2014年5月23日(金)、東京にて「デジタルペーパーシンポジウム」を開催しました。
会場には、学びを最大化する新たな教育ICTツールであるデジタルペーパーの可能性を探ろうと教育関係者が詰めかけ、
実証実験を行った早稲田大学、立命館大学、法政大学の各先生による講演とパネルディスカッションに熱心に耳を傾けていました。
デジタルペーパーからはじまる教育のイノベーションとは?大盛況の内に幕を閉じたイベントをレポートいたします。
資料に論文、レポート。教育現場はまさに紙の山でした。ゼミで使うそれらをデジタルペーパーで代用したらどうなるか。それが私たちの実験です。学生にデジタルペーパーを持たせ、発表資料や論文などすべてデータ送信。結果、完全なペーパーレスを実現しました。手書き効果で紙同様の理解度が得られ、ゼミの発表者には意見を手書きでフィードバックできるため自然と学習意欲・質ともに改善される。そんな有用性があり、ゼミに完全に定着しました。紙もインクも消費せずに生産性を向上させて、紙特有の良さも堪能できる。未来はやってきたんだな、というのが実感です。
実際に使って実感するのは、意外なまでに違和感をおぼえないことです。すっとなじんで、まるで紙のような感覚で使えてしまう。なぜなら、透過光を用いるパソコンやタブレットの画面とはちがい、デジタルペーパーは紙と同じ反射光で画面を読むから。紙に近い原理で作られているんですね。事実、紙、デジタルペーパー、タブレット端末を対象に、文章中の誤りを探す「校正実験」を行ったところ、紙とデジタルペーパーの正解率はほぼ同率でした。デジタルでありながら視認性に非常に優れている、それはデジタルペーパーの重要な長所でしょう。
法政大学では、デジタルペーパーの通信機能に着目。学内の教育支援システムと連携させ、「デジタルペーパーのシステム化を大学院生の教育に活用する施策」に取り組みました。まず、課題に関するテンプレートと課題提出用のフォルダをネットワークに設けて学生がデジタルペーパーから同期・アップロードができる仕組みを整備。随時、グループ研究のテーマを与え、その研究の掘り下げやメンバー間のディスカッションにデジタルペーパーを活用。研究経過のメンバー間のメモやディスカッション報告をアップロードさせ、教育効果を検証しました。
今回の実験では、デジタルペーパーを間において共に研究する学生達の姿が散見されました。ポイントはA4という大きさで、同時に画面を見られるから一緒にワークできる。さらに同期フォルダを通じて情報のシェアも非常に容易と、デジタルペーパーとグループワークの親和性の高さを実感しました。また教育的観点から見ると、デジタルペーパーは記入時刻・場所をメモリーしているため、学生の思考や議論の履歴をデータから辿ることができます。これは、現在各校がデータを集めている「ラーニングアナリティクス」においても有用であると確信しています。
私たちは学生達に次の5課題に取り組んでもらい、デジタルペーパーの教育的意義を探りました。「社史年表作成」「学術英語読解」「外交文書の英訳・和訳」「回覧機能の使用・アンケートへの利用」「デジタルペーパーを使ったビジネスの創造」。デジタルペーパーを利用して各課題を行ったわけですが、全体に共通して興味深かったことが3点ありました。一つ目が、文字から学生達の心理状態や発想の経緯が推察できること、二つ目が、学生自身が使い方を自然と工夫すること、そして三つ目が良い使い方は学生間で伝播することです。いずれもデジタルペーパーの特長「自由な手書きスタイル」と「データ共有」に立脚するものですが、特に三つ目などはデジタルとアナログが融合したデジタルペーパーだからこその有益な傾向ですね。
使用感想のアンケートには改善希望もありましたが、「軽い」「A4サイズで使いやすい」「ネットにつながるため紙より便利」と評判は上々。就職活動に持参した学生もいましたから使用用途の可能性を感じました。たとえば、紙を持ち歩く必要がなく双方向に発信できるためフィールドワークなどにも最適ではないでしょうか。また、学生の元にもデータが残り教員も気軽にチェックバックできるため、レポートや論文指導においては今すでに即戦力。通常は返却しないテストの答案用紙などもデジタルペーパーで返却すれば、学生も理解を深められ、新たな効果を派生させる強力なツールだと思います。
使用感想のアンケートには改善希望もありましたが、「軽い」「A4サイズで使いやすい」「ネットにつながるため紙より便利」と評判は上々。就職活動に持参した学生もいましたから使用用途の可能性を感じました。たとえば、紙を持ち歩く必要がなく双方向に発信できるためフィールドワークなどにも最適ではないでしょうか。また、学生の元にもデータが残り教員も気軽にチェックバックできるため、レポートや論文指導においては今すでに即戦力。通常は返却しないテストの答案用紙などもデジタルペーパーで返却すれば、学生も理解を深められ、新たな効果を派生させる強力なツールだと思います。
実験では、一度の充電で最大数週間使用可能なバッテリーについて高い評価をいただきました。さらに、大画面なのに薄い、軽い。いつでもどこでも使えるデジタルペーパーは、学習環境改善の力強い支えになると思います。たとえば先生方はレポート用紙や論文の大量な紙を持ち歩くことなく研究や添削が行える。通信アンケートなどで学生の想いをすぐに把握できるので、授業への反映も容易になります。一方、学生さんは、先生や他の学生から手書きのぬくもりと率直さが備わったフィードバックを得る機会が増えて成長につながる。学習履歴機能が付いていますから学生生活のポートフォリオとして、就職活動など様々な場面で役に立つことと思います。より豊かな学習環境の構築に、デジタルペーパーをお役立ていただけると幸いです。
パネルディスカッションでは、実証実験から得られた知見や学生の成長、“デジタルペーパーのリアル”を話し合いました。
そこから見えてきたのは、学びの進化を確信させる新しい教育のカタチ。「考える力」「発想力」「ラーニングアナリティクス」…。
学生の能力を自然と引き出すデジタルペーパーに、今後の教育のヒントが見えてきます。
明治大学 法学部 阪井和男教授
早稲田大学 人間科学学術院 向後千春 教授
法政大学 情報メディア教育研究センター 常盤祐司教授
立命館大学 政策科学部 森 隆知 准教授
ソニー株式会社 デジタルリーディング事業部長 野口不二夫