2019年7月掲載
ファイルベースと4Kをキーワードに10年以上の将来を見据え制作スタジオを更新
山形放送株式会社様は、幅広い番組の制作に活用されているテレビスタジオの設備を、4K対応システムに更新され、2019年2月より運用を開始されました。
技術局 放送技術部
統括部長
佐藤 勇様
技術局 放送技術部
次長
野崎 修様
当社では、ニュースフロアにあるニューススタジオと、今回更新を実施したスタジオの2つのテレビ系スタジオを運用しています。今回更新を行った、通称「テレビスタジオ」の設備は、地デジ化の直前となる2004年の局舎の建て替えの際に導入したもので、約15年ぶりの更新となりました。
更新のきっかけは、VTRの生産やメンテナンス終了のアナウンスに伴う、ファイルベースへの移行です。直近で4K制作や4K放送の計画はありませんが、再び10年オーバーとなるであろう使用期間を考慮し、4K対応スタジオとして更新を図ることにしました。
このテレビスタジオは、平日の夕方約1時間の帯番組「ピヨ卵(ぴよたま)ワイド」の生放送や、収録による週末の県政広報番組「やまがたサンデー5」など、レギュラー番組の制作をはじめとして、スポーツ中継の受けサブや、選挙特番など、オールマイティに活用しています。
システム構成は、大型レンズアダプターHDLA-1500付きのHDC-4300を3式、スタジオ用ハンディを1式、さらに局舎玄関前から放送するためのハンディを1式、スイッチャーとして3M/E構成のXVS-7000、サブ出しや収録のためのXDS-PD1000/AやPDW-F1600、ビデオサーバーとしてPWS-4500、VEモニターとしてBVM-HX310、各卓のピクチャーモニターに多数のLMD-941W、といった形でシステムを構成しています。
平日の帯番組では、専任のVEがつかず、SWがVEを兼ねてスイッチングしながらアイリス調整も行います。そのためVE卓のリモートコントロールパネルRCP-1501に加え、スイッチャー脇に、もう1セットのリモートコントロールパネルRCP-1001を設置しています。
サブ内に設置されたPWS-4500のコントローラー2式
スタジオサブのスイッチャー卓、VE卓。VE卓の上にはBVM-HX310を設置
スイッチャーコントロールパネルの右にダイヤル操作をしやすい向きに設置されたカメラリモコン
スタジオフロアのHDC-4300大型レンズが3式とハンディタイプが1式
XDS-PD1000/Aは、ネットワーク経由のファイル転送による素材の送り込みと送出を想定して導入しました。現在は物理メディアを介して送出していますが、局内の編集室の更新が全て完了した段階で、ネットワーク転送にシフトする予定です。
スポーツ中継におけるスローやハイライト編集で使用していたマルチアクセスディスクレコーダーMAV-777を置き換える用途に加えて、4K収録や送出、マルチカメラでのパラ録りなど、幅広い用途を見込んでPWS-4500も導入しています。中継などでの持ち出しなども考慮して、可搬型ラックに収容して設置しています。
可搬型ラックに収められたPWS-4500
更新工事の準備は2018年の年末から始めました。同じフロアの会議室にスイッチャーのコントロールパネルなどを移動し、仮設サブを設営。お正月休みが明けてから、サブ内の工事を開始。わずか1カ月の工事を経て、スタジオ運用がない2月上旬の土日の2日間で切り替えを行いました。
検討段階では他社にもご提案をお願いしましたが、限られた工期の中でスムーズに移行できるというのが大前提でした。前回のシステムもソニーのシステムインテグレーションでしたが、この工期での移行を達成するには、ソニー以外の選択肢はありませんでした。
当社の制作技術スタッフは数名しかおりません。もちろん、関連会社から技術スタッフの応援が入りますが、基本はこのスタッフが、テレビやラジオなど、なんでもこなしています。そのため、わかりやすいシステムであることも重要でした。例えば、土日の切り替えを経て、金曜日までのMVS-8000Aが月曜日にはXVS-7000に変わっていても、ユーザーインターフェースも変わらず、戸惑いなく生放送をすることができました。
変わらない操作性の一方で、新機能も便利に使っています。子画面のハメ込みなどは、従来はDMEを用いて他のM/Eで行う仕組みでしたが、XVS-7000ではリサイザー機能が追加されており、キーヤーで挿入できます。おかげで、オペレーションが楽になり、スイッチングミスも減り、進化と使いやすさを実感しています。
更新前のシステムも15年間、大きなトラブルもなく安定して稼働し、ソニーのシステムに高い信頼感や安心感がありました。今回の更新後も無事に安定して稼働しています。日常の業務は、テレビやラジオの中継、機器のメンテナンス、さらにサブ運行など多岐にわたるためなかなか各機材を深いところまで使いこなせていません。ソニーには、今後、そういった面を一層サポートしてくれる、一元的なサポート窓口などを用意していただけるといいなと、期待を寄せています。