富山テレビ放送株式会社様は、サッカーやバスケットボールなどのスポーツ中継におけるスローやハイライト需要の増加に対応するため、2018年3月にマルチポートAVストレージユニット PWS-4500を導入され、運用を開始されました。
当社では地上波でスポーツ中継番組を制作する一方で、ネット配信事業者様向けに、サッカーなどスポーツ中継の制作を受託しています。ネット配信事業者は、各社がコンテンツ制作のレギュレーションをお持ちです。スーパーの入れ方から演出に至るまで一定のルールがあります。この中で、スローやハイライト出しの需要があり、いままでは、業界で比較的広く使われている海外メーカー製のビデオサーバーを都度レンタルして運用していました。しかし、制作した番組数が昨年だけでも約50本に上ったこともあり、レンタルによる運用の手間やコスト、自社番組での活用などを考え、ビデオサーバーを自社で保有することにしました。
導入に当たっては、レギュレーションから必要となる「マルチ収録」と「マルチプレイ」に対応できることが必須でした。これまで1年ほどレンタルで使用してきた海外メーカー製を検討する一方、バージョンアップを重ねて、とても良くなっていると耳にしていたソニーのPWS-4500も合わせて検討しました。
PWS-4500は、デモ機を借りてテストをしてみると、いままで使ってきた製品に対して遜色ない機能が備わっており、操作性もオペレーターが違和感なく移行できそうでした。スポーツのシーズンが始まる前に導入したかったこともあって、納期の早さとコストパフォーマンスの高さが決め手となり、導入を決定しました。これまで使ってきた製品の方でも魅力的なディスカウントオファーをもらいましたが、それでもコストパフォーマンスの優位性ではソニーに敵いませんでした。
3月に納入し、1カ月ほどで、サッカーJ3とバスケットボールBリーグ5試合で運用しました。基本的な運用は、4カメのパラレルに加えて本線とクリーンの6系統を、6チャンネル入力フル活用して収録、スローやハイライト出し用に使用しています。コーデックはXAVCで運用しています。
システム構成としては、HD時6in/2out仕様のPWS-4500に、USBコントロールデバイスPWSK-4403を2式、収録コントロールソフトウェアPWA-RCT1、加えて、スポーツ以外の「パラ録り」などの用途を想定して、メディアゲートウェイステーション PWS-110MG1を導入しました。
USBコントロールデバイス PWSK-4403、スローリプレイ制御に必要な各種操作ボタンやジョグダイヤル、フェーダーレバーを装備。
PWSK-4403と合わせてライブスローのオペレーションを可能にするプロダクションコントロールステーションPWS-110PR1(上)、収録素材の転送・取り込みを行うメディアゲートウェイステーションPWS-110MG1(中)をラック内に搭載。
中継車の操作卓下に設置されたPWS-4500。可搬型のケースに収まっているため、持ち出しての運用も可能。
現在は中継車に搭載しており、今年も昨年並みの約50試合での運用を予定しています。可搬型にしてあるため、必要に応じてスタジオサブなどでの運用も可能です。レンタルではなく、常時手元にある状態になったので、今後は、自社番組のマルチカメラ収録や、メディアゲートウェイステーションを介したポスプロ用のファイルへのダイレクト吐き出しにも活用の幅を広げていきたいと考えています。
いままでパラレル収録では、複数のVTRを並べてVEがRecやStopをかけていましたが、PWS-4500なら一斉Rec・Stopが可能なため、作業負担の軽減にもつながると思います。スポーツ中継においても、いままでビデオサーバーを使っていなかった自社制作・地上波向けのゴルフ中継、春の高校バレーなど、ほかのジャンルのスポーツ番組での活用を考えています。
デモ機をあらかじめ借りて使っていたので分かっていましたが、使い勝手も安定性も当初の期待通りです。まったくトラブルがなく動作しており満足しています。
使い込んでみた感想は、これまで使っていた製品と比べると、別のメーカー・別の製品ですので、もちろん多少の気になる部分はあります。操作や機能によっては、若干手数が増えた部分などもありますが、それらについては、すでにソニーに要望を出しているので、今後のアップデートで対応されることを期待しています。
こちらからの要望に対する対応の質の高さは、選ぶ際の重要なポイントです。耳にしていたPWS-4500のバージョンアップのスピードだけでなく、国内メーカーであること、ソニー製品を多数使ってきてのアフターケアの実績が、ソニーを選んだ大きな理由の一つとなりました。
いまのところは、これまでの他社製品と同じような使い方をしていますが、PWS-4500には他社にはない便利な機能がいろいろと備わっています。タッチパネル上でのドラッグアンドドロップによるプレイリスト編集機能なども、今後は積極的に現場で活用していきたいと考えています。引き続き、バージョンアップを通じた改善や、便利な機能の追加による用途の拡大などを期待しています。
2018年7月掲載