を入れています。一方で、遠方の取材先からの素材伝送においては、ベースバンド接続の専用の素材伝送装置で行っており、ワークフローを効率化したいと考えていました。そこで、高校野球の取材に合わせてPoC 環境を提供いただき、実証実験を行いました。
局から遠方の取材現場からSNG(人工衛星)や専用の素材伝送装置を必要とせず、手軽に素材伝送できる点が魅力的だと感じていました。また、取材用のカメラでハイレゾファイルに加えてOA用途を想定したプロキシファイルも記録できるため、C3 Portalでそれらのファイルごとに伝送品質を選択でき、スマホやモバイルWi-Fiなどの一般的なインターネット環境があれば品質を担保してファイル転送できるため、後段の編集との相性もよく、最適と考えました。
ライブ中継している場合を除き、通常、遠方の取材現場で撮影された素材は、カメラマンがメディアを持ち帰る必要があります。急ぎの素材については専用の伝送装置を用いて素材伝送していますが、機材量が増加します。特にワンマンオペレーションでの運用時には、クルーへの負担も増えることや、専用の伝送装置の数がENGカメラの台数よりも少ないため、素材伝送できるカメラ台数に制限がありました。
また、ベースバンドでの素材伝送では、局側に収録操作を行う、待ち受けの担当者を配置する必要があります。加えて、モバイルネットワークの回線状況により、伝送品質が変化する場合があるため、担当者は収録中の間、モニタリングを継続する必要があります。
C3 Portalを使うことで、伝送用の取材カメラ台数に制限がなくなり、メディアの運搬やクルー間でのライブ中継機材の共有、局側の待ち受けの担当者が不要になるなど、現場での課題を解決できました。
今回は高校野球の試合中における、各チームの観客席の応援風景、および、選手インタビューなどの取材でC3 Portalを使用しました。OA用途を想定した品質のプロキシファイル(XAVC Proxy / 6 Mbps)に加えて、ハイレゾファイル(MPEG / 50Mbps)も素材転送を行いました。いずれも撮影中にバックグラウンド転送でき、特にプロキシファイルについては4G / 5Gモバイル回線でもすぐに伝送が完了したので、実用性を実感しました。また、ネットワーク機能を搭載していないカメラで収録した素材も、収録後、カードリーダー経由でスマホへインポートして素材伝送をスムーズに行うことができました。ハイレゾファイルについては、局側でクラウドからダウンロードするだけで、編集機でそのまま取り扱いできるため、編集マンにも好評でした。
また、C3 Portalはスマホ上で素材プレビューを行えるため、インタビューした内容の記入やOKカットの仕分けなどの作業を、試合の合間や移動中などに活用しました。現場からは「現場の負担なく素材伝送できて、とても助かった」との声も上がっており、難しい操作もなかったので、高校野球に限らず、さまざまな現場で活用できるのではないかと可能性を感じました。
今回のC3 Portal実証実験では、従来の伝送と比べて取材カメラの台数制限からの解放、運用スタッフの抑制、プレビュー機能の利便性など、成果と実感を得ることができました。一方で、プロキシファイルはモバイルWi-Fiといったインターネット環境でもアップロードに時間はかかりませんが、ハイレゾファイルになると素材の実時間以上の伝送時間が必要でした。また、プロキシファイルはプログレッシブでの伝送になり、放送で送出する際には後段の作業でインターレスに変換する作業が必要となる等の課題も分かりました。この課題はC3Portalのみでの対策は難しいかもしれませんがWi-Fi環境を選ばず後段の作業ともスムーズに連携のとれるものになれば、より受け入れられるものとなると思います。