埼玉西武ライオンズ様は、CineAlta 4KカメラPMW-F55とマルチポートAVストレージユニットPWS-4400を使った4K/HDライブ撮影・収録システムの運用を、2015年3月27日の開幕戦から開始しました。
株式会社 西武ライオンズ 営業部 マネージャーでメディア担当の増岡 勝様に運用の目的や期待を、システムを導入し実際のオペレーションを担当している株式会社 テレテック 役員待遇 技術本部長 保坂雅一様、制作本部 制作部 部長 黒田清隆様、技術本部 制作技術部 撮像課 主任 八山直樹様、技術本部 技術部技術課 主任 若林秀光様に、システム選定の経緯や決め手、運用状況と成果、今後の期待などを伺いました。なお、記事は2015年4月中旬に取材した内容を編集部でまとめたものです。
増岡勝 様
保坂雅一 様
黒田清隆 様
八山直樹 様
若林秀光 様
CineAlta 4KカメラPMW-F55にカメラシステムアダプターCA-4000を装着し、中継車内のベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000と接続することで4K/HDライブシステムを構築。攻撃時/守備時など、撮影ポジションを変更して魅力的な映像を撮影。
埼玉西武ライオンズは、多くのお客様にプロ野球に関心を持っていただき、球場に足を運んで応援・観戦していただくことを最大の事業目的としています。そのために球場を快適な感動空間にすることはもちろん、メディアなどを通して楽しむ方々にも同様の感動体験をしていただく配慮が必要不可欠となります。
こうした目的を達成する上では、映像コンテンツが重要な役割を担います。球場内の大型映像表示システムやモニター、あるいはメディアを通してプロ野球の魅力やプロ野球選手の凄さを映像ならではの表現で伝えていく必要があります。同時に、常に時代にあった映像美と多彩な表現で映像コンテンツを制作していかなければなりません。
今回の4K/HD ライブシステムの運用は、こうした球団ポリシーをさらに進化させることが目的であり、事業目的の根幹を成すファンサービスの強化、拡充を目指したものにほかなりません。
開幕戦を含めて、まだ6試合で運用している段階ですが、期待していた映像美、説得力のある映像が表現できていると実感しています。4K の高精細映像は、現地で観戦しても見ることが難しい細かな部分まで視認できます。貴重なコンテンツとして保存し、今後需要が増えるであろう配信用コンテンツとして有効に活用できるのではないかと期待しています。
また、HD 映像でも4K 大判センサーを搭載したデジタルシネマカメラならではの特長が発揮されていて、従来のHDカメラより鮮明である印象を持ちました。現状の映像コンテンツとしても、ファンの方々により臨場感に富んだ映像を提供することができると期待しています。
さらに、今回のシステム運用の大きな成果と評価しているのがハイスピード撮影などの映像表現力です。リプレイ映像として活用することで、プロ野球ならではの迫真のプレーや選手の表情などをリアルに再現できます。ハイスピード撮影でも画面が暗くならない点も魅力です。4K 映像からのHD カットアウト機能なども今後の本格運用の中で検証、テストして魅力的な映像制作に活用したいと考えています。
今後も、場内に完備したWi-Fi 設備で観客の皆さんのスマートフォンなどに映像を配信するといったことを含めて、ファンサービスの強化に欠かせない、魅力的な映像コンテンツ制作・配信に向けた努力を重ねていきたいと思います。
株式会社テレテック様の中継車HD-110(写真・右下)に設置されたマルチポートAV ストレージユニットPWS-4400(写真・左)。また、プロダクションコントロールステーションPWS-100PR1とUSBコントロールデバイスPWSK-4403(写真・右上)でスロー運用などを実施。
今回のシステム選定にあたっては、「XAVC 4K 収録」と「HDハイフレームレートでのスローリプレイ」がキーワードでした。この2点を実現するキープロダクツとなったのが、マルチポートAV ストレージユニット PWS-4400 です。まず、PMW-F55/CA-4000/BPU-4000 を用いたカメラシステムから出力される4K/60p の信号を、XAVC 4Kファイルとして記録できる収録サーバーは現時点でPWS-4400 だけです。また、4K 収録のみならず、HD で最大6倍速のスーパースローリプレイにも対応し、多彩な映像表現に柔軟に対応できる点が非常に魅力的でした。プロ野球の実況中継に対して有効に活用できるのではないかと評価し、導入を決定しました。
4K での撮影・収録は、まだ本格的に行っている段階ではありませんが、4K ならではの高精細な映像は迫力と臨場感の向上に大きく貢献しており、プロ野球の魅力を伝える上でも有効であろうと判断しています。貴重な資料映像として残したり、要望に対して柔軟に対応できる体制を整えていきたいと考えています。
現状の運用で今回のシステムが最も威力を発揮しているのがHDでのスロー運用です。最大6倍速のスーパースロー運用が可能で、ピッチャーが投げるカーブ、シュート、スライダーなどの球種の違いによるボールの変化、あるいはバッターがホームランを打つ瞬間、投げた後や打った後の選手の姿をリアルに再現できるなど、リプレイ映像として有効に活用しています。特に6倍速スーパースローならではの表現力を実感したのが、ロジンバックをマウンド上に投げ落とした瞬間を撮影した時でした。粉塵が舞い上がる様子が高精細に再現されており、これまでに体験したことがない映像美でした。また、6倍速スーパースロー運用でも、明るさが落ちない点も魅力でした。
今回のシステムの特長的な機能としては、4KからのHD映像のカットアウトもあります。1カメラの運用でも、必要に応じて映像の中から寄りのカットを選び出し、使用できる点が特長です。現段階では検証を兼ねて使用していますが、プロ野球の実況中継やコンテンツ制作でどのように活用するのがベストか、検討していきたいと考えています。
まだ本格運用を開始してまもない段階ですが、トラブルもなく安定した状態で稼働できている点で満足しています。もちろん、選手の動きを追う際のフォーカス合わせなど、高精細な4K特有の撮影の難しさを克服する必要があります。今後の運用、オペレーションを通して4Kの知見を広め、ノウハウを蓄積してことが大切だと思っています。
また、西武プリンスドームの試合だけでなく、今後は県営大宮球場での主催試合でも活用する予定になっています。照明を含めた環境や条件の違いにも柔軟に対応できる機動力も求められます。今回の4K/HDの新システムを、いつ、どこでも、どんな条件でも効率的かつ柔軟に対応できる能力を培っていき、埼玉西武ライオンズとファンの皆様の期待に応えられる魅力的な映像コンテンツを提供できるように努力していきたいと思いますし、必ず他では真似のできないような迫力と臨場感に溢れた映像で満足してもらえるようにしていきたいと考えています。
もちろん、刻々と状況が変化するプロ野球などのスポーツ中継における撮影・収録、制作業務では、いかなる状況にも柔軟に対応できる機能や操作性、アクセサリーなどが不可欠だと考えます。
ソニーには、今後もラインアップの拡充やファームウェアのアップデートなどを通して、こうした現場の声や要望に具体的に応えるソリューションを提案していただきたいと期待しています。
2015年8月掲載