KADOKAWA
DAIEI STUDIO角川大映スタジオ
バーチャルプロダクションに特化した新スタジオで
映像制作の可能性を拡張
2024年4月、株式会社角川大映スタジオが東京都調布市に構える撮影所内に開設したバーチャルプロダクションスタジオ『シー・インフィニティ』において、ソニーは横15m×高さ5m、6,480px×2,160pxの解像度を持つ『Crystal LED VERONA』を納入しました。そこで今回は、Crystal LED VERONA導入の背景やねらいについて、株式会社角川大映スタジオ スタジオセンター担当 取締役 小林 壯右 様にお話を伺いました。
新たな撮影手法に対応するため
スタジオをリニューアル
角川大映スタジオが擁する9つのスタジオのうち、従来の「No.Cスタジオ」をリニューアルして開設された『シー・インフィニティ』。その「シー」には、CスタジオのC、無限の創造性を表すCreativeのC、リアルとバーチャルがつながるConnectのC、そして映画のまちでもある地元・調布(Chofu)のCなどの意味が込められています。
小林様「今回、『シー・インフィニティ』としてバーチャルプロダクションスタジオへのリニューアルを実施した理由は大きく4つあります。1つ目は、コロナ禍の2022年あたりからバーチャルプロダクションのニーズの急速な高まりを感じており、新たな事業領域へ進出できないかと考えていたこと。2つ目は、大型のLEDディスプレイを常設することで、既存のスタジオに新たな付加価値をプラスすること。3つ目は、私たちがこれまで強みとしてきたリアルの美術セット制作に加え、バーチャルの背景も含めたトータルコーディネートを実現すること。そして4つ目は、美術セットの廃棄量を削減し、ロケの移動に伴うCO2排出量を抑制する、環境負荷の少ないサステナブルな撮影環境を提供することです。
そこでまず、2023年1月から6月までの半年間、試験的にCrystal LEDのBシリーズをレンタルで導入。実際にバーチャルプロダクションでの映像制作を通して、お客さまの反応などを調査し、事業の可能性を探りました。そこである程度の知見やノウハウを蓄積できましたので、本格的にバーチャルプロダクションスタジオとして稼働できる体制の構築を開始することになりました。」
『シー・インフィニティ』に導入されたCrystal LED VERONA
それを受けて、『シー・インフィニティ』に導入するLEDディスプレイの選定を改めて実施。さまざまなディスプレイを比較検討した結果、2024年4月に導入されたのが、バーチャルプロダクションモデルのCrystal LED VERONAでした。
小林様「バーチャルプロダクションでは、LEDディスプレイが環境光や照明の影響を受けて映像が白っぽくなったり黒浮きしたりして、ポストプロダクションでの修正が発生し、余分な時間とコストがかかってしまうことがあります。このCrystal LED VERONAは、「ディープブラックコーティング」と「低反射コーティング」が施されており、美しい黒の表現力と低反射を高いレベルで両立しています。照明が点いた状態でもディスプレイへの反射を抑え、ひと目見ただけで黒の締まりの素晴らしさがわかりましたので、今回導入を決定しました。」
さまざまな工夫を凝らし、
幅広い撮影スタイルに対応
小林様「このスタジオでは、ディスプレイの吊り上げ昇降式を採用し、電動ウインチによってCrystal LED VERONAを約2.2mの範囲で高さを変えられるようにしています。それにより、スタジオ内の有効面積を増やすと同時にアングルやセットの高さの制限を解消し、より自由な画づくりが可能になりました。また、カメラを左右に振った際により自然な映像が撮影できるよう、画面はあえてフラットではなく、2.5度の曲面形状を採用している点も特長です。当初は、私たちにバーチャルプロダクションの知識や技術が不足していた面があり、最適なLEDサイズやシステム規模、チーム体制などについてソニーと相談しながら進められて非常に助かりました。」
吊り上げ昇降式により約2.2mの範囲で昇降が可能
小林様「『シー・インフィニティ』開設後に行った内覧会にお越しいただいた皆さまからも、Crystal LED VERONAの映像は非常にご好評いただいています。今後は社内のバーチャルプロダクションの技術をより高めていくとともに、将来的には現在の美術チームをVAD(Virtual Art Department)へと進化させ、事前のシミュレーションを行うプリビスなどの技術分野でのサービスも開始する予定です。」
画面が湾曲した2.5度の曲面形状を採用
高品位なディスプレイとカメラで、
さらなる映像制作を探究
Crystal LED VERONA導入に合わせて、『シー・インフィニティ』ではソニーのCineAltaカメラ『VENICE 2』も導入されました。これにより、あらかじめ撮影した静止画や動画を背景としてディスプレイに映し出し、その前で被写体を1画面で再撮影する「スクリーンプロセス」と、撮影カメラの位置やレンズ情報がLED内のバーチャル空間と連動し、カメラアングルに応じた背景画像がリアルタイムでディスプレイに表示される「インカメラVFX」のいずれの撮影方法にも対応可能となっています。すでにコマーシャル映像を中心にさまざまな撮影に活用され、今後も映画やドラマなどの撮影も予定されています。
ソニーはこれからも、『シー・インフィニティ』の取り組みを技術面と営業面の両方でサポートしながら、さらなる映像制作の可能性をともに追求しつづけ、世界を感動で満たすコンテンツ制作を推進してまいります。
Crystal LED VERONAの操作スペース
写真左から、VPプロデューサー 佐藤 祐輔様、営業部長 三上 学様、取締役 小林 壯右様、VPテクニカルディレクター ラモー・ビリー様