2023年5月、Beach Soccerトップカテゴリー強化リーグ熊本菊陽ステージにて、クラウドスイッチャーM2 Liveを活用した中継配信が行われました。配信を行ったのは、自社での配信コンテンツ制作に積極的に取り組んでいる、テレビ熊本様です。システム検討を担当した技術部 担当部長の南 大様に、M2 Liveを利用した目的や所感、今後どのようにクラウド導入を進めていきたいかを伺いました。
予算の関係ではじめから中継車を出すことが難しい、かつ有線ネットワーク環境が整っていないことが分かっている現場だったため、この機にクラウドの活用を決めました。
また、今までも中継配信というのは多くあったのですが、リモート回線で映像を伝送し、本局でベースバンドに戻して、再度スイッチングしたのち、もう一度ストリーミング形式にしてから転送するというのは、エンコードとデコードを繰り返すことによる遅延も増えますし、手間もかかるので何とかならないかなと一年ほど前から考えていました。そんな時にM2 Liveを知り、これは思っていたようなサービスなのではないか、と感じてソニーへ相談しました。
M2 Liveは、入力数は限られてはいるものの、その分ほかのクラウド制作プラットフォームより料金体系も少し安価ですし、クラウドを活用したサービスを使い始めたいと思っている技術者にとってはシンプルでとっつきやすい構成だったと思います。
今回、携帯回線と組み合わせてワイヤレス運用も行なったため、準備時間が従来と比較して1/3〜1/2ほどに削減でき、省力化という観点で効果を感じました。
部署の工数管理も担当する私としては、少しでもスタッフの作業負担を減らすことができるという点もメリットに感じます。どうしても現場に行くスタッフは必要ですが、現場に行かなくてもいいスタッフが増える、働く場所を選ばないということは、クラウドを活用した制作での一番魅力的な点です。加えて、腕のいい技術者が2時間空いていて、そこに仕事をしてもらうことができるなど、働き方改革の面でも今後このような仕組みを浸透させたいと思っています。
M2 Liveを実際に使ってみると、細部の仕様に関しては改善の余地がありましたが、ハードウェアの場合、一度買ってしまうとそれ以上のアップデートはあまり望めませんが、ソフトウェアがクラウドにあるということと、ソニーの技術力であれば、今後どんどん使いやすくなっていくだろうと期待が持てました。
構成がシンプルであるという点が特に良いポイントですが、シンプルであるが故に“使いどころ”という点では考えるところがありました。スマートフォンアプリXDCAM pocketにはPGM(プログラム)のリターン映像を確認できる機能がありますが、カメラのVF上で確認することができない、といった、今までの中継車でリッチコンテンツを作るのと同じ感覚とは違う運用について、カメラマンも含めて考え方のアップデートが必要だと思いました。
一方で他のスタッフは、「ものすごく未来感があるね」と言っていました。リモートプロダクションという言葉が出てきても、なかなか実際の制作現場にそういったものが入ってくることがなかったのですが、クラウドの中で全て作ってしまうという仕組みを体感し、「一気にこういう時代がきたね、乗り遅れないようにしないといけないね」と話していました。ソニーへの注文としては、カメラのリモート制御もクラウド経由でできるようになるといいなと思います。
映像制作現場でも IT化が当たり前になりつつあるため、技術者がITの知識をつけていないと、将来的にそれに太刀打ちできなくなるという危機感がすごくあります。クラウドサービスは当然ITなので、技術スタッフが少しずつITの知識を身につけていけるように、IP/ITリテラシーの底上げという裏の狙いも込めて、今回M2 Liveを採用しました。チャレンジする姿勢が大切だと感じることができました。
テレビ熊本では今後も新たなクラウドサービスや技術に、積極的にチャレンジしていきたいです。引き続きわれわれのチャレンジへのソニーのサポートに期待しています。