多彩な動画配信サービスで活躍するデジコン株式会社様は、創業20年を迎えた2015年に、4Kサービスの強化・充実というクライアントニーズに応える一環として、運用性・機動性を兼ね備え、4K60p映像制作に対応する車載型映像制作システム「4Kista!」(フォーキスタ!)を開発・導入し、同年10月より本格運用を開始しました。
同社 事業本部 本部長 酒井康裕様、技術本部 制作部 部長 山本善宣様、制作部 コンテンツ制作チーム 田村奈津美様に、「4Kista!」開発・導入の経緯と目的、システムコンセプト、運用状況と成果、今後の期待などを伺いました。
なお、記事は1月中旬に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。
当社は創業以来、動画配信を中核に事業を展開していますが、ポリシーの一つとしているのが撮影・制作・配信を含めて自社でワンストップで行う、インソーシング、つまり内製化への積極的な取り組みです。その映像制作がSDからHDへ、そして近年は4Kをはじめとした次世代映像が注目を集めています。BS/CS放送、各種メディア、ケーブルテレビ、さらに地上波においても2020年に向けて4K/8Kといった次世代映像制作が本格化していくものと想定されます。当社にとってもこうした新しいクライアントニーズに対応する上でも4Kサービスへの取り組みが求められることになります。もちろん、すでに4Kスーパー35mm CMOSセンサーを搭載したNXCAMカムコーダーNEX-FS700Jを使ってバスケットボールの4K収録を行うなど、4Kへの取り組みは行ってきましたが、より本格的な対応をするために社内で4Kプロジェクトを立ち上げ、具体的な対応策を検討することにしました。
検討作業で最も重要なのは、クライアントニーズをしっかり把握することです。どんな番組、映像制作で4K撮影、配信が求められているのか、カメラ台数などシステムの規模・機能で求められるもの、運用やオペレーションで重視される技術やノウハウは何か、そして制作の期間やコストはどれぐらいが理想的なのか、といった点を予め把握しておく必要があります。そこで、全国50社近くの放送局や制作会社のお客様を回ってヒアリング、プレマーケティングを行いました。その結果、全国各地からの4Kでの放送・パブリックビューイング・インターネット動画配信を可能にするシステムを基本コンセプトとし、開発・導入したのが車載型映像制作システム「4Kista!」(フォーキスタ!)です。
「4Kista!」のシステムコンセプトの一つが、高精細な4K60p映像制作のニーズに対応した点です。また、普通車両に設備を搭載することで、省スペースが求められる状況や4K大型中継車では対応の難しい場所での中継・収録も可能にしただけでなく、機器一式を可搬型ラックに組み込むことで、車内ではもちろん、車外でスピーディーに設営・運用・撤収できるなど、運用性・機動性も向上させています。コンパクトな4K中継・映像制作システムとしたことで、制作コストを抑えることも可能になります。さらに、「4Kista!」には「4Kサービスする人」の意味が込められていますが、当社4Kプロジェクトチームの撮影・制作スタッフによる効率的なオペレーション・サポートによって、撮影環境に柔軟に応じたサービスを提供できる体制を整えた点も特長です。
収録サーバーとしてマルチポートAVストレージユニットPWS-4400を採用。XAVCフォーマット対応、標準で2TBの大容量メモリーストレージ、4チャンネル同時記録再生などの機能性、拡張性を評価して採用を決定されました。追いかけ転送機能を活用してポータブルストレージPSZ-HB2Tにスピーディーに転送できる点も好評です。
コアプロダクツの一つとなる収録システムには、マルチポートAVストレージユニットPWS-4400を採用しました。
イニシャルコストの観点からしますと決して優位性があったわけではありませんが、4K制作のスタンダードとなっているXAVCフォーマットに対応していること、標準2TBの大容量メモリーストレージを搭載している点、4K/HDライブ運用が可能なこと、4チャンネル同時記録再生や追いかけ再生などの機能性、拡張性・発展性を含めトータルコストパフォーマンスに優れていることを評価した結果です。実際、バスケットボールなどのスポーツでは2時間や3時間の収録が必要になります。これを他のレコーダーを使ってRAWやDPXで収録すると1カートリッジで20分ぐらいが限界ですので、結果的にトータルコストが上昇するだけでなく、後処理を含めた工程でも手間と時間を要することになります。4Kライブ制作をより高画質、効率的に行うことを目的とする「4Kista!」には、まさに最適なライブサーバーシステムでした。
撮影用カメラにはCineAlta 4KカメラPMW-F55を3台と、スポーツ収録を意識して4K運用時最大860フレーム/秒のハイスピードカメラ1台の計4台を標準で装備しました。PMW-F55選択の理由は、スーパー35mmサイズの4K CMOSセンサー搭載、フレームイメージスキャン機能といった高精細でクリーンな映像表現が可能なことによる実績・評価の高さはもちろんですが、4K60pで撮影してライブ出力ができる点も評価しました。本体からオプションなしで4Kライブ出力でき、また、カメラ内収録ができる点も魅力でした。中継だけでなく、制作用途でも運用したいと考えていましたので、SxSメモリーカードSBP-128Cを用意しています。さらに、RAWレコーダーAXS-R5とAXSメモリーカードAXS-A1TS24も用意しており、CMやビデオパッケージ制作などのRAW収録の要望にも柔軟に対応できるようにしています。レンズもPMW-F55の特性をフルに発揮できる単焦点レンズ6本セットのSCL-PK6/Fのほかに、ズームレンズ4本を備え、幅広い4K映像表現に対応できるようにしました。
撮影にCineAlta 4KカメラPMW-F55を3台採用。スーパー35mmサイズの4K CMOSセンサー、ローリングシャッター歪みやフラッシュバンドを抑えるフレームイメージスキャン機能、トータル14ストップのラチチュードなどによる高精細な映像で好評です。しっかりした明るさを確保できる単焦点レンズ6本セットSCL-PK6/Fのほか、ズーム比7倍から20倍のズームレンズ4本も標準で装備し、幅広い4K映像表現をサポートしています。SxSメモリーカードによる本体収録、RAWレコーダーAXS-R5を接続してAXSメモリーカードによるRAW収録にも対応しています。
高精細で、臨場感に溢れる4K映像の収録、管理にはモニタリング環境も重要な役割を担います。そこで、30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300、30型業務用4K液晶モニターPVM-X300を配備するとともに、4K対応マルチ波形モニターも搭載し、しっかりと4Kモニタリング、管理ができる環境を整えました。実際、より充実した、魅力的な4Kコンテンツの配信、制作をサポートしてくれていると実感しています。
また、4KメモリープレーヤーPMW-PZ1も、4Kサービスの強化策の一環として有効に活用できると考え、導入しました。ポータブルHDDストレージPSZ-HB2TやSxSメモリーカードを使って、別会場での4Kパブリックビューイングなどに効率的に運用できます。各種業界、団体のイベント、催事などの様子をより大勢の方に、臨場感と迫力に富んだ4K映像で伝えることができます。
普通車両に設備搭載することや、4K運用時で1MEのコンパクトなビデスイッチャーの搭載などにより省スペースでの運用を実現。また、機器一式を可搬型ラックに組み込んだことで車内だけでなく、車外でのスピーディーな設営・運用・撤収が可能になっています。そして、同社4Kプロジェクトチームの撮影・制作スタッフによるオペレーションチームが撮影環境に柔軟に対応するだけでなく、コンパクトな4K中継・映像制作サービスの実現でコストの低減にも貢献します。4K運用時には3G/HD-SDIのケーブル4本を配備しなければならない点も、要所要所に4心同軸DINマルチコネクターを配備することで効率的な運用とスタッフのストレス低減に貢献しています。
「4Kista!」の運用を開始してまだ3ヶ月あまりの段階ですが、イベントやライブコンサートの収録、配信で本格稼働中です。その一つが、日本ケーブルテレビ連盟主催の第41回「日本ケーブルテレビ大賞」番組アワードの4K収録です。贈賞式の様子をPMW-F55を3台使って撮影し、会場内で上映したほか、レセプションでも再生し、大変な賑わいを見せました。また、「4Kista!」の車両展示も同時に行い、多くの関係者にその魅力や能力を確認していただきました。ほかにも、女性ユニット・花乃ルサカのワンマンライブのリハーサルの様子や、キリハレバレの初ソロアルバム「Afre Uta」リリースパーティーの4K撮影・収録にも運用し、好評をいただきました。
今後も「4Kista!」の運用を通して4Kサービスの魅力をクライアントの皆様に提供していくとともに、PMW-F55とBVM-X300を使って4Kを凌ぐとも言われるハイダイナミックレンジ(HDR)へのチャレンジもしていきたいと考え、検証作業も開始しています。また、BVM-X300は次世代放送の規格ITU-R BT.2020に加え、SMPTEが提唱しているHDRのEOTF SMPTE ST.2084にも対応しておりより魅力的な色域表現が可能な点も魅力ですし、HDRとSDRの互換性を図るワンソース・マルチユースに対応したハイブリッドLogガンマにも大きな期待を持っています。
また、今後のテーマには、貴重な4K映像のライブラリー化もあります。貴重な映像資産として長期に渡り保存するだけでなく、再利用を含めた効率的な運用を可能にすることが必要です。リマスタリングでHDR化も可能な点もライブラリー運用の期待感を高めます。オプティカルディスク・アーカイブを含め、今後システム構築を検討したいと考えています。
当社では、今回導入した「4Kista!」を通して4Kサービスの強化・拡充に努めていきます。その一環として「4Kista!」の内覧会を全国で展開する予定です。すでに北海道で行い、今後九州、中国、東海、北陸、東北と回る予定です。お客様が求めるコンテンツ、配信先、技術力、オペレーションを提供できることをアピールし、4Kサービスの可能性を広げていければと考えています。
ソニーにも、4K制作をリードするメーカーとして、製品の開発、システム構築をサポートしていただくだけでなく、4Kサービスを広げていくビジネスパートナーとして、私たちの活動を応援していただければと期待しています。結果的に、それが4Kワールドをさらに広げ、業界の活性化にもつながると思っています。
デジコン株式会社
1995年(平成7年)に創業した、動画配信を核とした、ビジネスモデルの提案・構築及び、デジタルメディアの企画・制作会社。本社:東京都千代田区。一貫して放送と通信の融合(Digital Convergence)を目標に掲げ、さまざまなインターネット上のメディアの開発・サポートに取り組んでいます。ストリーミング・ムービーのオンデマンド・ライブ配信やリッチコンテンツのオーサリング、エンコードサービス、Web制作はもちろんのこと、企画から撮影、配信へとワンストップサービスを放送局はもちろん、官公庁や独立行政法人など幅広いお客様に提供し、高い評価と実績を得ています。4Kをはじめとした次世代映像制作にも意欲的に取り組んでおり、今回新たに導入した車載型映像制作システム「4Kista!」(フォーキスタ!)による4K中継・映像制作サービスを、社内に設けた4Kプロジェクトチームの優秀なスタッフによるオペレーションで提供しています。
2016年3月掲載