紅葉の風情を撮る
デジタル一眼カメラ α(アルファ)で写真撮影を楽しむ木々が赤や黄色に色づく紅葉の季節、今年はいろんな撮りかたにチャレンジして、写真で紅葉を魅力的に表現してみませんか。紅葉の撮影ではAモードに設定し、絞りを自在に調整できるようにしておきましょう。全景にピントを合わせたい場合は絞りを絞って、葉っぱや枝をクローズアップして引き立てたい場合は絞りをなるべく開いて撮影するのが基本です。
光の当たり方を考えよう
カメラの設定の前に、まずは光の特徴と活かし方を見てみましょう。紅葉は光の当たる方向や時間帯、天候で結果が大きく変化するためです。晴天の場合、光の当たり方はおおまかに順光、サイド光、逆光に3つに分類されます。撮影時は太陽の向きを考えながらいろんな光で撮ってみましょう。
-
- 順光で撮影
- 写真:福田健太郎
焦点距離:35mm / F値:10.0 / シャッター速度:1/50秒 - 被写体に対し、正面(カメラ側)から当たる光を順光といいます。順光での撮影では、色鮮やかで見た目に近い自然な感じで撮影することができます。一方で影が出ないため、立体感に欠けた平凡な写真にもなりがちな光でもあります。
-
- サイド光で撮影
- 写真:福田健太郎
焦点距離:200mm / F値:8.0 / シャッター速度:1/60秒 - 被写体に対し、横方向から当たる光をサイド光といいます。サイド光での撮影では、木々に影が出るため風景に立体感を出すことができます。もし夕方に撮影をする場合はぜひ一枚狙ってみましょう。
-
- 逆光で撮影
- 写真:福田健太郎
焦点距離:11mm / F値:14.0 / シャッター速度:1/30秒 - 被写体に対し、背後から当たる光を逆光といいます。逆光で葉を透過させると、透明感が出て色鮮やかになり、葉が輝くような写真を撮ることができます。また、暗い背景利用すると、明暗差のコントラストでドラマチックな表現ができるため、積極的に逆光を活用しましょう。
光の当たり方と効果について詳しくは以下のページをご覧ください。
光の当たり方と効果
逆光で撮影する際の注意点
逆光でレンズに太陽光が直接入ると、画像のコントラストや彩度が低下してしまうことがあります。その場合は、カメラと太陽光や葉っぱの角度を調整して、レンズに直接太陽光が入らないように工夫しましょう。また、レンズに向かって強い光が入るため、被写体が暗くなりがちです。被写体が暗かったり、思うように鮮やかさが出ないと感じるときは、露出補正を+(プラス)側に補正し、イメージどおりの明るさに調整しましょう。
曇りの日や雨の日は光が柔らかい
紅葉は晴れの日だけでなく、曇りや雨の日もそれぞれ違った表現で撮影ができるチャンスです。曇りの日は、晴天の時のような鮮やかさは出ませんが、柔らかい光が全体に回り込むため、不要な影が出ずにしっとり落ち着いた表情になります。
雨の中では光がさらに柔らかくなり、色もさらに落ち着いてきます。また、葉についたホコリが洗い落とされて地面や葉についた水滴がしっとりと光ります。
曇りや雨の日に空を構図に入れると、白い空が目立ち平凡な印象の写真になりがちです。そのような場合には、空を入れずに思い切って風景のみを切り取ると、メインである紅葉が際立ち、印象的な写真に仕上がります。
写真:福田健太郎
曇りの日に撮影
写真:福田健太郎
雨の日に撮影 焦点距離:115mm / F値:11.0 / シャッター速度:1秒
イメージどおりの色に調整しよう
紅葉をイメージどおりに撮るには、光の方向に加えて、カメラでの明るさや色の調整が欠かせません。カメラはオートで適正と思われる明るさや色を割り出してくれますが、それが撮りたいイメージや感じた印象と一致するとは限りません。もしイメージしたとおりにならない場合は、露出補正とホワイトバランスの調整をしてみましょう。
自分のイメージに合う一枚が本当の「適正」な色や明るさです。必要になる調整は光の方向や天候、被写体によってさまざまなので、実際の撮影の際は、カメラの背面液晶を見ながら調整し、何枚かシャッターを切りながら伝えたいイメージに近づけていきましょう。
露出補正を使う
左の作例では逆光で背景が明るいため、紅葉が暗く重たい印象で写ってしまいました。このような場合は、露出補正を+(プラス)側に補正することで、紅葉の色を鮮やかに引き出すことができます。背景は少し露出オーバー気味になる程度に調整してもよいでしょう。
写真:福田健太郎
露出補正:0
写真:福田健太郎
露出補正:+2.0
ホワイトバランスを使う
鮮やかさを強調するにはホワイトバランスも有効です。曇りや日陰で紅葉を撮影する際には、ホワイトバランスを[曇天]に設定をすると、全体の赤みが増し、紅葉の赤や黄色をより鮮やかに表現できます。さらに細かく色を調整したい場合は、ホワイトバランスの微調整も有効です。
ホワイトバランス[AWB]
ホワイトバランス[曇天]
風景撮影やスナップ撮影では、より色鮮やかに表現するためにクリエイティブルックやクリエイティブスタイルから彩度を高めに調整する場合も多いのですが、見ごろの紅葉は元々の彩度が高いため、色が飽和して立体感が失われる場合があるのであまりお勧めできません。
まずは彩度よりも露出補正とホワイトバランスの調整で試してみるのがポイントです。
もちろん色味も個人の好みなので正解はありません。下の写真のように、曇りの日にあえてホワイトバランスで青みを足し、「寒さ」や「静けさ」を表現するような場合もあります。
全景を撮る
全景を収める場合、絞りはF8〜11程度が目安です。
下の写真のように、同じ紅葉の風景でも、広角と望遠によって写り方がガラリと変わります。広角は迫力を生み、望遠は引き寄せとボケ描写に優れています。それぞれの特徴を活かして、紅葉のよい部分を引き出してみましょう。
写真:福田健太郎
広角側で撮影 焦点距離:18mm / F値:8.0
写真:福田健太郎
望遠側で撮影 焦点距離:90mm / F値:8.0
広角レンズで撮影する
広角(ズームレンズの場合、焦点距離の短い側)では、広い範囲の風景を収めることができます。絞りをF8〜11程度に絞ることで広い範囲にピントを合わせることができます。また、遠近感や高さをより強調した、ダイナミックな表現も得意とします。
広角レンズで上を見上げて撮影しました。左手より勢いよく伸びる樹木の高さが強調され、画面に力強さが出ています。
鮮やかな紅葉にぐっと近づいて撮影。広範囲に写る背景との対比でダイナミックな写真になりました。このように、前後の対比で主役を引き立てるのも広角ならではの表現方法です。また、絞りもF10まで絞ることで、背景もぼけ過ぎずにしっかり描写できています。
望遠レンズで撮影する
望遠レンズ(ズームレンズの場合、焦点距離の長い側)では、遠くの山々に広がる風景から、印象的な部分を引き寄せて切り取ったりすることができます。また、遠くにつらなる山々と手前の風景の遠近感をなくして1枚の画像に収める「圧縮効果」も得意です。
美しい風景に出会うと、目で見える範囲のすべてを写真に収めたくなります。しかし、いざ写真に撮るとそのときの感動が全然伝わらない、そんな経験はないでしょうか。写真には思いのほか不要なものが映り、散漫になってしまうからです。漫然と広い範囲にカメラを向けるのではなく、いちばん象徴的な部分を見つけだし、望遠側で引きよせて切りとってみましょう。
また、望遠での撮影は、風景の奥行きを圧縮した画づくりも得意です。手前の黄葉、奥の針葉樹、背景の山々はそれぞれ数キロずつ離れていますが、ぎゅっと圧縮されてとても印象的な一枚に仕上がっています。
クローズアップで撮る
クローズアップで撮るには、望遠レンズ(ズームレンズの場合、焦点距離の長い側)がおすすめです。
絞りをなるべく開いて撮影するとピントの合う範囲が狭くなり、背景が大きくぼけるので、主役の紅葉の葉を引き立たせることができます。
望遠レンズで思いきり紅葉に寄って撮影。前後が大きくきれいにぼけています。また、このような写真を撮る際には背景の色にも気を配ってみましょう。この写真では、背景に黄葉が入り、全体が鮮やかな印象に仕上がるような角度で撮影されています。
緑色の苔の上に赤い紅葉の葉が落ちているシーンも色のコントラストが美しく、残しておきたい一枚です。この作例では、単焦点レンズで絞りを開放にして撮影しています。絞りを開放にすることでピントの合う範囲が狭くなり、背景が大きくぼけるので、メインの葉を際立たせることができます。
いろんな視点とアイディアで表現する
紅葉撮影は木々や葉だけが映える被写体ではありません。渓流や湖など、周辺の景色を入れることで紅葉を引き立たせてみたり、落ち葉だけでも秋の風景を表現できます。広い視点でいろんな被写体・構図を試してみて、紅葉の撮影を自由に楽しみましょう。
秋も終わりに近づいた頃に、足元の水たまりに浮かぶ落ち葉を撮影。真っ赤に色付いた木々ばかりが紅葉ではありません。紅葉の最盛期を過ぎても、秋の風情はいたるところにあります。水滴をとどめた落ち葉だけでも秋が感じられます。
写真:福田健太郎
焦点距離:50mm / F値:2.8 / シャッター速度:1/8秒
写真:福田健太郎
焦点距離:70mm / F値:7.1 / シャッター速度:1/160秒
木々の他に、紅葉の名脇役、時には主役となるのが、湖、池や川です。色づいた木々が、湖面にどう映っているかにも注目してみましょう。
ズームレンズを使ってみよう
一本でさまざまな画角が楽しめるズームレンズがおすすめです。広角から望遠までカバーするレンズを選べば、レンズ交換無しで全体からクローズアップまで多彩な表現が可能になります。望遠側を使えば背景を整理しやすくなりシャッターチャンスが広がります。
ここで紹介するレンズはすべて光学式手ブレ補正機構を搭載しています。手ブレしやすい望遠撮影での手持ち撮影でもブレを軽減し、安定したフレーミングを可能にしています。
OSSってなに?(レンズの手ブレ補正機能)
ボディ、レンズともに、35mmフルサイズとAPS-Cフォーマットがあります。
35mmフルサイズのボディにAPS-Cのレンズを装着したり、APS-Cのボディに35mmフルサイズのレンズを装着することも可能です。詳しくは以下のページをご覧ください。
APS-Cフォーマットのボディまたはレンズと35mmフルサイズのボディまたはレンズを組み合わせて使えるか
-
使用頻度が高い広角24mmから中望遠105mmまでをカバーし、レンズ1本でスナップから人物、風景、ウェディングなど多彩な撮影シーンに対応する標準ズームレンズです。ズーム全域で画面周辺までシャープな描写を追求しながら、Gレンズならではの美しいぼけ味が楽しめます。
-
70mmから200mmまでのズーム域をカバーする望遠ズームレンズです。Gレンズならではの高い描写性能とAF性能、操作性を小型・軽量デザインで実現し、ズーム全域でF値4.0、最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能です。
-
広角27mmから望遠202.5mm相当(35mm判換算)までを幅広くカバーする、光学7.5倍の高倍率ズームです。小型・軽量で持ち運びやすく、風景、ポートレート、ネイチャーなど多彩なシーンで活躍します。
-
広角27mmから望遠300mm相当(35mm判換算)まで幅広い撮影領域をカバーする高倍率ズームレンズ。軽量・コンパクトボディで、旅行などで持ち歩くのに最適です。光学式手ブレ補正機能を内蔵し、手ブレしやすい望遠撮影時も、手ブレをしっかり抑えます。