放送局
2018年8月掲載
Media Backbone報道ソリューションでトータルファイルベース化を実現
今回のシステム更新のタイミングに合わせ、これまでのテープメディアをベースとしたワークフローから、より迅速で機能性の高い報道を目指してファイルベース化への移行を決定しました。更新においては、素材の伝送速度の速さ・効率的な検索機能といったファイルベース化のメリットを活かすこと、送出は緊急時にテープ時代のフローと同様に収録素材・編集素材をダイレクトに送出できるXDCAM Stationであることを条件に、ソリューションの提案をお願いしました。
選定にあたっては、現状の運用とできるだけ変えることなく、収録から送出まで統一フォーマットXDCAMで運用できる、ソニーのシステムを採用しました。
工事に関しては、更新スペースがないため、現運用を止めずに限られたスペースで新しい設備を追加する段取りとなりました。そのため、1回で更新できず、2〜3回に工事を分割し、新旧設備を移設、仮設、常設を繰り返す長期的な作業を工夫して対応していただきました。
導入してまだ3週間ですが、システムは安定しています。スタッフも慣れてくれば、効率よくスピードアップして運用できるのではないかと思います。
PDW-850、PXW-X500、PXW-Z450 のXDCAMカムコーダーを導入
撮影機材では今回の更新でPDW-850、PXW-X500、PXW-Z450のXDCAMカムコーダーを導入しました。昼と土日のショートニュースや平日夕方のニュース番組「Nスタえひめ」、地元・愛媛の情報を伝える制作番組などで運用しています。
報道取材に関しては、より迅速に送出できるよう、転送速度の速いXDCAMメモリーカムコーダーを採用しました。また、撮影素材を長期保存したい場合や、JNN内での報道応援などで撮影素材メディアの受け渡しが想定される場合に、ディスク収録できるPDW-850を使用するなど、用途によってカメラを使い分けています。
XDCAM Stationによる送出システム
メインとなる報道系のフローは、XDCAMメモリーカムコーダーで撮影した素材を共有NASへインポートし、報道支援の取材予定とひも付けします。そして編集時には、素材をHDDへコピーしノンリニアで編集。編集ファイルは、報道支援のOAキューシートと連携し、ひも付けをしてXDCAM Stationへエクスポートして送出する、といったフローを標準としています。
テープ運用時のノンリニア編集では、素材のキャプチャーや編集後のアウトプットにリアルタイムか、それ以上の時間が掛かっていましたが、ファイルベースで大幅に時間短縮できるようになったと思います。
ODAへニュースアーカイブを保存
今回の更新の課題としては、煩雑であったテープ運用のスリム化がありました。テープのときには、素材のデータベース化はされず、共有素材は保存棚などに置き、それ以外は個人がダンボール箱に入れて保管するなどしていたために、素材の有効活用ができていませんでした。現在では、撮影・収録した素材をすべて取材予定にひも付けし、取材項目表をデータベースとして管理・活用しています。
OA素材のアーカイブは、オプティカルディスク・アーカイブ(以下ODA)を使用しています。今までは、OA素材テープをラージテープへダビングして1本化していましたので、ODAにすることでかなりコンパクトになったと思います。また、テープに1本化していたニュースのアーカイブも順次ODAへ変換しているところです。
タイマー収録を設定可能
弊社には、回線センター的なものがなかったので、外からの回線は、マスターのルーターで受けて、サブに分配していました。また、そのルーターには入力数に限りがあるため、都度、接続を変更して運用していました。そこで今回、ソニーのマトリックスルーターをENGルームへ配置し、外からの回線をダイレクトに受け、分配する方法に切り替えました。さらに、さまざまな入力素材は報道フロアとENGセンターで確認できるようにして、報道デスクは、自分の席でいつでもモニターができ、収録も可能になりました。回線収録では、スケジュール(予約)収録の機能を導入することで、定時・夜間収録時の対応がなくなり、スタッフの拘束時間を減らすことにつながりました。また、ファイルはサーバーに直接入るので、長時間の収録にも対応できるようになっています。
さまざまな素材をモニターで確認
カメラをXDCAMにしたことで、収録時に低レゾとハイレゾの2種類の素材ファイルが記録でき、記者は低レゾで音抜き、カメラマンはハイレゾで編集と、並行して別々の作業ができるようになったのは、忙しい報道の現場では、大きなメリットです。テープのときに比べると、かなりの効率アップにつながっていると思います。
システムを入れてまだ3週間の状況なので、まずは現在の環境に慣れること。そしてシステムのメリットを見つけ、活かしていくことが大切だと考えています。
将来的には、現場からの低レゾ伝送など、災害時なども想定に入れた、より効率的な取材体制を整えたいと考えています。