東京工学院専門学校様は、制作実習に活用するスタジオ設備をHD化され、スタジオカメラにデジタルトライアックスカメラシステム HSC-300を1式、HXC-100を2式採用し、2011年11月より運用を開始されました。
放送芸術科で講師を勤め、今回のシステム構築にも参画された大田和志 様に、HSC-300/HXC-100導入の目的・用途、採用の決め手、授業における運用状況と成果、そして性能・機能・使い勝手についての評価などを伺いました。
放送芸術科 大田和志 様
放送芸術科は、映画・テレビ・CMなどの映像制作の世界で活躍するプロデューサー・ディレクター・カメラマン・エディター・照明などの人材を養成することを目的とした学科です。2年間という限られた期間で優秀な人材を育成するためには、可能な限り具体的に映像制作のワークフローを体験し、カメラなどの機器に触れる機会を多くすることが重要になります。そこで当学科では、スタジオ/スタジオサブ、編集室などの設備を構内に設け、カリキュラムの約7割を番組制作や中継、CMやPVといったコンテンツ制作などの実習に当て、基本的な理論や知識だけでなく、具体的なノウハウやテクニックが身につくようにしています。2011年度にこれらの実習設備をHD化したのも、学生達が、より映像制作の実勢に近い環境で学習できることを目的としています。
学校教育用の映像制作機器やシステム選定を行う場合、最も重要な採用規準となるのはコストパフォーマンスです。つまり、限られた予算の中で、性能・機能・操作性において、できる限り先進的で、優れたパフォーマンスを実現したものが求められることになります。5年程度使用しても時代遅れにならず、学生達が培った技術やノウハウを、就職した制作現場でそのまま活用できることが望まれるからです。今回の制作実習設備のHD化に際して、スタジオカメラシステムとしてHSC-300/HXC-100を採用した最大の決め手も、優れたコストパフォーマンスを評価した結果でした。
何よりも、従来スタジオカメラとして使用していたデジタルビデオカメラ DXC-D50シリーズで使っていたトライアックスインフラをそのまま活用することができ、HD/SDの併行運用も可能な点です。操作性の面やハンドリングが大きく変わらない点もメリットでした。性能・機能面でのパフォーマンスについても、InterBEE会場で実際に見て、さらに事前のデモンストレーションで検証した結果、高感度・低ノイズの高い画質クオリティ、映像制作をサポートする充実した機能群、使い勝手の良さなど十分に満足できるレベルでした。また、ソニーに対する信頼感や映像制作業界における普及度の高さなどから、システム構築に携わった講師やスタッフ間では当初からソニー製カメラを採用しようという一致した認識もあって、非常にスムーズに採用が決定しました。
スタジオでの実習風景
今回スタジオカメラとして導入したHSC-300/HXC-100は、2011年11月からさまざまな制作実習で運用を開始しました。メインとなるのは週に1、2回の番組制作実習です。スタジオ/スタジオサブ、編集室をフルに活用した実習で、ライブ番組や収録番組の制作を行います。ワイドショー的なものから、通販的なものなど多彩な番組をこのカメラを使って撮影しています。中継を必ず入れた番組構成とするといった課題もあり、より実践的なカリキュラムとなっています。
ほかに、カメラ操作や照明といった個別の授業でも使用しています。3台それぞれに異なるレンズを装着して、レンズの違いによる撮影位置やズーム操作、アイリス、フォーカスなど画作りの基本をいろいろな観点から実地に体験し、ノウハウを習得できるように配慮しています。収録は、スタジオサブに設置した2台のXDCAM HDレコーダー PDW-F75で行い、必要な素材をノンリニア編集機で完パケするといった実習も行っています。こうした制作実習により、番組のHD制作のワークフローを一通り体験し、2年目からは自分の志望する職種を決め、グループでの卒業制作と就職活動を併行して行えるようにしています。
カメラに触れる機会を多くし、具体的なテクニックを身につけてもらうという基本方針から、HSC-300/HXC-100についても、学生が自由に設定、調整できるようにしています。番組の主旨に合わせて色調整したり、フォーカスアシスト機能を使ってフォーカシングしたりと、このカメラが持つ機能をいろいろ使っているようです。もちろん、設定は必ず元に戻すことをルールとしていますが、いろいろ試行錯誤してみることで、HD制作のノウハウや可能性の高さを体験することができると考えています。実際、講師やスタッフはもちろんのこと、授業で使用する学生達の評判も上々で、HDならではのきれいな画質、多彩な映像表現のサポート機能などから、学習意欲も一層向上しています。
スタジオレンズを装着したHSC-300
HSC-300/HXC-100はまだ導入間もないこともあり、スタジオ限定で運用しています。2012年3月にはスタジオサブの改修工事も完了しますので、2012年度の新学期からは、より充実したスタジオ制作番組の実習に活用できるようになります。同時に、スタジオから屋外に持ち出して、HD中継やCM、PVといったコンテンツ制作など、幅広い撮影に活用していきたいと考えています。例えば、当学科の実習教育の一つに構内の中庭や体育館で行われる学内行事やコンサートなどのイベント中継があります。ベースを組んだり、あるいはスタジオサブまでケーブルを引いて中継を行い、中庭や体育館の大型映像表示システムに上映するもので、ライブ中継をリアルに体験できる貴重な実習となっています。HSC-300/HXC-100を使うことで、これらの中継をHD化することが可能です。
HSC-300/HXC-100の魅力の一つに、高感度である点が挙げられます。照明環境の整ったスタジオ運用ではこのメリットを実感することは少ないのですが、屋外でのロケーション撮影など幅広いコンテンツ制作に威力を発揮するのではないかと思います。また、ローキーサチュレーション、ニーサチュレーション、マルチマトリクス、さらに複数のガンマカーブ内蔵といった機能も目的に合った映像表現を可能にしてくれます。実は、HSC-300/HXC-100の導入と併せて、ロケ用・コンテンツ撮影用としてデジタルシネマカムコーダー PMW-F3を1台と、XDCAM EXカムコーダー PDW-EX1Rを2台導入したのですが、これらと併行運用することでより多彩なコンテンツ制作が可能になるのではないかと期待しています。
当校のHD化は、更新のタイミングもあって時期的には決して早かったわけではありませんが、デジタルトライアックスカメラシステム HSC-300/HXC-100がラインアップされたことで、結果的にスムーズかつ思い通りにHD化することができたのではないかと満足しています。今後の制作実習にフル活用することで、これまで以上の成果をあげていきたいと考えています。ソニーには、今後も学校教育でも有効に活用できるコストパフォーマンスに優れた機器、システムの開発を期待しています。また、3Dや4K制作といった新しい映像制作の潮流についての情報発信にも期待しています。
1959年創立の東京工学院専門学校は、現在6系統/38の学科・コースが設けられており、多くの人材を産業界に送り出している専門学校。芸術・エンターテインメント系の学科として誕生した放送芸術科は、テレビ・映画・CM・PV業界に向けて映像制作のプロフェッショナルを養成する目的で設立され、すでに多くの優秀な人材を送り出しています。実習を主体とした実践的なカリキュラムが特長の一つで、構内には本格的なスタジオ設備や編集ルームが設けられ、企画・演出・撮影・編集・MAなど映像制作のワークフローを希望する職種に沿う形で、基本的な理論から具体的なノウハウ、テクニックを習得できるようになっています。