イッツ・コミュニケーションズ株式会社 様
イッツ・コミュニケーションズ株式会社 様は、1983年に設立されたケーブルテレビ局で、東急電鉄沿線エリアを中心に展開しています。
2024年3月に更新し、運用を開始された4K対応スタジオサブシステムについて、同社のメディアコンテンツ部 守屋 稔 様に導入機材・システムのコンセプトや評価について伺いました。
イッツ・コミュニケーションズ株式会社
https://www.itscom.co.jp/
目次
弊社は一般番組制作の他、緊急放送や配信を含む受託案件でスタジオサブシステムを使用しております。前システムは、2009年にHD化で構築したシステムでしたが、年々、機器故障の頻度も高まり、サポートの問題が生じていました。我々は地域の安心・安全のため情報提供を担う役割があることから、番組制作を事故無く安定して行うことをポイントとし、設備は可用性を重視してシステム更新を検討することとしました。
また、前システムでは当初OTC(ワンタッチコントロールシステム)を採用しておりましたが、今回の更新ではマニュアル運行をベースとしながらも、リソース効率の良い制作形態をとることにしました。
システム検討にあたっては、映像は4K対応のため12G-SDI、音声はDanteを基本として機器選択、システム設計を進めました。運用面では、休日・夜間に限られた人員での緊急放送を実施する可能性がありますので、技術に詳しいスタッフが不在でも運用可能なわかりやすいシステムにすることを基本に考えました。
今回の設備では、ラージセンサー搭載のリモート操作が可能なCinema Lineカメラ『ILME-FR7』をスタジオ用に3台、アナウンスブース用に1台採用しています(スタジオ用4台・アナウンスブース用2台等の運用も可能)。『ILME-FR7』の採用については、ラージセンサーの表現力が期待以上でした。Eマウントレンズ『FE PZ 28-135mm F4 G OSS』を使用していますが、それでも被写界深度の浅い映像が撮影できています。番組内の商品紹介で背景はボケを出したいケースがあり、大判センサーが役に立っています。制作意図に応じて選択肢が豊富なEマウントレンズを使用できることも、今後の番組制作では有効だと考えています。
操作性については、簡単なカメラワークの番組では、カメラマンが不要となり省力化を実現できています。また、使い慣れたリモートコントロールパネル『RCP-3501』で色調整・IRIS調整などが可能なことも助かっています。他のカメラと混在して運用することもありますので、シーンファイル709toneが使用できる点も評価しています。また、ブラウザ画面のタッチ操作で正確にピントを合わせることが可能なこともスタッフから好評です。
今後対応予定のPTZオートフレーミング機能にも期待しています。
スイッチャーは4Kでありながら入出力数が豊富な点が採用の決め手でした。IP対応機種を含めた複数社のスイッチャーを検討した中、予算・機能が弊社の要望にマッチしたため採用を決めました。また、機能が豊富であることも魅力でした。
前システムでは他社製のクリッププレーヤーを使用していましたが、今回は『XVS-G1』の内蔵クリッププレーヤーを使用することにしました。4K対応のクリッププレーヤーを2ch使用できる点は良いと思います。
内蔵クリッププレーヤーの他、4K XAVCレコーダー『PZW-4000』や、4K対応ノンリニア編集機をスイッチャーのボタン連動で再生できるのは大変使い勝手が良いと考えています。2024年10月5日の「多摩川花火大会2024」生中継でも、中継のクリーン信号を収録しながらノンリニア編集機で追っかけダイジェスト編集を行い、番組後半にはボタン連動でクリップを再生することができました。
また、使用しないボタンをオペレーターが簡単に無効化できる機能も、事故無く安定して制作を行う観点で役立っています。
今回、デジタルオーディオミキサー(他社製)を採用しましたが、フェーダーアサインの他、INPUTゲインまで含めてミキサーのシーンメモリーに登録することができますので、事前準備の効率化につながっています。また、Dante対応のデジタルワイヤレスレシーバー『DWR-R03D』、デジタルワイヤレストランスミッター『DWT-B30』などを採用していますが、デジタルオーディオミキサー上で送信機のステータスが確認できることもとても便利に使えております。インカムもIP対応とし、4chまで使えるようにしました。サブだけでなく、ネットワークがつながる他拠点ともインカムの使用ができます。オーディオ関連をデジタルでまとめ、リモート制作への対応もでき、運用性が大きく向上しました。
サブ操作卓の前面モニターは、すべてタッチパネルディスプレイを採用しています。例えば、Cinema Line カメラ『ILME-FR7』のフォーカスや微調整を、VE以外の担当者がタッチパネル上で補助することができます。スイッチャーのクリッププレーヤー操作を含むメニュー操作をスイッチャー担当者以外が操作できるので、場所固定ではなく、個々の番組制作体制でフォローしあえる環境を作ることができました。
新システム稼働後、選挙や「多摩川花火大会2024」生中継などの特番でも使用していますが、その際の準備時間が大幅に短縮できています。マルチビューアーを採用し、入力ソースが簡単に切り替えられることも、その理由の一つです。
またCinema Line カメラ『ILME-FR7』の採用により、スタジオカメラマンが省人化できた点も大きな変化となっています。照明担当が準備を行う際、『ILME-FR7』付属の赤外線リモコンを操作しカメラと照明を合わせられるようになったことも便利なポイントでした。
今回のシステムでは、スイッチャー・カメラの選定から、4K対応スタジオサブシステム全体のSIもソニーにお願いしました。自社製品だけではなく、周辺機器や音声、インカムといった各社製品を統合したシステムアップにあたり、弊社の要望に丁寧に対応いただき安心してお任せできました。
今後は、弊社のコミュニティチャンネルで放送するレギュラー番組制作・特別番組だけでなく、近隣のケーブルテレビ局様や地域の企業・教育機関などに活用いただける地域に開かれたスタジオとして成長させていきたいと考えています。
※本ページ内の記事・画像は2024年10月に行った取材を元に作成しています