法人のお客様システムカメラ 事例紹介 株式会社フジエンタープライズ 様

株式会社フジエンタープライズ 様

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ライブ配信のマルチカメラ制作に不可欠な「三種の神器」
インカム・タリー・リターンを求めて、システムカメラへ

株式会社フジエンタープライズ 様は、2024年3月から11月にかけ、マルチフォーマットポータブルカメラ『HXC-FZ90』やPTZタイプのCinema Line カメラ『FR7』、カメラコントロールネットワークアダプター『CNA-2』を中心とした、ライブ配信向けマルチカメラ制作システムを導入され、運用を開始されました。同社 代表取締役 藤川 昭 様に、導入に際しての選定ポイントや決め手、運用の状況や成果について伺いました。

藤川 昭 様
株式会社フジエンタープライズ
代表取締役
藤川 昭 様

ライブ配信のニーズは
「質」と「信頼性」へ

大学・企業から音楽・バラエティー・スポーツまで、幅広く

当社は2019年12月に創業し、中核事業の1つとしてライブ配信技術を手掛けています。私は以前、都内のテレビ局で放送技術に携わっていたこともあり、「配信でもテレビと変わらないクオリティーを追求」をコンセプトに、サービスを提供しています。扱っている分野としては、大学などの遠隔授業やeラーニング、入学式や卒業式、各種企業や団体のセミナーや会議、シンポジウム、有名YouTubeチャンネルの大型生配信企画、当社が本拠を置いている神奈川エリアのホールやイベント会場で行われるクラシックコンサートや音楽イベントなどです。また、最近ではスポーツコーダー(スコアのテロップ表示)なども伴った、スポーツのライブ配信も手掛けています。

ライブ配信の定着と共に、「質」の需要へ

現在、ライブ配信が社会に定着しつつある中で、需要も変化してきています。特に「クオリティー」に対する要求が高まってきました。例えば企業系のセミナーであれば、以前はプレゼンターとスタッフだけの無観客配信が行われていた時期もありましたが、現在では、会場の規模も大きくなり、複数の入り中継を伴うものや来場者がいる状況でのハイブリッド配信が多くなっています。無観客での配信と異なり、カメラの配置場所に制限があるため、遠方から狙える高倍率の望遠レンズも必要になりますし、来場者を狙うカメラを追加するなど、必然的にカメラの台数や映像演出のグレードを上げる必要がありました。また、音楽イベントも、まずは音質の追求があり、さらに「『良い音』には『良い映像』を」といった形で映像のクオリティーも求められています。加えて、幅広いレンジの事業者が参入する中で、「確実性」「信頼性」といった面も重視されるようになりました。

当社では、こういったお客様のご要望に応えるべく、これまではXDCAMメモリーカムコーダー『PXW-Z280』4台、Cinema Line カメラ『FX6』1台、XDCAMメモリーカムコーダー『PXW-Z450』2台などを順次導入してきました。

「インカム」「タリー」
「リターン」は
“三種の神器”

マルチカメラ制作には不可欠な “三種の神器”

「マルチカメラ」のライブ配信についてはこれまで、先に触れた機材にサードパーティの「カメラアダプター」(光伝送装置)を装着して運用をしてきました。カムコーダーと光カメラアダプターによる配信は、取材やロケなどの用途と機材が共用化できることはメリットですが、それ以外の面ではデメリットが多いと感じていました。具体的には、光カメラアダプターが大きく重く、カメラと一緒に担いでの運用が難しかったことや、カムコーダーとカメラアダプター間の配線が複雑になり、トラブル時の切り分けに時間がかかってしまうこと。加えて、NDフィルターやCCフィルターの変更がリモートで制御できないなど、カメラのリモートコントロール項目が限られてしまうこと。さらに、マルチカメラ運用で必須となるインカムやタリー、リターン映像送りを別系統で用意しなくてはならないこと、などです。特に、「インカム」「タリー」「リターン」の利便性はマルチカメラのライブ制作において“三種の神器”と言われるほど重要な要素です。

“三種の神器” が最初から備わっている「システムカメラ」の導入を目指し

私がかつて在籍していたテレビ局では、マルチカメラでの制作に、これらの課題を抱えずに済む「システムカメラ」が普通に使われています。カメラとカメラコントロールユニット(CCU)を光ファイバーケーブル1本で接続するだけで、カメラに電源が供給され、インカム・タリー・リターンの系統を簡単に構築できるのは、やはりマルチカメラの運用においては何よりも利便性が高いということを改めて実感しました。当社でもシステムカメラの導入を目指し、検討を重ねていました。しかし、ソニーの「HDCシリーズ」は予算の面で導入ハードルが高く、他社製のカメラだと、既存の機材との連携や、発色の統一などが難しいなどの点で、悩んでいました。そこに登場したのが、4Kに対応できて将来性もあり、HDCシリーズの各種機能を継承しながら、予算的にも導入がしやすいエントリークラスのマルチフォーマットポータブルカメラ『HXC-FZ90』でした。

マルチフォーマットポータブルカメラ
HXC-FZ90S

※7.4型有機ELビューファインダー、レンズ付属

製品情報

カメラコントロールユニット
HXCU-FZ90

製品情報

『HXC-FZ90』3式と『FR7』2式を導入

展示会などの訪問により、実機の確認を経て、これまでに、マルチフォーマットポータブルカメラ『HXC-FZ90』、カメラコントロールユニット『HXCU-FZ90』、リモートコントロールパネル『RCP-3501』のセットを3式導入しました。さらに、PTZタイプのCinema Line カメラ『FR7』を2式、リモートコントローラー『RM-IP500』1式を追加し、機器の統合監視や遠隔制御を目的としたカメラコントロールネットワークアダプター『CNA-2』とWeb RCPソフトウェア『HZC-RCPCN2』1式も導入しました。約1年をかけて段階的にシステムの増強を行ってきました。

リモートコントロールパネル
RCP-3501

製品情報

カメラコントロールネットワークアダプター
CNA-2

製品情報

「画づくり」や
「出演者」にも
好インパクトの
システムカメラ

「インカム」の使い勝手が飛躍的に向上、画作りのクオリティーもアップ

インカムはこれまで、海外メーカー製のワイヤレスのタイプを使用してきましたが、ワイヤレスということで音質も芳しくなく、遅延も大きく、聞き取りづらい場面も多く、カメラワークにも影響していました。また、伝送には1.9GHzや2.4GHz帯など、イベント会場などでは混雑する周波数帯が使われていたこともあり、常に「使えなくなる恐怖」を抱えていました。『HXC-FZ90』の導入で、インカムはカメラケーブル経由の有線となり、安心確実な通話が可能になり、音質も飛躍的に良くなりました。これまでは、休憩時間などの度に欠かさず行っていた充電や、電池の残量の心配も不要になりました。また、インカムに本線系のプログラム音声をミックスして戻せるようになったことで、例えばスポーツでは、カメラマンが実況を聞きながらカメラワークすることも可能になり、画作りのクオリティーも上がりました。

出演者のパフォーマンスにも影響する「タリー」

タリーもこれまではサードパーティ製のワイヤレスタイプのものを使用していましたが、ビューファインダーの中でタリーが確認できないことや、遅延が課題でした。例えばアイドルのライブですと、ステージのアイドルはカメラのタリーを意識しながら歌っています。1秒も遅れると、出演者の目線が外れてしまいます。タリーの改善はカメラマンのカメラワークだけでなく、出演者のパフォーマンスにも好影響を与えてくれています。

「リターン」の視認性や伝送の確実性も向上

リターンについては、これまでは光カメラアダプターによる伝送や、サードパーティのワイヤレストランスミッターを使用していました。ワイヤレスでは途切れが起きたり、別モニターを見るためにビューファインダーから目線を外したりしなくてはならなかったのが悩みの種でした。『HXC-FZ90』の場合は、ビューファインダー上でカメラ本線映像と複数のリターン映像を、遅延なく切り替えながら見ることができ、これも一挙に解消しました。

「全てをカメラケーブル1本で」時間が限られる設営・撤収も迅速に

これらの装備が全て、システムカメラ1つに軽量コンパクトにまとまり、信頼性や安定性も向上しました。電源を含め、全てをカメラケーブル1本で送れるようになり、設営や撤収も迅速になりました。
当社の運用では、『HXC-FZ90』導入後も、カムコーダーを混在して運用することも多くあります。カムコーダーを使用する際、カメラ設置場所とスイッチャーなどが配置される中継システムの場所まで距離が離れている場合、同軸ケーブルなどを引き回す必要がありましたが、このような場合には『HXC-FZ90』に搭載されている「HDトランク機能」を使用します。カムコーダーの映像信号を、『HXC-FZ90』に入力することで、カメラ光ケーブル上に、多重化して伝送することができ、CCUの『HXCU-FZ90』から取り出すことができます。これにより、設営時間の短縮につながっています。

「高い映像品質」と
「運用の省力化・
効率化」の
両立を目指して

『HXC-FZ90』と相性の良さを感じる『FR7』

『FR7』はカメラマンが入れない場所にも設置でき、システムカメラ同様にリモートコントロールパネル『RCP-3501』で制御できること、将来のアップデートにより、『CNA-2』上の「Web RCPソフトウェア」を介して『HXC-FZ90』と統合した集中管理・運用もできるようになること、そして「オートフレーミング機能」の搭載もアナウンスされていたことから、省力化を期待して導入しました。
また、『FR7』には、シーンファイルのひとつとして、ソニーのHXCシリーズと色合わせがしやすい「709tone」というルックが搭載されています。『HXC-FZ90』との混在運用時に色合わせを行いやすくなるので、この点は魅力的なポイントでした。設営面でも、先に述べた通り、『HXC-FZ90』の「HDトランク機能」を使用すれば、映像信号をシステムカメラと一緒に伝送できますし、さらに「ネットワークトランク機能」を併用すれば、『RM-IP500』でのPTZリモート制御信号もカメラ光ケーブルで伝送することができますので、大変利便性が高く、相性が良いですね。

丸一日の収録や配信も『FR7』なら、別室でオペレーション可能

とあるシンポジウムでは、『FR7』2台と、引きの固定カメラ1台による丸一日の収録でした。会場の中に立って、丸一日カメラワークをするのは、スタッフの疲労も量り知れません。別室で座りながら、カメラオペレーションができる『FR7』は、労働環境面でも大きな魅力です。スイッチャー担当1人とカメラリモート担当1人のたった2人で丸一日の収録が行えました。当社スタジオでのeラーニング収録などではワンマン収録も行っています。

Cinema Line カメラ
FR7

製品情報

リモートコントローラー
RM-IP500

製品情報

軽量・コンパクトでカメラマンにも好評

『HXC-FZ90』を導入して初運用となったスポーツ配信の現場で電源を入れて映像を見た瞬間、「明るさ」「解像度の高さと映像のキレの良さ」「S/Nの良さ」を感じました。軽量コンパクトなことも、カメラマンには好評です。高性能・高機能な『HXC-FZ90』と、新たな映像表現や省力化をもたらしてくれた『FR7』、それらを統合して管理できる『CNA-2』の導入には大変満足しています。

今後は “リモートプロダクション” も視野に

当社では、SRTプロトコルよるクラウドサーバー経由でのライブ制作の運用経験もあり、今回のシステムは将来的な「リモートプロダクション」も見据えて導入したものです。現場に設置したカメラを、社内のリモートサブから『CNA-2』を介してコントロールするようなリモートプロダクションにも本格的に取り組み、さらなる生産性向上を目指していきたいと思っています。ソニーには、こういった用途に適したクラウドスイッチャー『M2 Live』やポータブルデータトランスミッター『PDT-FP1』といったソリューションも用意されていますので、そういった機材も検討しながら、ライブ配信事業を拡大していきたいと考えています。

※本ページ内の記事・画像は2025年2月に行った取材を元に作成しています