株式会社 四国東通 様は、2010年3月に3台、2011年3月に6台のデジタルトライアックスカメラHSC-300を導入され、公営競技場における審議・配信用映像の撮影システムと、中型HD中継車のカメラシステムとして、幅広い番組制作に運用されています。
システム部 技術課 課長 立石悦夫様、制作部 技術課 課長 桑田忠己様に、HSC-300導入の目的と採用の決め手、運用状況と成果、機能や使い勝手についての評価などを伺いました。
システム部 技術課 課長
立石悦夫 様
制作部 技術課 課長
桑田忠己 様
HSC-300導入の一つの目的が、当社がシステムの設計・施行、運営・保守を担当している公営競技場のカメラシステムの更新でした。レースの審議・配信用映像を撮影するもので、従来から競技場内に埋設されたトライアックスケーブルを使って、SDカメラで撮影を行っていました。公式映像は現在も基本的にSDなのですが、カメラの更新はHD以外に考えられませんでした。場内に張り巡らされたトライアックスケーブルを光ファイバーケーブルに張り替える方法もありますが、ケーブル代だけでなく工事費を含めた費用はかなりの金額になってしまい、現実的とは言えませんでした。
そうしたときに、ソニーからデジタルトライアックスカメラシステムHSC-300/HXC-100が発表されました。既存のトライアックスケーブルや雲台などのインフラとオペレーションを継承しながらHD化が行えるというコンセプトは、まさに私たちが求めていた条件に合致するものでした。早速、検証テストを行い、機種についてはNDフィルターコントロールが可能な点などからHSC-300を選定して、システムの設計を開始しました。雲台に載せてハウジングを付けた状態で、安定して稼働ができるように細かな点を詰めていきました。
並行して、制作側でも特設スタジオでの撮影など、実運用の中で検証作業を続けていました。その結果、トライアックスケーブルをそのまま活用できるといった利点だけでなく、機能や使い勝手、さらにコストパフォーマンスにも優れたHDカメラであると判断し、2011年3月にリニューアルした中型HD中継車のカメラシステムにもHSC-300を採用しました。これにより、公営競技場のカメラシステムとして3台、中型HD中継車のカメラシステムとして6台を導入し、それぞれの用途でフル稼働中です。
公営競技場でのレース映像撮影
HSC-300採用の最大の決め手は、既存のトライアックスインフラがそのまま活用できることと、優れたコストパフォーマンスです。公営競技場では、設備はそのままでHD対応可能なシステムを構築することができましたし、中継車についても車体や音声系、インカム系はそのままで、カメラとCCUを入れ替えるだけでリニューアルすることができました。導入やリニューアルに伴うトータルコストの観点でも、非常に満足できる成果をあげられたと思っています。
そして、もう一つは柔軟なソニーのサービス体制です。特に公営競技場のカメラシステムは、審議などに使われる公式映像となりますので、映像が途切れてしまうといったトラブルは許されません。また、雲台に載せて360度の範囲でレース内容を追従して記録しなければならないといった特殊な要件があり、システム化が難しくなります。システムの新規導入においては、トラブルが出ることはある程度避けられないことではありますが、ソニーのサービス担当の方には、当社の一つ一つの要望に真摯に取り込んでいただきました。こうした柔軟な対応も、HSC-300採用の大きな決め手と言えるかもしれません。
実際、HSC-300の本格稼働を開始してから、非常に安定した状態で運用することができています。たとえば公営競技場では、月に8日間ほど開催される全レースを撮影・記録し、審議用映像として使用するほか、ケーブルテレビ局やCS放送、あるいはインターネットへの配信映像として使われています。また、中型HD中継車は、主に番組の生放送や収録のほか、公営競技の開催中には、場内の特設スタジオからの映像も送るなど、魅力的なレース番組制作に活用されています。
HSC-300が配備された中型HD中継車
HSC-300の性能・機能については、事前テストの段階から部内では十分に高い評価をしていましたが、実際に運用してみた結果でも、高い評価に変わりはありません。画質については、当社の大型HD中継車に搭載しているHDC-1000やHDC-950と比較しても遜色のない高画質だと思います。公営競技場の公式映像はSDなので、最終的にはダウンコンバートしていますが、今後カメラやVTRの更新に合わせて徐々にHD化が進んでいくと考えられますから、近いうちに高画質のHD映像をファンの皆さまに提供できるようになるのではないかと期待しています。
四国地方の中で当社が映像システムを担当している公営競技場は5カ所あり、うち2カ所にHSC-300を設置し、1台を予備機として運用中です。残る3カ所のカメラについても更新の時期を迎えるのは時間の問題です。この更新に際しても、四国地方に限ったことではありませんが、地方の競技場の多くがトライアックスインフラであることを考えますと、HSC-300は有力な候補となるのではないでしょうか。
また、複数のガンマカーブや豊富な色補正調整機能、フォーカスアシストといったユニークな機能、メモリースティックを使った運用など、さまざまな機能が充実している点も、制作にとっては心強い材料になります。中型HD中継車の本格運用を開始して、まだ4ヶ月あまりの段階ですが、今後の制作業務の中で活用していけるのではないかと期待しています。
1973年、高松市に東通ネットワークの一員として設立。設立当初から、各種映像システムの設計・施工・運営・保守などの作業を開始。その後プロダクション業務、音響放送設備等の設計・施工業務を開始。 現在、大型HD中継車・中型HD中継車・小型HD中継車等により、各種中継業務、ENG業務および生放送や収録などの番組制作業務を強化し、本社にノンリニア/リニア編集室を設け、各放送局、広告代理店の番組制作、CM制作、ビデオパッケージ等の企画、制作を行っています。