コースの各所を高画質な映像で監視
岡山国際サーキットは、中国四国地方で唯一の国際公認サーキットです。四輪ではSUPER GTを筆頭にスーパーフォーミュラ/全日本F3選手権、スーパー耐久レース、全日本ジムカーナなどが、二輪ではスーパーバイクレースなどが開催され、年間30万人の来場があります。他サーキットと比較して観客とレース車両との距離が近く、臨場感あるレースが楽しめることで人気を博しています。
コース部ではレースの公平公正と迅速かつ円滑な運営に取り組んでいます。コースやピットなど周辺環境の整備、判定や監視システムの運用といったレース本番が滞りなく開催できるように運営しています。レース中に万一アクシデントや違反があった場合は、いち早く発見して対処する必要があります。そのために正確に映像を捉えるカメラが不可欠なのです。これまでも複数のアナログ映像カメラを設置していました。アナログだと映像が不鮮明で、現場の判定員に再度確認する手間が発生していました。
防犯用途のイメージが強い監視カメラがレースでも充分に使用に耐えられることは驚きでもありました。レース車両の高速域に監視カメラがついていけないのではないかと考えていたからです。特にスーパーフォーミュラにおいては近年コーナリングスピードが非常に高くなっており、100km/hを超えています。このスピードレベルに追いつき鮮明な映像を撮る必要がありますが、そんな環境においてソニーのネットワークカメラは性能を充分に発揮してくれました。ハイエンド製品を導入することなく実現できたことでコストパフォーマンスにも優れています。
トップスピードのレースカー映像を捉えるコントロールタワーのドームカメラSNC-WR632
ピットの屋根に設置したカメラSNC-EM632Rで記録した作業の細部まで監視できる映像
今回、ソニーのネットワークカメラの導入は3期に分けて段階的に実施しました。アナログカメラからの緩やかな移行、しっかりとした検証を行うためにあえて時間を掛けました。1期目は2013年冬にコントロールタワーのドームカメラ、ピットエリアのカメラを設置しました。2期目の2014年夏にコースへの部分導入とゴール判定のためのコントロールラインのカメラを設置しました。3期目の2015年冬に全てのアナログカメラからの切り替えを完了しました。
アナログカメラの利点は映像転送速度が早くてリアルタイム性に優れていることです。一方、従来のデジタルネットワークカメラでは、動きの速い被写体を撮るためにシャッタースピードを高速にすると映像が暗くなってしまい実用に耐えませんでした。秒間30コマでは走行車両のスピードについていけず、正確なレース判定ができなかったのです。デジタルの高画質は魅力的でしたがリアルタイム性は譲れなかったので既存のアナログカメラを残しながらデジタルカメラを導入することも計画当初は検討しました。
そんな条件の中、ソニーのネットワークカメラはデジタルで秒間60コマの高速シャッタースピードを実現できました。高感度なので映像が暗くなりません。アナログアウトが常時出力可能なのでリアルタイム性が求められる場面でも活用することができます。それをソニーから提案してもらったときに、「これなら大丈夫!」と感じて選定しました。
ピットエリアを監視する目的は各レースチームにピット作業のルールを遵守してもらうためです。走行車両と歩行者が交錯する唯一の場所がピットエリアで、歩行者の危険度が最も高い場所なのです。岡山国際サーキットでは幸い発生していませんが、海外サーキットではピットエリア内の事故が報告されています。ピットエリア全てをカバーする台数のIPカメラを導入したのは全国で岡山国際サーキットが初めてです。レース関係者からとても高い評価をいただき、各地のサーキット担当者がソニーのネットワークカメラの実力や効果をヒアリングにやってきました。岡山国際サーキットから安全を守る新しいカタチが発信できたと感じています。
管制室に並ぶモニターでコースを監視して、現場の判定員に指示を出す
人間は一つのことに集中するほど視野が狭くなりがちです。カメラはそういったことがありません。広い視野でありのままを常時記録し続けます。逆に、カメラでは発見が難しいこともあります。レース中に3センチにも満たない小さなボルトがコース上に落下したとします。カメラ映像を伝えるモニター上では見落としてしまうかもしれませんが、人間はそれらの異変に気がつくことができるのです。
目視だけでなく、音や匂いなど感覚的に認知できる超越的能力が経験を積んだ人間には備わっています。どんなに高性能なカメラにも、経験ある人間の能力が勝るのです。一方、カメラでしっかり記録されている安心があることで、現場の判定員はフラッグ出しや報告など注力すべきことに集中できます。「人間の不得手をカメラが補い、カメラでは発見できないことを人間が担う」 それが人間と機械の理想的な関係ではないでしょうか。
今後は走行車両のゼッケン番号認識もやっていきたいと考えています。多くのサーキットでは走行車両に計測器を搭載してラップタイムを計測しているのが一般的です。これをカメラ映像で実現し、どの車体が今どこを走行しているのかを把握したいと思っています。IPカメラならできるのではないかと期待しています。
岡山国際サーキットではプロによるレースの他にも一般愛好家の走行のためにコースを開放しており、多い日は300〜400人が走行を楽しみます。そういった一般の方の安全の管理も大きな目的です。そのために精細なカメラとシステムの運用が必要です。プロのレースと一般の方を比較すると、一般の方のアクシデントのリスクはより高まります。どういったアクシデントだったのか正確に検証していくことが大切です。また、今後はコース外の駐車場やイベント広場も含めた安全管理にもネットワークカメラを活用していきたいです。
私(石村様)は過去にドライバーとしてジムカーナにも参戦しました。この仕事につきコース部で働いて、楽しい思い出もあれば悲しい出来事もいくつかありました。そういった悲しい出来事を繰り返したくありません。サーキットを走るのは自己責任という大前提があります。プロでも一般愛好家でもそれは同じです。
岡山国際サーキットを愛してくださる皆さまを守っていく、それが私たちの仕事です。
導入機器 | |
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ネットワークカメラ | |
SNC-EM632R | ×5台 (ピットエリアのルールを遵守してもらうためにピットエリアに設置) |
SNC-WR632C | ×24台 (コントロールタワーおよびコース各所に設置して走行違反の発見や事故プレビューに利用。判定作業をサポート。) |
SNC-VB600 | ×1台(ゴール判定用カメラ) |
NSR-500/00 | ×7台(記録用) |
※上記は納入時の構成です。閲覧される時点で販売が終了している可能性がありますことをご了承ください。 |
2016年3月掲載