アナログシステムには、ダイナミックレンジを確保するためにコンパンダーと呼ばれる圧縮方式が搭載されており、現在もさまざまな改善が行われていますが、音質と過渡応答に対する根本的解決策にはなりえませんでした。 そこでソニーが開発したデジタルシステムのオーディオコーデックは、これらの問題を根本的に解決し、さらなる音質の向上と、トランスミッターのA/DコンバーターからレシーバーのD/Aコンバーターまで含め1.5ミリ秒*の高速処理を可能としました。 |
● 24bit/48kHzサンプリングを採用 ● 20Hz〜22kHzまでの広い周波数応答特性 ● 送受信システムで1.5ミリ秒*の低遅延時間 |
● 106dBを超えるダイナミックレンジ ● リニア方式に近い高速レスポンス |
* | DWM-02N、DWT-B01NとDWR-R02DNを組み合わせた場合の遅延時間です。 DWR-02DNと組み合わせた場合は、2.7ミリ秒の遅延が発生します。 |
アナログシステムでは、D/U比(希望波と妨害波の強さの比)が、復調
されるオーディオ信号のS/N比となります。妨害波が強くなれば、復調される信号に含まれるノイズも増加する性質があるので、アナログシステムにおいて、クリアな音声を再生するにはD/U比で40dB以上必要とします。
一方、デジタルシステムでは、エラーが無ければオーディオ信号の品質劣化がありません。ソニーのデジタルシステムでは、20dB以上のD/U比が確保できればエラーは発生しません。つまり、妨害波が強くなっても、D/U比が20dB以上確保できていれば音声の劣化が無いことになります。 このように、ソニーのデジタルワイヤレスマイクロホンは、従来のアナログシステムと比較して20dB以上(受信電圧レベル比で10倍以上)も妨害波に対して強くなり、安定した運用が可能となります。 |
WiDIF-HPは妨害波に強く、多チャンネル同時運用に大きな進歩をもたらします。 多数の無線チャンネルを同時に使用した場合、それぞれのチャンネルが干渉することで3次相互変調ひずみという新たな周波数が発生し、無線チャンネル妨害の原因となります。従来のアナログB帯システムでは、この3次相互変調ひずみの発生しているチャンネルを避けてチャンネル配置を行う必要があり、同一空間での同時運用は最大7チャンネルまでとなっていました。これに対してWiDIF-HPは、アナログシステムより20dB以上も妨害波に強く、優れた高周波回路と組み合わせることで、3次相互変調ひずみによる妨害波を気にすることなく375kHzの等間隔にチャンネル配置ができるため、従来のアナログB帯システムよりはるかに多数のチャンネル数を同時運用することができます。 これと同じ理論により、移行後の新しいA帯におけるテレビホワイトスペース帯では、チャンネルあたり12波、また、1.2GHz帯では、38波の同時運用が可能となります。 |
アナログシステムでは音声信号をFM変調で伝送しているため、専用機材と知識があれば音声を傍受できてしまいました。一方、デジタルシステムでは盗聴防止のため、暗号化による秘匿性を持たせたワイヤレス伝送が可能です。ソニーのデジタルシステムは、秘匿鍵を用いたセキュアキーモードと、1つのパスワードを複数台のトランスミッターやレシーバーに設定し秘匿通信グループを作れるパスワードモードをサポートします。セキュアキーモードは、トランスミッターが生成する鍵を交換した一対のトランスミッターとレシーバーでのみ通信が可能で、強固な秘匿レベルを保てるという利点があります。 一方、パスワードモードは、ユーザー独自のパスワードをトランスミッターやレシーバーに入力。パスワード未設定の機材は通信に参加できませんが、パスワードを設定した機材間では自由に通信できます。例えば、放送局の機材をすべて1つのパスワードに設定したとき、その局内では機材の暗号化を意識せずに自由な組み合わせで使用できるので、他局などに対して秘匿化できます。 また秘匿化された同報通信(ブロードキャスト通信:1つのトランスミッターの音声を複数台のレシーバーで受信すること)も可能です。放送局以外でも、官公庁など、情報の漏洩防止、秘匿性が求められる利用にも有効です。 |
音声信号と同時に、トランスミッターのオーディオ入力レベル、電池残量情報、アッテネーターなど、トランスミッターのほぼすべての情報をメタデータとして伝送がすることができます。 これによりレシーバーのディスプレイ画面においてトランスミッターの状態を確認でき、運用上の利便性が向上します。またスロットインによるカムコーダー装着時は、トランスミッターのみならずレシーバーの情報もカムコーダーのビューファインダーなどで確認できます。 |