ホームシアターの一番の魅力は、自分好みの音と映像に心ゆくまで浸れることではないでしょうか。海外アーティストのライブをアリーナ席にいるかのような臨場感で楽しむ、懐かしの名画で今では大女優と呼ばれる俳優の初々しい演技を150インチの大画面で見る、これらはホームシアターならではの体験です。海外アーティストの公演は日本ではチャンスが限られますし、過去に映画館で見た名画をもう一度、大スクリーンで味わえる機会も多くはありませんよね。しかし、自宅にあるホームシアターであれば、いつでも好きな時に、しかも特等席で味わえるのです。
私が初めてホームシアターで震えるような体験をしたのは、あるロックスターのライブ盤を再生した時でした。目の前のスクリーンには視界を覆いつくすようにステージの様子が広がり、背後からはオーディエンスの声が聞こえてくる。2chのオーディオやテレビでは体験できない、映像と音に包み込まれるようなホームシアターの臨場感に思わず鳥肌が立ちました。特に音の迫力が印象的でしたね。ステージと客席が一体になったライブ特有の熱気がサラウンドによって再現され、空間に飲み込まれるような体験でした。
AVアンプやスピーカー、プロジェクターなど、ホームシアターは機器の組み合わせごとに映像と音の傾向が変化します。組み合わせを突き詰めれば自分好みの音と映像の空間をつくりだすことができますが、好みは人それぞれですよね。たとえば同じクラシックファンでも高音の抜けがいい華やかな音を好む方もいれば、引き締まった低音をベースにした重厚な音を好む方もいらっしゃいます。
ですから私どものシアタールームで視聴していただく時には、普段よく見るお気に入りのブルーレイディスクやDVDを持ってきてもらい、機器一つひとつの個性、そして機器の組み合わせで変化する映像と音を心ゆくまで確認していただいています。さまざまな機器の組み合わせを試して好みの音を見つけだせるのは、専門店だからこそのメリットです。視聴中はお客さまも私たちも集中しているので、気がついたら何時間を過ぎていたということもよくあります(笑)。しかし、時間はいくらかかってもいいんです。満足するホームシアターを見つけてもらうことが視聴の目的ですから。
ネットワークオーディオやハイレゾ、4Kなどホームシアターを取り巻く環境と技術には大きな変化の波がやってきていると感じます。変わりつつあるAV環境や話題の新製品を体験していただく場として、月に一度はセミナーや商品の体験会を開催しています。こういったイベントはメールや電話一本で参加することができますので、「近くに来たついでに寄ってみた」というお客様もいらっしゃいますね。AV機器は専門性が高いこともあって、ホームシアターに興味をもっていても「敷居が高い」と感じられている方が多いと思うんです。その一方で、ネットワーク設定など最新のデジタルオーディオの使いこなしに戸惑われている古くからのオーディオファンもいらっしゃいます。気軽に参加できるセミナーや体験会を通じて、最新機器の音と映像の素晴らしさ、そして使いこなしのポイントを体感していただければと考えています。
店舗の1階をCDやレコード、ヘッドホンのコーナーとし、2階をテレビやホームシアターコーナーとしているのも、身近なCDやテレビを入り口にAV機器に興味を持ってもらいたくて始めたことです。映画の世界に入り込んだかのような感覚や、お気に入りのアーティストが目の前で歌っているような臨場感は、ホームシアターならではの魅力です。この感動の素晴らしさを知るためには実際にホームシアターに触れていただくことが一番だと考えています。
以前、あるお客様に「自分が満足できない商品なら買う意味はない」と言われたことがあります。この言葉にはハッとさせられました。「これでいいや」ではなく、お客様ご自身が心と体が震えるような体験をしてこそ、満足や感動を生むホームシアターができていくのだと思います。そのきっかけをできるだけ多くご提供できれば、と思っています。