1995年11月に運行開始したゆりかもめは、レインボーブリッジやお台場、東京ビッグサイト(東京国際展示場)などを通り、新橋−豊洲間の16駅・約15kmを結んでいます。臨海エリアの発展とともに、利用者は年間4000万人以上、1日平均10万人余りに上ります。
ゆりかもめは全自動運転によって、安全で快適な乗客輸送を行っています。この運行を支えるシステムのひとつにCCTV装置(Closed Circuit Television System)があります。CCTV装置の映像情報は、列車やお客様の状況を把握するうえで非常に重要になります。各駅に設置された監視カメラの映像は、それぞれの駅務室内で確認できます。同時に中央指令所にも配信され、全駅のホームおよびコンコースを集中監視することで、お客様と列車の安全を常に守っています。
1995年の開業時から使用していたCCTV装置はアナログカメラで構成されていました。20年前のシステムとしては高性能でしたが、年月の経過とともにメンテナンスに苦慮するようになり、CCTV装置の更新を行うことになりました。
CCTV装置の更新にあたって、技術部ではネットワークカメラの採用を視野に入れました。そして、ネットワークカメラの性能や特長、コストパフォーマンスなどの調査を進めていくにつれ、「ネットワークカメラの特性を当社のCCTV装置としてうまく利用できるのではないか」と感じるようになりました。
アナログカメラからネットワークカメラへ移行する際に懸案としてあがっていたのが「動画の滑らかさ」でした。ゆりかもめでは映像情報の重要性から、監視する人間の負担にならないようにしたいと考えていました。導入前に実際に映像を確認したところ、秒間30コマでも問題ありませんでした。しかし、多くの乗降客が動く多客環境になるとハイビジョン高画質の利点が低下してしまい、どうしても秒間60コマとの差が出てきました。こうした結果を勘案して、秒間60コマの製品を導入しようという判断にいたりました。
一方で、ネットワークカメラの映像データは、多くのネットワーク帯域を必要とします。そのため、事前に光伝送によるネットワークシステムを導入して、十分なネットワーク帯域を確保したうえでCCTV装置の更新に移ることにしました。これにより、カメラ台数や多種多様な操作性についての制約を受けることなく、CCTV装置を構築することができました。
今回のCCTV装置の更新では、全16駅の各駅舎にHD対応ネットワークカメラを合計約200台設置するとともに、集中監視所には専用モニタリングシステムを導入しました。
これによる一番の利点は、高画質映像のネットワーク化です。従来は「中央指令所でのコントロール性」に重点を置いた構成になっていました。しかし、ネットワーク化によって、ネットワーク環境下にある中央指令所および駅務室であれば、「必要なタイミングで、必要とする人が、必要な映像を確認できる」という集中監視の機能を享受できるようになりました。
もちろん、従来のアナログカメラによるシステム構成においてもその考え方は同じでした。ただ、ネットワークカメラを採用することでシステムがシンプルになり、今ではどこでも同じように高画質映像のネットワークにアクセスすることができます。多くの係員で情報共有ができるようになったわけです。しかも、人や列車の動きを滑らかな映像で確認できるので、安全管理・運行、そしてお客様への対応もよりスムーズになりました。
このほか、逆光補正機能によって西日の影響が軽減できたり、HD画質の高精細映像により悪天候時にも軌道上(路面)の状況をすぐさま視認できるようになりました。
2016年11月には築地中央卸売市場が豊洲に移転して「豊洲市場」として開場します。また、世界的スポーツイベントの東京開催も4年後に迫り、各所で会場整備も進んでいます。臨海副都心エリアのさらなる発展に伴って、ゆりかもめの交通システムとしての重要性や安全運行の必要性、期待度はますます高まっていきます。
今回、ネットワークカメラの最大の利点ととらえている「高画質映像のネットワーク」が構築できたことで、集中監視の機能をより多くの環境下で得られるようになりました。このネットワークを閉鎖型にすることで気密性を維持することはもちろん、ハイビジョン高画質かつ高機能な映像、そして広範囲をカバーする映像情報を用いて、今後もさらなる安全・安心運行サービスに取り組んでいきます。
2016年3月掲載