スイッチャー

株式会社 フジ・メディア・テクノロジー 様

プロダクション

2017年2月掲載

最新鋭XVS-8000 / ICP-X7000と、7式のHDC-4300 / BPU-4000を採用した4K/HD大型中継車を導入、本格運用を開始。


9月に新規導入されたフル4K/HD大型中継車「FR4k」。導入後すぐにプロ野球での4K制作やバスケットボールの中継に稼働中。大学野球では、4K HDRの試験制作にもチャレンジされています。

株式会社 フジ・メディア・テクノロジー様は、新4K/HD大型中継車「FR4k」を2016年9月に新たに導入され、スポーツを中心とした4K/HD制作に稼働中です。また、新しい映像表現を可能にすると注目を集める4K HDRの試験運用も行っています。

同社 技術統括センター 技術統括部 部長 西村孝廣様、制作技術センター 制作技術部 映像技術 古谷真治様、同部 SW・カメラ 細野太郎様に、新中継車導入の目的、システム選定の経緯や決め手、運用状況と成果などを伺いました。

なお、記事は9月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

HD制作に加え、4K制作にも柔軟に対応できる設備が目標


スイッチャー卓。マルチフォーマットスイッチャーのフラッグシップモデルとして登場したXVS-8000(4K/40入力、HD/160入力)を採用。コントロールパネルにはICP-X7000を採用、有機ELパネルの表示器(写真・左下)も分かりやすさ、使いやすさで好評です。

今回、当社が新中継車を導入することになった背景には、HD対応のHR-1中継車が運用を開始して10年を超え、更新のタイミングでした。加えて、4Kをはじめとした新しい映像制作の要望が増えてきており、柔軟に対応できることが求められていたこともあります。そこで、従来のHD制作に効率的に対応しつつ、時代の要請となっている4K制作にも対応できる中継車を目指すことにしました。つまり、フル4K/HDサイマル運用が可能な中継車が基本コンセプトとなりました。

この要望に応えてくれたのがソニーでした。コアとなる4K対応したマルチフォーマットスイッチャーXVS-8000が新たにラインアップされ、これを採用することで4Kで最大5ME/40入力運用が可能になり、従来のHD制作に近いフル4Kシステムを構築することができると判断しました。現在のライブ制作ニーズに合わせて4K/HD制作にそれぞれ対応できる点も決め手の一つになっています。また、コントロールパネルにICP-X7000を採用することで有機ELパネルによる見やすい表示器、複数色で表示できるクロスポイントボタンなども効率的な4K/HD運用をサポートしてくれると評価しました。

カメラは、7式すべてマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300としました。ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000、カメラコントロールユニットHDCU-2000と組み合わせることで、4K制作も従来のHD制作と変わらないオペレーションが可能となります。また、すべてのアングルから4K 2倍速、HD最大8倍速のハイフレームレート(HFR)撮影が可能な点や、4K ハイダイナミックレンジ(HDR)収録に対応しているなど、制作するコンテンツの表現力を向上できることも魅力でした。

もちろん、これから長期間安定した運用が可能であることや制作を行うスタッフとオペレーターがストレスを感じることなく使用できること、人員を増やすことなく4K/HDサイマル運用できることも重要です。また、従来のオペレーションと同じベースバンドの3G-SDI対応としたことや、居住性向上のため拡幅式の大型車とすることで対応しました。4KではSDIケーブの量がHDと比較すると4倍になりますが、コンパクトに配線処理ができているため、居住性や操作性がよく従来の運用と同じようにできたと思います。

西村 孝廣様
西村 孝廣様

古谷 真治様
古谷 真治様

細野 太郎様
細野 太郎様

スポーツを中心に、4K 制作に加え4K HDR試験制作にも活用


マルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300、ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000。カメラコントロールユニットHDCU-2000、大型レンズアダプターHDLA-1500を各7式装備することで、幅広いスポーツ、ライブイベントの4K/HD制作に柔軟に対応しています。


VE卓。30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を配備することで4K/4K HDRの画像監視、確認も容易に行えるようになっています。HD収録用にはXDCAM Station XDS-PD2000が2式採用されています。

新中継車「FR4k」は、導入してまだ1ヶ月余りの段階ですが、プロ野球や大学野球、バスケットボールなどのスポーツ中継・収録に本格稼働しています。プロ野球では4K制作を行い、4Kならではの高精細な映像表現で熱戦の模様をリアルに再現することができました。また、大学野球では4K HDRの試験制作も行いました。広いダイナミックレンジを活用した映像は、関係者の方々にも大変好評でした。

スイッチャーやカメラのオペレーションでも特に支障はありませんでした。中継車のHR-1/HR-2で運用してきたMVS-8000シリーズや、HR-8小型中継車を含めて運用してきたHDC-900 / 1000 / 2000シリーズの操作性を継承できたこともメリットになっていると思っています。

HDC-4300については、B4マウントレンズ対応で既存のレンズなどの周辺機器を有効に使用できる点も魅力です。また、7式すべてで採用したことで一貫した高品質の映像とオペレーションも統一できたことも柔軟な運用につながっています。さらに大型レンズアダプターHDLA-1500も7式導入することで、効果的なカメラのセッティングや運用を可能にしています。もちろん、ショルダー運用するケースもありますが、バランスが非常によく、安定した撮影ができました。

また、バスケットボールの撮影の際、コートにLEDパネルが設置されており、CMOSセンサー搭載のHDC-4300だとフラッシュバンドが懸念材料となったのですが、実際には問題なく使用できました。輝度の加減もあってのことかもしれませんが、こうした結果にも満足しています。

運用を開始して間もない段階ではありますが、お客様からは大変高い評価をいただいており、フル4K/HDサイマル運用中継車「FR4k」導入の成果を実感しています。

今後加速する 4K など新しい映像制作の要望に対応へ

当社は、フジ・メディア・ホールディングス傘下の会社として、フジテレビを中心にテレビ番組の制作・技術協力、照明業務を行っています。あつかうジャンルも報道・情報番組・バラエティ・スポーツ・ドラマ、さらにCM・イベントまで多岐に渡っています。また、民放各局やBS/CS各局の番組制作サポートも行っています。

今後、4Kや4K HDR制作もさらに加速化してくると想定されます。もちろん、そのすべてに「FR4k」が活用できるわけではありませんが、4K制作の要望に応えていきたいと考えています。そのためにも「FR4k」の実運用を通して、当社スタッフの4K制作の技術力向上やノウハウの蓄積を目指していきたいと考えていますし、期待もしています。

ソニーには、今後も4K対応機器やシステムのラインアップの充実と、4K/HDサイマル運用に適したソリューション提案にも期待しています。