2009.2.23 掲載
新病院での業務効率化を図りデジタル監視システムを導入。将来の医療記録への対応も予想し、柔軟なシステムを選定。
白河厚生総合病院様が所属するJA福島厚生連は、保健・医療・福祉事業を通して農家組合員及び地域住民の健康を守り、豊かな地域づくりに貢献することを理念としています。白河厚生総合病院様はその一員として、福島県南地域の中核病院としての診療や、地域住民への良質な医療提供を目的とした地域医療連携を行っています。2008年5月に移転した新病院では、各診療科とICU、結核病棟、感染病床、人間ドックを含む471床の病棟と、リハビリセンター、PETセンターを開設し、質の高い医療サービスを提供しています。
白河厚生総合病院
副院長兼外科部長兼手術部長兼ICU室長 黒田房邦様(写真左)と、麻酔科 副部長 岡崎美智弥様にお話を伺いました。
手術室の天井に設置したネットワークカメラSNC-RZ30N。ドームハウジングに収容し、圧迫感を軽減している
当病院は、2008年5月に現在の白河市豊地地区へ新設移転しました。30年以上前に建設された従来の建物の老朽化が進み、駐車場が狭く周辺で交通渋滞が起きることなどから、別地域への移転となりました。新病院の敷地面積は旧病院敷地の約10倍あり、建物も広く、手術室が増えるなど、管理エリアが非常に広くなります。医療業界では慢性的な人手不足が問題となっていますが、当病院でも人材が潤沢であるとはいえません。そのため、移転後にスタッフ間の連絡が疎かになる点を懸念しました。特に何人もの専門医が関わる手術では、進捗状況の把握や安全管理、スタッフ間の情報共有が重要です。そこで手術室内に監視カメラを設置し、医師控室やスタッフステーションなどから、手術の進行状況を確認できるシステムを構築することにしました。(黒田副院長・岡崎副部長)
全カメラ映像を1台のモニターに分割表示。スタッフステーションや医師控室から、全室の進捗状況がひと目で把握できる
医療現場でどんな動きがあったのか、その映像を残すことは病院側と患者さん・ご家族の双方にとってメリットがあります。厚生労働省の指導にはまだ映像記録に関する取り決めはありませんが、世論の動きを考慮すると、近い将来に医療記録を画像で残すよう指示が出る可能性は高いと思います。その準備のためにも、新病院開設のタイミングで導入しておくべきだと考えました。導入するシステムによっては、新病院の設計段階から計画に盛り込むことが必要です。実際に手術の画像をHDDレコーダに記録している他県の病院施設を見学に行くなどして、必要なシステムを再確認するとともに知識を蓄えました。その上で当病院が抱いている要望を、手術室設備の設計開発やレイアウト提案などを担当する美和医療電機さんに相談したところ、術場を監視するために一番相応しい機器として、ソニーのネットワークカメラとネットワークカメラ専用レコーダーが提案され、導入決定しました。さらに、術野記録として無影灯の中央にカメラを設置し、術者である医師や助手、手術介助の看護師などの手元を記録するシステムも導入することになりました。(黒田副院長・岡崎副部長)
5つの全ての手術室にネットワークカメラSNC-RZ30Nを各1台設置しました。診療科によって使用する手術室がほぼ決まるため、各科の手術内容にあわせ、さらに患者さんのプライバシーにも配慮して設置位置を決めました。ネットワークカメラ専用レコーダーNSR-100は手術室のスタッフステーションと医師控室に設置し、5室すべての映像を1台のモニターに分割表示し、スタッフが全室の進捗状況をひと目で把握できるようにしました。拡大表示したい映像の選択やカメラアングルの調整は、リモートコントローラーRM-NS10で行います。また、術場映像を映すモニターの隣に術野映像を映すモニターを置き、両方の映像を一元管理できるようにしています。さらに、ICU個室にもSNC-RZ30Nを各1台天井設置し、ナースステーションに置いたNSR-100とモニターを通じて、患者さんの様子を確認できるようにしました。(黒田副院長・岡崎副部長)
カメラ映像を選択すると、拡大表示が可能。操作はリモートコントローラーRM-NS10で行う
監視システムを導入したことで、進捗状況の確認はもちろん、複数の医師が手術に関わるタイミングの連絡や、手術後患者さんを受け入れる病室の準備など、業務効率がアップしたと感じています。万が一緊急事態が生じた場合でも、早期に気づき対応することが可能です。また、手術映像をHDDに記録しておくことで、医療安全対策や教育に役立てることができます。患者さんやご家族への説明する場合にも、映像がある方が理解していただきやすいと思います。
ICU個室に設置した監視システムは、直接の見回りを極力減らすことで患者さんへの過多な刺激を避け、かつ病状を見守るのに有効です。院内感染を防ぐことにもなります。(黒田副院長・岡崎副部長)
新病院建設の早い時期から計画したことにより、院内のネットワークインフラを整えることができ、システム拡張に柔軟に対応できるようになっています。たとえば、医師の部屋までネットワークを引き、PCに多地点モニタリングソフトウェア「RealShot Manager」をインストールすることにより、医師が自席にいながら手術室の様子を確認できますし、監視システムとナースコールを連動することも可能です。将来手術室を増設するかどうかは、いまのところ不明ですが、増設する際には、その時の最新の管理システムを導入したいと考えていますので、ソニーさんにはさらなるシステムの改善を続けて欲しいと思います。(黒田副院長・岡崎副部長)