私が初めて触れたホームシアターは、ブラウン管技術を応用した三管式プロジェクターを用いたものでした。正直なところ映像にはそれほど感動はしませんでしたね(苦笑)。というのも投影された画面は全体にぼんやりとしていて、ちょうどブラウン管のアナログテレビが100インチになっただけじゃないかという雰囲気でした。
その印象がガラッと変わったのが、2003年に登場したソニーの『QUALIA 004』(SXRD HDプロジェクター)でした。のちの4K対応プロジェクター『VPL-VW500ES』にもつながるSXRDデバイスが描くフルハイビジョンの映像はとても鮮明で、まさに目の覚めるような体験でした。「映画館のような精細な大画面が、家で、しかも好きな時に映像が楽しめる!」そう思うとすごくワクワクしましたね。デザインも秀逸でインテリアとの調和をとりやすかったのを覚えています。唯一の難点は価格でしたが、その後『VPL-VW100』が登場したことで、ホームシアターへの導入もしやすくなりました。
当店では三管式プロジェクターの技術が成熟した、『QUALIA 004』の登場前夜とも言える時期にホームシアタールームを設けました。当時人気のあった三管式プロジェクターは3つのブラウン管すべての焦点を一点に合わせることはもちろん、スクリーンの種類ごとに画質設定を変えたり、機種によっては重量100キロ近いプロジェクターを天井に吊り下げたりと、設置にはシビアな計測と建築の知識が必要でした。
シアタールームづくりに欠かせない施工やセッティングの技術を、試聴ルームの作成を通じて実地に習得できたのはよかったと思っています。時代は変わりましたが、重量物を扱う設置のノウハウや考え方は現代のホームシアターづくりにもしっかりと生きています。そしてCADを使った正確な施工図面の作成、お客さま・工務店さんとの情報共有と意思確認で、正確な施工が大事だと思っています。
ホームシアターづくりはお客さまの希望を伺うヒアリングから始まります。この時に大切なのがお客さまとの距離感だと思っています。当店はAV機器だけでなく冷蔵庫やエアコンといった家電も扱っており、さまざまなお客さまがご来店されます。おしゃべりが好きなお客さまや、反対にいつも二言三言しか言葉を交わさない方もいます。お一人ひとりにとって心地よい距離を保ちつつ、シアタールームでの試聴の様子からも希望を読みとり、プランを提案することを心がけています。
対面で直接やりとりするからこそ判るお客さまの要望もありますね。お部屋の構造から施工に制限があることをお伝えしたり、配線のアイデアを出したりと、適切な距離を保ちつつもお互いの考えをしっかりと通わせることで、初めて満足していただけるホームシアターが生まれるのだと思います。
ホームシアターを導入したお客さまから「画面が映らなくなった」、「音が出なくなった」とご連絡があればすぐ駆けつけるようにしています。トラブルが起こった時に駆けつけることは当たり前にも思えますが、これができるのは地元に根ざしたショップだからこそです。私どもでもインターネットを使った通信販売に力を入れていた時期がありました。しかし、遠くのお客さまに安心を届けられないことに違和感を持ち、現在はCDなどに取り扱い商品を限定しています。今では私も、もう一人のシアター担当者も「お店からいなくなったと思ったら、いつもお客さんのところにいる」と、言われるほどです(笑)。心地よい距離感と安心を提供することを心がけています。
今、もっとも力を入れているのが4Kですね。4K映像の鮮やかさは圧倒的ともいえるほどで、私自身『QUALIA 004』に初めて触れた時の驚きとワクワクをもう一度感じています。多くの人にこの感動を体験してほしいと思って、ホームシアターをお望みのお客さまには必ず4K対応プロジェクター『VPL-VW500ES』の視聴をおすすめしています。4Kをご存じのお客さま、またはすでに体験されているお客さまは確実に増えてきていますが、多くは液晶テレビや映画館での体験です。プロジェクターを使った4Kの体験はテレビとも映画館とも異なる、映像に包み込まれるような独特の迫力と臨場感が味わえます。Laboにご来店いただき、4Kホームシアターのすばらしさをぜひ体感していただければ、と思います。