ソニーストア銀座の配信スタジオよりスタイリストの吉岡、挨拶。
先日発表されたFX3のソフトウェアアップデートVer.2.00にて対応となったCine EIなどのLog撮影 モードに関して、映像作家の江夏由洋氏をお呼びし、その魅力や使い方について語っていただく。江夏氏は、普段からソニーのCinema Lineやα7SIIIを使用されており、Log撮影を含めたワークフロー熟知されている。
視聴者に、江夏氏への質問をチャット欄に書き込みの案内。
江夏氏登場、挨拶。
<江夏由洋氏 プロフィール紹介>
1998年東京放送(TBS) に入社後、スポーツ局のディレクターとしてドキュメンタリー番組を中心に数多くの中継に携わる。
2008年兄正晃氏と共に株式会社マリモレコーズを設立し、独立。企画撮影から編集・配信まで映像制作をトータルに行い、テレビ・CM・映画、WEBプロモーションなど、数々の映像制作を手がけている。
まずは吉岡より、今回のソフトウェアアップデートの内容を簡単に紹介。
(吉岡)
ソニーが2022年7月14日にリリースしたFX3のVer.2.00では、魅力的なアップデート機能がいくつも実装されている。まず、お好みのLUTをモニター映像に表示しながら撮影ができるLog撮影モードに対応。メニュー画面が新しくなるなど操作性の向上。その他にも、編集・撮影・編集アシスト機能の拡充など、FX3ユーザーはもちろん、FX3を買おうか迷っている方にもとても大きなアップデートになっている。
江夏氏に今回のソフトウェアアップデートについて伺う。
(江夏氏)
(手にFX3の実機を持ちながら)本当に素晴らしい。シネマのカメラとしてFX3を使用したい方にとっては待望じゃないかと思う。いろいろ機能が搭載され、レベルが上がったというかみんなやりたかったことができるカメラになったと思う。
本日はテーマに沿って話しを伺っていく。
○ LOGとは
LOGについてのスライドを表示。
LOG:広色域・ハイダイナミックレンジ撮影 S-Gamut3.Cine・S-Log3
(江夏氏)
LOGと聞いて知っている方や知らない方もいると思うが、まず確認しておきたいことが、Log撮影とはどのような撮影かというと、通常の撮影よりもたくさんの情報をカメラに取り入れて撮影する方法をLog撮影と言う。では、たくさんの撮影とは何だろうというところで、LOGというのは広色(たくさんの色)とハイダイナミックレンジ。暗いところや明るいところの光の情報をたくさん撮るというのがLog撮影である。
必ずLOGで撮影する時は、色域とハイダイナミックレンジはセットになる。
S-Gamut3.Cineは、ソニーが作った色域の規格で、すごく広く、通常のカメラで撮るよりも広い色域で撮影できる。
S-Log3というのは、LOGのカーブのことを言う。暗いところが潰れず、明るいところも飛ばず撮影ができる。
LOGというのは、色と明るさの2つが通常の撮影よりもたくさん広く取れるということが、Log撮影の基本的な説明となる。
江夏氏がLog撮影した作例を見ながら解説していく。
制服を着た女子高生が緑の木々の中に佇んでいる作例。
(江夏氏)
このままだと少し白っぽいというか薄い印象があるので、LOG設定したが大丈夫かと心配になる方もいるかと思うが、実際に編集を加えるときちん発色の良いきれいな映像になる。
LOGの説明にあった「色域」と「ハイダイナミックレンジ」について解説していく。
・色域について
人間の可視領域にそれぞれ5つの三角形で色域を表した図をスライド表示。
[S-Gamut3.Cine、S-Gamut3、ITU-R BT.2020、DCI P3、ITU-R BT.709]
(江夏氏)
ソニーが持っている色域は「S-Gamut3.Cine」と「S-Gamut3」の2つだが、人間の可視領域よりも広い。人間が見えないところまでもしっかりと捉えられるというのが、この広色域による撮影になる。また、編集後にテレビなどで実際に私たちが目にする色域は、ほとんどがこの中の一番小さい三角形ITU-R BT.709の範囲内になる。映画の場合は少し大きめの三角形DCI P3の色域になる。
ほとんどの方が行っている編集や配信・上映の方法は、この一番小さい三角形ITU-R BT.709の中になるので、広く撮る必要はないのではないかということになるが、広く撮っておけば編集時にたくさんの情報をどう使用するか選択の幅が広がるので、広色域で撮影しておいた方が良い。
大切なのは、どの色域で撮影し、どの色域で編集し、どの色域で見るのかということ。
先ほど説明をしたように、ほとんどの場合がITU-R BT.709という色域なので、撮影している三角形と編集や上映をする三角形は別だというところを考えなくてはならいない。
この大きい三角形(S-Gamut3.Cine)で撮ることによって 小さい三角形(ITU-R BT.709)で使える色が出てくる。先ほどの女子高生を撮影した作例のように、なぜ色が白っぽく表示されて見えるのかというと、広い三角形の中にいろいろな色があるのだが、表示されている画面は真ん中の小さい三角形の色域(ITU-R BT.709)になるので、その小さい三角形の周りにある色は表示できない。なので、白っぽく見えてしまう。Log撮影すると画面が白っぽく見えるのは、広い色域の画を小さい色域で見ているためである。
そのような理由で、色と言うのは、広い狭い、何で見るのかということがすごく大切になってくる。
・ダイナミクスレンジについて
夕陽が見える海を背景に女性を映した作例を表示。
(江夏氏)
撮影の際、背景を活かそうと思うと被写体が暗くなり、被写体の女性の顔に色質を合わせようとすると背景が飛んでしまったという経験は誰しもあると思う。実際の状況としては、暗いところと明るいところの差がすごくあるので、カメラでは全部を撮りきれなくない。つまり、ダイナミクスレンジが目で見ているよりも狭いので、実際目で見ていると顔も見えるし背景もきれいだが、カメラで撮るとどちらかが潰れたり飛んでしまったりという悩みがあると思う。それは、その状況のダイナミクスレンジが非常に広いので、カメラがそれを 捉えきれないということが起きる。
スライドを表示:S-Log3で撮影すると最大15+ストップのダイナミクスレンジを得られる
(江夏氏)
15ストップとは、1ストップは露出1つ分だが、きれいに手前の暗いところも奥の明るいところもきちんとカメラが捉えてくれるというのが、このダイナミクスレンジの広いカメラが持つ映像表現。
僕の感覚だと、15ストップというのはかなり広いので、顔を暗く潰さず、背景も飛ばさずにきれいにグレーディングを後々できる広さがあるというのが、このダイナミックスレンジである。
その為、LOGで撮ると色がたくさん撮れるということと、明るいところから暗いところまできちんと捉えることができるということがLog撮影になる。
(吉岡)
今回S-Log2とS-Log3が選択できたものが、アップデートではS-Log3のみとなってしまったと思うが、 このテーマはどのように考えられているか。
(江夏氏)
僕はS-Log2を使っていた時期もありお世話になったが、センサーがどんどん新しくなり、操作カメラがアップデートされていくにつれてLOGのカーブもどんどん新しくなっていくのは当然なので、これからはS-Log3で良いかと思う。
S-Log3は15ストップのダイナミクスレンジを撮るための規格。先ほど説明をしたS-Gamut3.Cineは、広い色域を撮るための色域の規格。その為、FX3で選択肢がいろいろ出てくるが、S-Gamut3.Cineは色の話だな、S-Log3はダイナミクスレンジの話だなという風に思ってもらえれば良い。
(吉岡)
それではここで、LOGで撮ったものを編集時にどのようにグレーディングするのか実際に見せていただきたいと思う。
Premiere Proの画面を表示。
江夏氏が撮影した動画作例を読み込む。
(江夏氏)
僕は、M1のMacBook Proを使用している。
S-Gamut3.Cine + S-Log3で撮影すると、ここまで撮れるんだというようなきれいな画が撮れるので、まずプレミアを立ち上げて映像を見た時に、いいなと思う。
Premiere Pro内で操作を行っていく。
(江夏氏)
まずひとつ知っていただきたいところが、FX3やFX6で撮影をするとまず素材は、PRAIVATEフォルダの中のM4ROOTフォルダ内のCLIPフォルダに入る。(PRAIVATEフォルダ内にはDATABASE、M4ROOT、SONYという3つのフォルダがある。)そして、必ず撮影したファイルに対してXMLファイル(サイドカーファイル)が横に付いている。メタデータと言われるもので、これが素材のMP4動画データとワンセットになっている。XMLファイルというのは、素材動画データの情報が書かれている。
プレミアにあるのはXMLファイルがないMP4の動画データのみの状態である。このまま動画データをドラッグ&ドロップでタイムラインを作ると、色が変化する。
プロジェクト→「変更」を選択→「フッテージを変換」をクリック→カラーマネジメントの項目を見る。
「ファイルからメディアカラースペースを使用:Sony S-Log3/ S-Gamut3.Cine」にチェックが入っている。
(江夏氏)
先ほど何で撮影して何で編集するかという話をしたが、今は編集になるのでITU-R BT.709で編集しないといけない。撮影した動画データはS-Gamut3.Cineだが、編集はITU-R BT.709で行わないといけない為、カラーマネジメントの選択が間違っているので、変更を行う。
「カラースペースを上書き」をクリック→「Rec.709」を選択する。
(江夏氏)
そうすると元通りの色になる。先ほどのXMLファイルがあると、この動画データ情報を伝えてくれる役割があるので、編集ソフトがそのXMLファイルを読みにいってきちんと再現することができる。こういうタイムライン上で突然色が変化してしまうようなことが起こる場合があるが、自分が撮影した色域やガンマ、自分が何で編集しているかを分かっていれば、慌てず変更対応することができる。
作成したタイムラインに戻る。
(江夏氏)
現在の白っぽい見た目の動画は、先程話した通り、広い三角形の色域(S-Gamut3.Cine)で撮影したものを小さな三角形の色域(ITU-R BT.709)で見ているので色が全て表現できていない状態になるので、ここからは、広い三角形を小さな三角形に縮ませる作業に入っていく。それがLUT(ルックアップテーブル)というものを使用して変換していく。
撮影時と編集・再生時の変換についてスライド表示の上、解説。
(江夏氏)
通常、ITU-R BT.709で撮影したものは、ITU-R BT.709で編集、再生をする。LOGで撮影を行なっていない場合は、あまりカラーマネジメントのことを考えずにいたと思う。
今回は、S-Gamut3.Cineで撮影したものを、ITU-R BT.709に変換しないといけない。これをLUTをかけるという作業になる。通常の撮影編集と何が違うのかというと、カラーグレーディングの余地が広いので、楽しく自分の色表現をすることができる。その点がLog撮影の大きなポイント。
スライド表示:LUTは「呪文」たくさんの情報を再格納(remap)するイメージ
(江夏氏)
LUTは「呪文」だと思っている。たくさんある広い三角形を小さい三角形に再格納(remap)する作業になる。
女子高生がバストショットで映っているカットを表示。
LUTをかける操作を行う。LUTをかける前、後で色の比較表示。
(江夏氏)
この女子高生が映っているカットにLUTをかけると、きれいに再格納(remap)できる。
この作業はどうするのかというと、ソニーからオフィシャルなものが提供されている。どうしても自力でやろうとしたり、LUTをかけないそのままの映像を使用したりする方がいるが、それはやめた方が良い。
必ずオフィシャルのものを使用した方がいい理由は、ソニーの技術者の方たちが考えに考え抜いて作った再格納(remap)の呪文なので、これにかなうものはない。
「テクニカルナレッジ」と検索すると、「S709」というものをダウンロードできるサイトがあるので、そこからLUTを入手する。
先ほどのPremiere Proの画面に戻る。LUT設定の操作を行う。
「Lumetri カラー」→「LUT設定」→参照から「SL3SG3Ctos709.cube」ファイルを選択。
(江夏氏)
先ほど説明したLUTの設定が、Premiere Pro の標準のカラーコントロール「Lumetri カラー」内LUT設定の項目で、先ほどダウンロードしたLUTを選択する。
タイムライン上の動画が色鮮やかな見た目に変わる。
(江夏氏)
このように、大きい三角形(S-Gamut3.Cine)のものを小さい三角形(ITU-R BT.709)に縮める作業をおこなったので、今小さい三角形(ITU-R BT.709)の方で見ているのできれいに見える。先ほどは見えていなかった色が、小さい三角形(ITU-R BT.709の中に納まったことによって全ての色が見えるようになった。
通常の小さい三角形(ITU-R BT.709)で撮影したものを小さい三角形(ITU-R BT.709)で見ることと何が違うかというと、大きい三角形(S-Gamut3.Cine)のものを凝縮させたので、よりきれいな映像になる。
なお、「S709」というLUTは、Cinema Lineのハイエンド機であるVENICEの色みを参考にして作られたLUTなので、見た目はVENICEで撮影したものと変わらないくらい色みが良い。これを使えるということは正にLOGで撮影して良かったと思えるところ。
(吉岡)
視聴者から「雰囲気で触っていた」というコメントもいただいている。
(江夏氏)
雰囲気もすごく大切だが、やはり理論を知ると圧倒的に自分のやっている作業の意味がわかるので、ワークフローがもっと効率的に組み立てられる。また、LOGで撮る時に何を注意しなきゃいけないか、どうすれば新しいプロダクションの次のプロジェクトにいい映像を作れるのかという発想が湧いてくる。
LOGという説明は誰もしてくれないので、もう一度確認しながらやっていただけるといいと思う。
Premiere Proの画面に戻る。
LUTをかけた動画を再生。
(江夏氏)
ノートブックでも4Kの動画はスムーズに動く。
もう一つ言いたいことは、「LOGで撮影するとデータが重いのでパソコンの動きは大丈夫か」という質問があったりするが、通常のITU-R BT.709で撮ったファイルの大きさと、LOGで撮ったファイルの大きさは変わらず一緒なので、心配はない。今通常の映像編集ができているパソコンがあれば、LOGでも問題なくできる。
失敗ができない企画だと、いろいろな設定があるLOGで撮影するのが怖くて通常で撮ろうかと思う場面もあると思うが、テスト等できちんとできていれば、絶対にLOGで撮影した方が良い。
Premiere Pro画面→「Lumetri カラー」→「RBGカーブ」を操作。
(江夏氏)
RBGカーブを使用して、コントラストを決めていく。
まずLUTを設定し、次にコントラストを決め、ここから色を調整していく。
色をいじっていくのは、まずここまで色を整えて正しい画を作ってから、自分の好きなようにグレーディングして楽しんでいただく。少しでもいい映像にしたいという時は、LOGで撮影することをおすすめする。
○ EI (Exposure Index)について
EI (Exposure Index)についてのスライド表示。
フィルムで撮影していた時代、ISOは固定だった現像時に「増感」「減感」していた。
EIとはどういうものなのか江夏氏に解説いただく。
スライド表示:そもそも「露出」は・・・レンズの絞りとシャッタースピードで決めるもの。
(江夏氏)
露出とは、明るさであり、レンズの絞り。どのくらい絞りを開けたり閉めたりするのかというところ。そしてシャッタースピードで決める。ISOは本来露出には含まない別のもので、昔はISO固定のフィルムを入れて撮影していた。現在はデジタルになりISOを変更できるようになったので、それも露出として使える。少し明るくしようとなればISOを上げたり、暗くしようとするとISOを下げたりができる時代になった。ISOを露出設定として捉えるのは間違いではないが、そもそもはシャッタースピードと絞りだけで露出を決めていた。
Cine EIとは、固定ISOの概念を持った使い方である。昔は、ISO100のフィルムで撮影してする際に、明暗の調整をしないといけなかった。元々あるISOからどれだけ明るくする(増感)か、暗くする(減感)かの指標がEI (Exposure Index)である。Cine EIは、そのやり方を踏襲したもの。
江夏氏がテーブルにあるFX3の実機を手持ちしながら説明。
(江夏氏)
カメラも実は固定ISOである。どのカメラにも決まったISOがあるが、デジタルなので調整することができる。
先ほどS-Logで撮影すると最大15ストップ露出がとれると説明したが、このカメラのそもそものISOでS-Log3を使うと15ストップとれるということ。Cine EIモードで撮ると、必ずこのカメラの一番得意とするISOで撮影できるモードである。その為、このモードで撮影する方がきれいな映像になり、LOGで撮るときはS-Log3の力を最大に発揮する感度で撮ると良い。
スライド表示:ベースISO センサーの能力が最も高い
FX3のベースISO ISO800 ISO 12800(高感度)
(江夏氏)
FX3のベース感度はなんと2つある。これがすごいところ。
ISO800もすごいが、ISO12800もベース感度として使える、ISO12800で撮っても15ストップとれる。
S-Log3で撮影すると15+ストップのダイナミクスレンジを得られる。このFX3はデュアルISOである。暗いところではISO800、明るいところではISO12800で撮影できるので、Cine EIモードで撮ると更におトクである。FX3は、ISO800 S-Log3で撮るとこのカメラの最大のパフォーマンスを活かした画で撮ることができ、且つ編集時に様々な色編集を行うことができるということが特徴。更に、ISO12800が使えるというところが、すごい技術力であり、フィルム時代の方が聞くと何かの間違いかと思われる程の感度である。デジタルだからこそこのCine EIモード。フィルム時代の考えを踏襲しているものの、やっていることは最先端である。
スライド表示:せっかくLOG撮影するのであればベースISOで!ISO800 ISO12800 より美しい映像を手にしよう!
(江夏氏)
新しくこのFX3にCine EIモードが使えるようになったということと、新しいLog撮影のモードが入ったというところが、今回のトピック。
このファームウェアアップデートによってFX3ユーザーは喜んでいるが、何がいいのだろうと考えた時に、LOGで撮影すると良いという点と、それだけではなく、ISO800とISO12800で固定して撮るというCine EIモードがポイントである。基本撮影はこの2つで行うことが良い。
(吉岡)
デュアルベースISOと勘違いされる方もいると思うが、その違いはどうか。
(江夏氏)
2つベースがあるのでデュアルベースであることは間違いないが、このCine EIモードは固定である。
例えば、Cine EIモードにして、増感・減感の操作はできるのでISOを選択して撮影を行なったとして、カメラの画面ではいい画が撮れたと思いそのままPremiere Proで編集をしようとすると、全部ISO800かISO12800で撮影した画になっていたということが起こる。その理由は、カメラの方で増感・減感してくれていたので、その分自分も編集時にパソコン上で増感・減感しないと撮った時の画にはならない。全部ISOがとれているというところがひとつのポイントなので、通常絞り、シャッタースピード、ISO変更で撮影していた方にとっては慣れるまでには時間がかかるかもしれないが、通常で撮影しているよりも遥かにきれいな画が撮れるので、ぜひチャレンジしていただきたい。
吉岡より、視聴者からの質問を紹介していく。
視聴者からの質問:Cine EIモード、Cine EIクイックモードについて解説いただきたい。
スライド表示:FX3新ファームウェア登場!Cine EI/ Cine EI Quick/Flexible ISO
江夏氏がテーブルのFX3実機を操作しつつ解説。カメラのメニュー画面を表示。
(江夏氏)
僕もCine EI Quickは初めて今回のアップデートで使用したが、この新しいファームウェアのメニュー画面を見ながら解説していく。
メニュー画面もとても良いので、今回のアップデートで好きになる方が増えると思う。
Log撮影設定の操作を行っていく。
メニュー画面より操作していく。「メイン1」→「動画設定」→「1.画質/記録」→「Log撮影設定」
(江夏氏)
今回「Log撮影設定」が新しくなった。今までは「記録方式」「動画設定」で設定を行っていたが、選択バーに「Log撮影設定」ができた。
「Log撮影」→「切」「Flexible ISO」「Cine EI Quick」「Cine EI」が選択できる。
(江夏氏)
「切」はLog撮影しない、「Flexible ISO」は通常のISOも露出として考え明暗設定をする、「Cine EI Quick」「Cine EI」は、この設定で撮影すると必ずベース感度で撮影される。その為、明暗調整は編集で行う。
それぞれの設定について詳細説明のスライド表示。
・Cine EI
標準の基準感度ISO800と、暗所環境用の高感度ISO12800の2つから選択。
15+ストップのダイナミックレンジを確保。
撮影時はEI(Exposure Index)を調整しモニタリングLUTの露出を変更。
・Cine EI Quick
Cine EIモードと同様にベースISOで撮影、15+ストップのダイナミックレンジを確保。
調整したEIに連動して自動的にベースISOが切り替わるモード
・Flexible ISO
従来のS-Log3撮影同様にISO感度を調整しながら撮影するモード。
ISO感度の調整でモニタリングLUTの露出を変更することができ、
設定されたISO感度は映像にも記録。
メニュー画面に戻り、操作再開。
「Log撮影」→「Cine EI」→「色域」→「S-Gamut3.Cine/S-Log3」「S-Gamut3/S-Log3」を選択できる。
(江夏氏)
僕は「S-Gamut3.Cine/S-Log3」を選択している。
「Log撮影」→「Cine EI」→「LUTファイルの埋め込み」→「入」
(江夏氏)
LUTファイルの埋め込みを「入」にしておくと、撮影したSDカードにLUTファイルが入る。その為、先ほど解説を行った「テクニカルナレッジ」で検索してダウンロードする必要がない。非常にいい機能。
これで設定を完了する。
メニュー画面トップの「メイン1」に戻る。「Base800」という表示を選択
(江夏氏)
Base ISOを800もしくは12800で選択できる。
「メイン1」→「Exp.Index:320EI/4.7E」を選択。ISOを操作可能。
実際に花瓶に入った黄色の花を映しながら設定。
(江夏氏)
例えばISO1600に設定すると、一段明るくなっている。そうすると、編集時に一段明るくして編集しないと今設定した同じ画にはならない。これを撮影してPremiere Proで開くと、「800EI/6.0E」の暗めの画が入っていることになる。その時になぜ暗くなっているのだろうと思わずに、一段設定を明るくして編集しないといけない。
また、例えばBase ISO800で3200EIまで上げて設定するのであれば、先ほどのベース感度はBase ISO12800にして暗く(減感)していく方が、ノイズが少なくて良い。これがExposure Indexである。自分で露出を変えながら設定していく。
視聴者からの質問に回答していく。
視聴者からの質問:明るすぎる野外で撮影する時に、ISO100等に下げて撮影することがあったが、これだと15+ストップより少なくなるということか。
(江夏氏)
その通りで、特に100で撮影するとストップ数は減る。その為、ISO100になってしまう場合は、シャッターを切る、絞る、もしくはNDフィルターを入れるなどを行ってISO800で露出を作る。Cine EIで撮影する時こそNDフィルターを多用されると良いと思う。あまり絞りやシャッタースピードは変えたくないので、NDフィルターは必須になる。
視聴者からの質問:LOGで撮影すると色域が広くなるが、LOGではない色域はどのくらいの範囲になっているのか。
(江夏氏)
先ほど説明した小さい三角形(ITU-R BT.709)の範囲になる。
視聴者からの質問:実際にCine EI Quick Flexibleの画面を見せていただき、江夏氏が現場で実際にどのように使い分けをされるか教えていただきたい。
(江夏氏)
まだCine EI Quickを使用していないが、自分が使い分けるとすると、スタジオでどのように撮影するか考えて撮影できる場合はCine EI。ドキュメンタリーのようなかたちで、室内/外の行き来があり、いちいちベース感度を変えていられない場合は、Cine EI Quickで撮影しておくと自動的に変換してくれるので最適だと思う。ただ、増感/減感されてしまったというようなこともあるかもしれないので、自分の意思でベース感度を変えたい場合はCine EIで撮る方がいいと思う。
視聴者からの質問:編集でどのように増感/減感するのか実践していただきたい。
江夏氏のパソコンの画面にて「Catalyst Browse」を表示。
(江夏氏)
編集での増感/減感調整は、ぜひCatalyst Browseを使用していただきたい。これはまだ知られていないが、ソニーの素材を撮影で使っていらっしゃる方には必ずダウンロードして使っていただきたい。
その理由は、先ほど話したメタデータをきちんと読みにいくところ。増感/減感で撮影した情報が全て入っていて、その時自分が背面液晶で見ていた画をきちんと再現してくれる。
江夏氏が、自分の部屋を撮影した動画素材を「Catalyst Browse」画面で開く。
「色調整」→「ソース設定」→「露出」
(江夏氏)
露出部分を見てみると、ISO800のベース感度の数字が出ている下に、撮影はISO3200で撮っているという数字が追加で表示されている。全ての情報が表示されているので、とても便利。SDカードに入っている動画素材全てのクリップのISOや色の状態を瞬時に確認することができる。また、その当時作成したメタデータを、増感/減感したりなど手動で変更することもできる。また、このデータを様々なフォーマットで書き出すこともできる。
また、更にいい点が、手ぶれ補正がついていること。カメラにも撮影時に手ぶれ補正機能が付いているが、実はXAVCファイルには、このカメラの撮影時の傾き等の情報が同時に記録されている。そこで、カメラのレンズ側もボディー側も手ブレ補正を全てオフにして撮影し、手ブレをしてしまったという場合でも、Catalyst Browseに入れて手ぶれ補正をかけると、撮影時のカメラの位置情報を全て認識してそれを相殺するような手ぶれ補正がかかるので、通常の画像の検索認識で行う手ブレ補正とは違い、メカニカルに手ぶれ補正をすることができる。ただ、撮影時にカメラのボディやレンズどちらかに手ブレ補正がかかっている場合は、Catalyst Browseの手ブレ補正機能は使用できない。Catalyst Browseにはそのような便利な機能もある。
Premiere Proで通常の編集を行う際に増感/減感調整となると、メモを取っておかないとこのクリップのISO減感どうだったかとわからなくなってしまうと思う。しかし、Catalyst Browseだとメタデータをきちんと読み込んでくれるので情報が全てわかるので大変便利。
(吉岡)
今回のアップデートで、静止画でα7SIIIを使用されている方も多いと思うが、FX3との差が大変出たなと思うがどうか。
(江夏氏)
写真機としてはα7SIIIはすごく使いやすくて良いというところもあるので、どちらが良くて悪いということもないが、できるできないの範囲がそれぞれ違うので、自分に合った方を選択できる。また、差別化がどんどん広がってきており、FX3は今回Log撮影の幅がかなり広がったので、プロダクションで動画撮影をしたい方にはFX3の方が圧倒的に良いと思う。
カメラはそれぞれの用途で判断して選んでいただくのが良いと思うが、今回言いたい点は、アップデートによってFX3は相当いろいろなことができるようになったというところである。
視聴者からの質問:Premiere Proで直で増感/減感するより、Catalyst Browsで編集して新たに書き出したファイルを別ソフトで編集した方が良いということか。
(江夏氏)
撮影時に増感/減感した際に情報をメモしていて自分でわかっている場合は、Premiere Proの編集で増感/減感調整をしてもらって問題ない。Catalyst Browsは確実にその時のメタデータを読み込むので、安全安心である。王道はないので、自分がどの方法が使いやすいかでそれぞれのスタイルを作っていただければと思う。ただ、まずLOGの知識と、Exposure Indexの意味を理解しておかないと操作の方法や自分のやり方を確立できないので、その点は理解しておいていただきたい。
ここで江夏氏の解説は終了。
(吉岡)
視聴者の皆様には大変盛り沢山だったが、大変シンプルに説明いただいたので分かりやすかったと思う。
FX3を既にお持ちの方はもちろん、FX3を購入しようか悩まれている方にとって参考になれば幸い。
江夏氏より感想と視聴者へのメッセージをいただく。
(江夏氏)
あっという間だった。
実際に触ってみることが良いと思う。LOGやCine EIを知らない方は、ぜひその世界に一歩入っていただき試してみるのが面白いと思う。
最後に、江夏氏がCine EIで撮影した作品を紹介。
動画が流れる。
******
女子高生が学校の階段を上がっていく。
学校の外観風景。
女子高生が黒板にチョークで「Amazing Stories」の文字を書く。
廊下に立つ女子高生。
「She has a dream 彼女には夢がある」
手洗い場で顔を洗う女子高生。
「to break out of her small world この小さな世界から抜け出して」
窓からグラウンドを眺める女子高生。
「and to begin a new chaper her life. 新しい舞台を見つけることだ」
バスケットゴールに向かってボールを投げる女子高生。ボールはゴールのリングに跳ね返って落ちる。
「The scenery never changes. 繰り返される景色」
女子高生の表情に寄って、床に転がるボールのカットになる。
「The same routine everyday. 変化のない毎日」
黒板のフレームに置かれた黒板消しに寄ったカット。
時計のカット。
緑の木々の中を歩く女子高生。スローモーション。
「Always anxious いつも不安で」
「Always lonely いつも心細い」
橋の手すりに寄りかかりながら上空を見上げる女子高生の様子を映しながら引いていく。
「What does her future hold? 私はどこに向かって歩いているんだろう?」
鏡に向かって赤い口紅を塗る女子高生。
「The possibilities are endless. 可能性に賭けてみたい」
体育館のバスケットゴール下でボールを抱えてこちらを見つめて立っている女子高生。カメラが女子高生に寄っていく。全体が暗めの青い空間の中、カラフルに点滅する照明バーが周りにいくつも立っている。
「The thought makes her stronger. そんな思いが彼女を強くする」
グラウンドで膝に手を置いて下を向き、屈む姿勢の女子高生。
「She has a dream 彼女には夢がある」
顔を前に上げる。
「to one day change the world. それはいつかこの手で世界を変えることだ」
グラウンドを全力で走り出す女子高生。寄りと引きの映像。
女子高生が広い砂浜を走っている映像になる。
「Her passion is stronger than anyone. 誰にも負けない想い」
「A passion never to be forgotten. 誰にも譲れない誓い」
砂浜に座る女子高生。広げた手から砂が流れ落ちていく。
「To challenge herself. だから今、挑戦する」
砂浜に座りながら手を握りしめて前を見つめる女子高生。
「To open the door to the future. だから今、扉が開く」
砂浜にうつ伏せに寝転がっている女子高生。砂を見つめている。
砂浜に波が寄せる映像。
波打ち際を微笑みながら歩く女子高生。スローモーション。
「The future she has dreamed of. 夢の未来へ」
水平線に太陽が見える波打ち際に女子高生が立ってこちらを見つめている。
「Now,she is ready to tell amazing stories. 今、新しい物語が始まる」
髪をかき上げて空を見上げる女子高生。
Shot on Sony FX6
エンドロール
*****
動画作品、終了。
撮影場所は、静岡の砂丘と廃校。
(江夏氏)
LOGで撮影することのひとつの魅力として、白の部分が飛ばずにきれいに残すことができる。
ハイライトのロールオフは近年シネマカメラで当然のように言われている色の表現方法だが、これができるのがCinema Lineだと思う。
(吉岡)
ここで、視聴者の方から「ソニーストアの実機で自前のSDカードを入れて試し撮りして自分のパソコンでいろいろいじってみたい」というコメントをいただいているが、もちろん可能なので、ぜひ持参して来店いただきたい。
αプラザ/ソニーストア直営店舗の案内スライド表示。「αプラザ」で検索。
本日ご紹介したFX3をはじめ、デジタル一眼カメラαシリーズは、全国5カ所のソニーストアの中にあるαプラザで展示している。
αプラザでは、これからカメラを始めたいという方や既にプロとして活躍されているフォトグラファー、ビデオグラファーまでカメラに携わる全ての写真や映像の制作活動を支援する場所となっている。商品の体験・購入の相談、購入後の撮影サポートとして、メンテナンスやカメラスクール講座などあらゆるサービスを提供している。
詳しくは概要欄のαプラザ、ソニーストアのURLより確認可能。
本日紹介したデジタル一眼カメラα及びレンズは、全国の量販店及びソニーの直営店舗またはソニーストアオンラインやソニーショップなどで注文可能。画面下にリンクを貼っているので参照。
ソニーストアでは店舗以外でもオンラインによる購入相談まで実施している。
「プロフェッショナルカムコーダー ILME-FX3/おすすめレンズ」のスライド表示。
ILME-FX3 /504,900円(税込)
SEL2470GM2 /297,000円(税込)
SELP1635G /165,000円(税込)
改めて江夏氏より、ライブ配信の感想をいただく。
(江夏氏)
このようにインタラクティブにいろいろな方と交流できるのは良い。
何より、シネマの作品を少しでも多くの方に撮ってもらえると良いと思う。
僕も負けないように頑張りたいと思っている。
吉岡より視聴者に締めの挨拶、終了。
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