2016年8月掲載
MVS-7000X+ICP-X7000を2式装備しデュアルサイマル運用による安心・安定運行を実現。スタジオカメラにはHDC-2000シリーズ6台を導入。
スイッチャー卓。MVS-7000X(4ME、60入力/30出力) とICP-X7000を2式ずつ導入することで安心・安全運行を実現。コンパネの有機ELを使用したソース名表示器、複数色で表示できるクロスポイントボタン、カーブマウント構築による見やすさ、使いやすさも好評。
讀賣テレビ放送株式会社様は、主に平日帯の生放送番組で活用している第3スタジオ/スタジオサブをマルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xとライブ用コントロールパネルICP-X7000、マルチフォーマットカメラシステムHDC-2000シリーズなどを導入することで更新され、2015年9月本格運用を開始しました。
同社 技術局 制作技術担当 副部長 菊地 健様、同局 参事小池一暢様、同局 主務 窪内 誠様、同局 主務 野平浩二様に、今回の更新コンセプト、システム選定の経緯や決め手、運用状況と成果、今後の期待などを伺いました。
なお、記事は4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。
菊地 健様
小池一暢様
窪内 誠様
野平浩二様
当社第3スタジオ/スタジオサブでは、10年以上に渡ってスイッチャーにMVS-8000を、カメラシステムにHDC-900シリーズを使用してきましたが、サポートを含め今後10年先のメンテナンスを考えたとき更新のタイミングではないかと判断しました。そこで、技術部門に更新チームを設けて、カメラマン、スイッチャー、VEなどの意見、要望を集約する形でシステムの選考を開始しました。
最新のシステムソリューションにより更新された第3スタジオ/スタジオサブ。高画質化はもちろん、多彩なエフェクトモード、柔軟な操作性により生放送番組にもより効率的に対応できるようになっています。スイッチャーシステム2式によるデュアルサイマル運用も信頼性の向上に寄与しています。
VE卓。少数のビデオアエンジニアで効率的な監視、管理ができるように可動式モニターや機器の配列を実現。シーンに合ったアイリス調整が電動ワンボタンで可能な電動アイリスフェーダー(写真・右下)やFドロップゲイン補正機なども有効に活用されています。
更新コンセプトの柱としたのは、今後も長期間に渡って主力業務である長時間の生放送に柔軟に対応できること、高画質化はもちろんのこと、柔軟な運用を可能にする機能性の向上、そしてトラブルなくオンエアできる安定性と信頼性の確保でした。さまざまな観点から各社のソリューションを比較検討した結果、ソニーの提案を採用することに決定しました。第3スタジオサブだけでなく、第2スタジオサブ、大型中継車でもソニーのシステムを採用しており、運用実績、成果にも満足していたことも決め手の一つとなっています。
また、特注でVE卓に電動アイリスフェーダーやカメラシステムにFドロップゲイン補正機能を装備できた技術力の高さも評価しました。新しくリリースされたコントロールパネルICP-X7000も魅力でした。見た目の印象が非常に格好良く、当社の運用に即したカーブマウント配置と相まって直観的に使いやすさを実感できました。さらに、MVS-7000XとICP-X7000を2式採用し、デュアルサイマル運用を実現できたことも、安心・安全運行をサポートしてくれるソリューションでした。
スタジオカメラ。新たにマルチフォーマットカメラシステムHDC-2000を3式と、HDC-2500を3式導入。これまで運用してきたHDC-900シリーズの操作性を継承でき、その上で一層の高画質化、多機能化を実現した点はカメラマンにも大変好評です。
更新後の第3スタジオ/スタジオサブは、順調に、安定した状態で運用ができています。中心となっているのが、2時間の全国ネットの生放送番組「情報ライブ ミヤネ屋」です。報道系番組なので簡易中継や回線映像、あるいは視聴者が撮ったスマートフォンや携帯電話の映像などがたくさん入ってくるのですが、それらを有効に活用できる体制がとれています。また、中継映像を流しながらMCやコメンテーターの顔出しをワイプで行う作業も頻繁に行いますが、簡単にシンプルな操作で実現できている点も魅力です。
スイッチャーの操作性は期待通りに運用できています。その他にも、有機EL表示による見やすさだけでなく、クロスポイントボタンを複数色に点灯できるなど、ライブ用に適した操作をサポートしています。また、カーブマウントの採用で上段のME列やボタンも非常に見やすく、オペレーターにも好評です。
トラブルがないのでA卓からB卓に切り換えて運用するといった事態も発生していませんが、デュアルサイマル運用によって、B卓が常時スタンバイしているという安心感がスタッフ、オペレーターを支えてくれていると感じています。
また、VE卓で特注対応していただいた電動アイリスフェーダーも変化の激しいアイリスの映像をワンボタンで常に正しいアイリスに調整でき、寄りの映像で明るさが落ちてしまうシーンでもFドロップゲイン補正で安定した明るさを維持することができます。理想的には1カメ/1VEといったオペレーションですが、現実的には難しいため今回の特注対応によりシンプルなオペレーションが可能となり効率よく活用できています。また、毎週日曜日にオンエアしている「上沼・高田のクギズケ」など収録番組でも同様に安定した運用を実現しており、更新コンセプトに合ったシステムを構築できたのではないかと評価しています。
今回の新システムでは拡張性を考慮し、MVS-7000Xには4Kオプションも装備しました。もちろんスタジオでの4K制作は、直近の課題ではありませんが、当社ではENGによる4K/8Kコンテンツ制作にも積極的に取り組んでおり、スタジオでの4K収録といった要望があった場合にも対応できる体制は必要だと判断しました。
また、デュアルサイマル運用は万一の際のバックアップ用途だけでなく、より大規模な番組制作や複雑な演出への対応といったニーズにもA卓/B卓同時運用で有効に対応できるのではないかと期待しています。
さらに、2016年9月には朝や昼の帯番組の生放送を行っている第2スタジオ/スタジオサブの更新を予定しています。ここではスイッチャーにXVS-8000とコントロールパネルにICP-X7000を2式ずつ採用し、第3スタジオサブと同様のデュアルサイマル運用を実現するとともに、カメラシステムに4K/HD対応のマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300を導入する予定です。ここでは生放送の安心・安定運行だけでなく、4Kへの移行に向けたテスト収録、検証作業を行っていくことになるかもしれません。
そして、2019年には当社の新社屋が完成します。更新した第2、第3スタジオ/スタジオサブもそのまま移設して運用していく予定です。新社屋のシステム構築、インフラの概要はまだ決まっていませんが、4K/8Kへの取り組みは重要なテーマの一つとなることは間違いないと思います。そのためにも、現状でのテスト運用などにも積極的に取り組み、4K制作の検証作業を通してノウハウを蓄積していきたいと考えています。
ソニーには、今後も4Kを含めたソリューションの拡充、ラインアップの強化、そして当社も含めた現場の声や要望に応えていって欲しいと思い、期待もしています。