パソコンや紙などさまざまなツールを上手に使いこなし、思考を整理するのは案外難しいもの。今回は、思考整理の重要性やそのコツについてプロフェッショナルファーム出身の中村陽二さんにお話を伺いました。
中村さんは東京大学工学部、同大学院工学系研究科を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その後は人材採用支援などを主に扱う株式会社サイシードを立ち上げたほか、ITコンサル事業や語学事業を展開する全研本社株式会社の取締役に就任するなど、経営関係を中心にビジネスの最前線で幅広く活躍されています。
「僕はどちらかといえば直感で物事を決めるタイプですが、自分のような直感的に思考するスタイルでも、やはり思考を整理することが求められる場面というのは多いものです。
自分が直感で『正しい』と感じている事柄であっても、それをほかの人に『シェア』するときにはきちんと論理の枠組みの中で説明する必要があります。そういった際には、フレームワークなどを用いて自分の考えを整理することが求められます。
ですから、僕自身が思考を整理するときは、自分の直感的な考えを、他の人も理解できるように論理という共通言語に落とし込むというイメージが強いです。もちろん、思考をフレームに整理することだけに捉われていては、柔軟なアイデアが出にくくなるという側面もありますが、それでも思考を整理することは仕事の上で極めて重要になってきますね」
「紙とパソコンの長所・短所はそれぞれトレードオフの関係になっていると思います。紙は作業一つひとつの工数がパソコンに比べて軽いという利点があります。そのため、まだあいまいにしかイメージが浮かんでいないものを具体的にしていく作業において紙を用いることは非常に多いかと思います。
例えば、スライド資料のそれぞれのページの構成を考えるときなどです。何度も手直しをしながらおおよそのイメージを作り上げていく作業は、パソコンだとどうしても時間がかかってしまいます。一方で、紙は保存性・検索性に乏しい点がネックになります。最終アウトプットのフォーマットとしても不向きです。
それらの紙の欠点を補うためにパソコンを使います。スライド資料の例で言えば、紙の上でスライドのイメージを固めたら、それを参考にしつつパソコンで最終成果物にするといった具合です。
そのため活用シーンに応じて紙(手書き)とパソコンを使い分け、それぞれの強みを活かせるように使用しています」
「現在は紙とパソコンの使い分けが仕事の際の基本になっています。例えばコンサルティングファームの現場では、みんなでアイデアをホワイトボードに書きながら話し合い、それを写真に撮ってパソコンに保存する……といった少し面倒なステップを踏んでいることが多々あります。
デジタルペーパーは手書きと同じ感覚で楽に書いたり消したりできるうえにファイルとしての保存性や検索性にも優れているので、この部分の手間を削減することに一役買ってくれそうです。
僕が特に注目しているポイントは、ドキュメントをシェアできる点と既存PDFに書き込みが行える点です。今ではノートにスライド資料のイメージ図・概形を描き、それをちぎって渡して資料制作の仕事を依頼することがよくあります。デジタルペーパーを用いれば、デジタルペーパー上でスライド資料の草案を描き、それを他の端末にシェアしてそのまま指示出しをすることができるので社内コミュニケーションが格段とスムーズになるのではないかと思います。
また、既存PDFファイルに手書きで加筆できるので、校閲・校正作業が多く発生する職場では活躍の余地がありそうです。例えば、上がってきた資料ファイルに修正・指摘事項を加え、さらに指示を出して戻す……といった仕事はさまざまな会社で行われているのではないでしょうか?コンサルティングファームの他にも、紙をたくさん使う業界の現場では紙の持つ長所を保ったまま短所をカバーしてくれるデジタルペーパーはとても使い勝手のいい存在になってくれると思います」