スイッチャー

北海道放送株式会社 様

放送局

2014年7月掲載

効率的で、高品質の中継・収録業務に加え、現場での事前準備の負担軽減を目指して最新鋭のHD中継車を導入、本格運用中。


新HD中継車。先進的なシステム構築だけでなく、同社のマスコット・キャラクターの「もんすけ」を配した斬新な外観デザインでも社内外で評判となっています。

北海道放送株式会社様は、2014年3月にHD中継車を更新され、プロ野球中継などに本格運用を開始されました。
新HD中継車の開発・設計を担当された主要メンバーである同社 技術局 制作技術部 主任 土田保樹様、同部 主任 大川拓哉様、同部 主任 小松尚史様に、更新コンセプトや主な仕様、ソニーのシステムインテグレーション採用の決め手、運用された 成果や評価などを伺いました。
なお、記事は2014年4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。



効率的な運用、より高品質の制作環境が更新コンセプトの柱

今回のHD中継車更新の一番の背景は、長年運用してきたHD中継車の老朽化です。SDシステムからのHD化を自社対応した旧中継車では、中継・収録ごとに機器を持ち込み、ケーブルを引き回してパッチング作業を行うなど、個別設定を行う必要がありました。このように現場での事前セッティングに時間と労力を要していて、そうした運用に限界が見えてきたことも更新の大きな要因でした。

そこで、今回の更新コンセプトの柱の一つとしたのが、この事前準備の手間と時間を解消して、現場でスタッフが余裕を持って本来の業務に集中できる環境を構築することでした。

もちろん、今後の長期間運用を想定して、当社の中継・収録業務に最適化した形でのワークフローと使い勝手を実現するとともに、最新鋭の機器、システムを導入することで安定性・信頼性を確保することも重要なターゲットとなりました。こうしたコンセプトを基に比較、検討を行った結果、ソニーのソリューション提案を採用することに決めました。


小松尚史様


大川拓哉様


土田保樹様

これまでの運用実績、信頼性・安定性の高さが決め手の一つ


カメラシステムにHDC-2000を2式、HDC-2500を3式採用。写真は、新HD中継車の初運用となったプロ野球中継での運用の様子。


スイッチャーにはMVS-7000X(3ME/60入力)を採用。スタジオサブでのMVS-8000A運用の経験と、操作性が継承されていることもあり、戸惑いや負担を感じることなくオペレーションできると好評です。

カメラシステムに関しては、当初からソニー製を導入したいと考えていました。当社スタジオなどでマルチフォーマットポータブルカメラHDC-1500を10台保有し、高画質・高感度といった性能面と信頼性、安定性の高さを評価していました。今回導入したマルチフォーマットスタジオカメラHDC-2000シリーズも、系列局をはじめとして導入実績が高いので、中継・収録の応援時などに効果的に運用できると考えました。

さらに、明るくきれいな画質や2倍速スローモーションといった新機能も評価し、HDC-2000/2500を5式と大型レンズアダプターHDLA-1500を2式導入しました。保有しているHDC-1500もバージョンアップで連携運用が可能なので、大規模な中継業務にも柔軟に対応できます。

スイッチャーに採用したMVS-7000Xについても同様の背景がありました。スタジオサブでMVS-8000Aを運用しており、その操作性を継承できるのでスムーズに運用することが可能で、60入力対応をはじめとするポテンシャルの高さも幅広い用途で活用できます。加えて、中継車での3G-SDIの活用といった先進的な取り組みと実績の高さ、充実したラインアップなどを総合的に評価できたことがソニーのシステムインテグレーションを採用する決め手になっています。映像系だけでなく、音声系のクオリティーの高さ、使い勝手の良さもソニーならではの特長であり、魅力であり、信頼してシステム構築を依頼することができました。

制作や技術の要望に細部に渡って的確に対応してくれた点も評価

システム、機器の性能・機能・操作性といった面だけでなく、当社制作や技術の要望に的確、かつ柔軟に対応してくれた点も高く評価しています。たとえば、制作からの要件にスローコントロール卓の拡充がありましたが、最大6台まで車内で運用できるだけでなく、サブ卓にビルトインタイプで収納できるので、現場でセッティングするだけですぐに運用できるようになりました。

また、誤操作防止のために要望していた最終段のラインセレクターについても汎用ではなく、専用のルーターパネルを設けてもらいました。これにより、非常に視認性が良く、誤操作も未然に防止することができます。

さらに、映像系と音声系の端子盤を独立して配置したことで、スタッフの動線に余裕を確保できただけでなく、配線ミス防止にもつながり、より安定した運用が可能になりました。こうした細部に渡る対応は、当社の想像を超える満足感を与えてくれたと評価しています。


最終段のラインセレクターに専用パネル(写真・左)を採用した点や、端子盤を映像系(写真・中央)と音声系(写真・右)に分けるなど、視認性を高めて分かりやすく、しかも誤操作防止にも貢献する設計となっています。

プロ野球中継で運用開始、業務に集中できる環境が好評


ビデオエンジニア(VE)卓。マスターモニターに17型有機ELマスターモニターBVM-F170Aを2式採用。車内の高さを従来より高い2mを確保したことで、快適な居住性、ストレスのないオペレーション環境も好評です。

新HD中継車は、導入間もない段階でプロ野球中継で運用を開始しました。新しいシステムで、トレーニング期間も非常に短かったので、多少のトラブルや混乱は覚悟していたのですが、スムーズに運用することができました。スタジオ/スタジオサブで使い慣れた操作性が継承されていたこと、そして従来のようにセッティングに要した労力、時間が解消されたことで、本来の業務に集中できるようになったことが大きかったのではないかと思います。2度目もプロ野球中継で運用しましたが、同様にトラブルや混乱もなく中継業務を終えることができました。

最多11人のスタッフが入ることができ、車内の高さも従来より25cmも高くなったことなど、より快適な居住性を確保したことも有効でした。これまで必要な台数によっては別に車を用意していたスローコントロール担当者が同じ車内で業務できるようになり、スタッフ間のコミュニケーションが緊密に行えるようになった点も貢献していると思います。
導入したシステム、機器の評判も上々です。HDC-2000シリーズは、高画質、高感度でシチュエーションに応じた撮影・収録ができる点がカメラマンに好評です。また、2倍速スローモーションについても、明るく、きれいな画で、感度に影響を与えません。スロー担当者は、ピッチャーの握りを見せるシーンなどに使用していましたが、よく分かり、きれいな映像を視聴者に提供できると評価していました。
3ME列のスイッチャーMVS-7000Xについても、各列に4つのキーヤーを搭載していることなど、ポテンシャルの高さが好評です。幅広い映像表現に活用できると期待されています。また、60入力でカメラシステムを最大16台まで拡張できる仕様となっているので、大規模な中継や天井カメラなどの配信映像にも柔軟に対応できます。

今後もプロ野球やゴルフ、冬のスキー・ジャンプ大会などのスポーツ中継を中心に、札幌雪祭りなどの各種イベントにも有効に活用していきたいと思っています。運用を通して習熟度をさらに向上させ、当社のコンテンツを魅力的で、視聴者により楽しんでもらえる高品質なものにする一助として役立てていければと思っています。

ソニーには、今後のアフターフォローとともに、中継・収録業務をさらに効率的に、柔軟に行えるソリューションを提案してくれることを期待しています。