一番の違いは空間再現力の違いです。演奏が行われた現場(スタジオやホール等)の大きさ、残響の状態がハイレゾだとわかりやすく、再生音の立体感や臨場感に違いが出ます。良好に録音された音源であれば、広大なサウンドステージを感じることができるでしょう。高域の情報量の増加により左右だけでなく上下や奥行方向にも音場が表現され、まるで演奏会場に連れて行かれたかのような感覚になることもあります。
また、分解能の向上により、鋭い立ち上がりが再現でき、低音のアタック音まで気持ちよく鳴ります。そして、高域低域に関わらず全帯域の解像度が上がるため、より生音に近い再生音となり、楽器の響きや音色の微細な変化、ボーカルのニュアンスなどの描写がありのままに再現され、心に迫ってくる感じが大きな魅力です。
オーディオマニアのお客さまだけでなく「一般の方にもハイレゾの良さを楽しんでいただく」ことが一番の狙いになります。ただ、これは凄く高い目標で、設計的には苦労と試行錯誤の連続でした。
質の良いスピーカーとアンプを使えばハイレゾの良さは出ます。しかし、スイートスポットが狭いため、少し頭を動かしただけでハイレゾの良さが味わえなくなってしまいます。一般のお客さまはリビング等でソファー等に座って聴かれる場合が多いと思いますので、正面でのみお聴きくださいとはとても言えません。
さらに問題なのはセッティングのシビアさです。スピーカーはユニットだけでなくキャビネットからも音が出ます。また、スピーカーの振動が設置したテーブルやラックなどへも伝わり、そこからも音が出てしまいます。そういった不要な音がスピーカー正面から出た音を濁してしまうとハイレゾの繊細な表現は埋もれてしまいます。
オーディオマニアの方であればルームチューンなどで部屋を改造して壁などからの音の反射や、床やテーブルの振動を調整したりするのですが、それにはオーディオの知識・経験が必要ですし、そもそも部屋の見た目を気にするリビングなどでは奥さまの許可が出ない場合も多いと思います。
一般のご家庭の場合は本来の半分も実力が出せていない場合がほとんどだと思います。それだけ反射や振動といったノイズの影響は大きいのです。またチューンすれば必ず良くなるとは限らないのも難しいところですので、一般のお客さまに部屋の調整を要求するのは酷かと思います。
それと機器の相性の問題もあって、特にアンプとスピーカーが共に素直で癖がなく鮮度の高い音であり、組み合わせた時のバランスが整っていることが重要です。特に個性を出そうと過度な色付けをした製品は癖が強くハイレゾ本来の良さが出なくなってしまう事が多いのです。
つまり一般の方にも自宅で気軽にハイレゾの良さを楽しんでいただくためには、純粋に音質を向上させるだけでなく、①スイートスポットの狭さの問題②セッティングがシビアな問題③機器の相性の問題のすべてを解決する必要がありました。
SS-HA1/SS-HA3は、ハイレゾの良さを引きだすために、再生帯域の拡大や指向性の改善をはじめ、スイートスポットの拡大、セッティングの難しさの解決など、考えられる限りのことに挑戦しました。
SS-HW1は、SS-HA1/SS-HA3のノウハウを取り入れながらも、ウッドキャビネットでできることを追求しました。ハイレゾ音源を楽しむために、これまでにないスピーカーが誕生したと思っています。