普及していく音楽配信サービスをより楽しむために
日々の音楽ライフを考えると、スマートフォン/タブレット/ウォークマン®などのモバイル端末での音楽再生は、もはや必須条件と言えます。Google Play Music、LINE MUSIC、AWAなどのさまざまな定額制音楽配信サービスを、外ではスマートフォンとヘッドホンで、自宅ではスピーカーで聴くという機会も増えると思います。
本機は、USB B端子、USB A端子からの音楽再生のほかに、手軽なワイヤレスリスニングを実現するBluetooth®からの入力に対応しており、ワイヤレスでもこれまで以上の高音質が楽しめるデスクトップスピーカーです。例えば、定額制音楽配信サービスで新たに出会った楽曲を、ハイレゾ相当の高音質で楽しんでいただくことも可能です。スマートフォンで受信した音楽をBluetooth®で伝送し、本機で受信。スマートフォンがLDAC™に対応していれば、従来のBluetooth®の伝送方式であるSBCコーデックよりも最大約3倍(*1)の情報量を伝送できるので、Bluetooth®の圧縮による情報ロスを極力抑えた状態でお楽しみいただけます。アンプ側では、音源をハイレゾ相当までアップルケーリングするDSEE HXの働きにより(*2)(*3)、さらに高音質での再生が可能となります。
また、スマートフォンやウォークマン®に保存したハイレゾ音源もこれまで以上に高音質なワイヤレス環境で楽しめます。
*1 Bluetooth®A2DPのSBC(328kbps/44.1kHz時)との比較
*2 設定を変更するには、スマートフォンやタブレットに「SongPal」アプリをインストールする必要があります
*3 初期設定は「オート」です。圧縮音源は「DSEE HX」によって高音質化され、ハイレゾ音源はそのままの音で出力されます
デスクトップで音楽を楽しむためのサウンドデザイン
今、1BOXタイプのワイヤレススピーカーが、非常に人気です。人気の理由は、コンパクトで部屋のどこにでも置きやすい点でしょう。音質の面でも、サブウーファーを搭載するなど、メリハリの効いた重低音で、部屋中にいい音が広がる特長的なサウンドです。一方、PCをメインに音楽を聴く方には、PCをスピーカーの真ん中に置けないなど、しっかり傾聴するには物理的に制約があることも多く、デスクトップで、PCの左右に均等に設置できる高品位なセパレートタイプのスピーカーに潜在的ニーズがあると考えていました。
開発にあたり、PCをメインに音楽を聴くお客様のリスニング環境を徹底的に研究しました。PCやタブレットをデスクトップに置き、それらの両サイドにスピーカーを設置するお客様も多く、近接距離でもより快適に聴けることを目指して、本機をデザインしました。
それは、用途を明確にし、極力シンプルな構造で高音質を実現するということです。
何よりもこだわったのは、ボーカルの存在感とサウンドの広がり感。目を閉じれば、目の前でアーティストが歌っている姿が見えたり、ライブならではの豊かな音場や楽器の位置を感じることができる。そんな、セパレートスピーカーならではの定位感、広い音場の再現性を最も重視して、サウンドデザインを仕上げてきました。PCの横に置いてもらえれば、セッティングなど、難しいことを考えなくても良い音が楽しめる。かつてない、上質なサウンドに仕上がりました。
ニアフィールドリスニング
オーディオを聴く上で、大事な要素となるのは、スピーカーとリスナーとの距離です。2つのスピーカーからリスナーに対して適切なポジションで定位するには、ある程度の距離が必要となります。一般的に、デスクトップで使用する近接距離では適切な距離感が取りにくく、本来の臨場感を再現するのは困難でした。
本機は、デスクトップでの使用を想定してサウンドデザインを仕上げてきたため、これまでのオーディオ機器以上に、近接距離=ニアフィールドリスニングに最適化されています。
新設計のフルデジタルアンプ
CAS-1では、とにかくコンパクトなボディに仕上げるために、アナログアンプではなく、発熱を抑えられるデジタルアンプ「S-Master HX」を採用しました。 音声信号はデジタルとアナログの間で変換を行うと、必ずデータのロスが生じ音質が劣化します。そのため、デジタル信号を一切アナログに変換せず、フルデジタルで処理を行う構成のデジタルアンプが音質には最も良いと私たちは考えています。特にCAS-1は入力をデジタル系のみに絞っていますので、アナログ信号を混在させない好条件が整っており、フルデジタルアンプを採用して高音質化をはかっています。
さらに、S-Masterプロセッサーに、ソニーの10年以上にわたるデジタルアンプ開発技術を結集した新規開発のICを使用。 従来のデジタルアンプのノイズシェーパーやサンプリングレートコンバーターに大幅な改良を施し、さらなる低ノイズ化を実現。これによりハイレゾならではの圧倒的な情報量を余すところなく再現できるようになりました。
また、部品にはソニーのコンポーネントオーディオの「ESシリーズ」でも採用している高品位な部品を多数搭載し、基板のパターン設計もその思想を受け継いでいます。「小さくても中身は本物」というモデルを作るべく、徹底した高音質設計を行いました。
コンビネーション電源
ACアダプターでは多くの場合スイッチング電源を採用しています。この電源は小型化ができエネルギー効率が良いのでここ数年で多く採用されるようになりましたが、動作原理として多くのスイッチングノイズを発生し、音質に大きな悪影響を及ぼします。
本機ではACアダプターからの電源入力の後段にディスクリートのフィルターとレギュレーター回路を搭載し、ACアダプターからのスイッチングノイズを除去するとともに、パワーアンプ部に供給する電源電圧を可変して音量制御を行います。
これら電源のノイズフィルターと電圧制御の二つの機能を持たせたのがコンビネーション電源です。
パルスハイトボリューム
一般的なデジタルアンプでは、音楽データ自体を間引いて小さくすることで、最終的な再生音量を小さくし、音量を下げています。こうすると、データの縮小時にどうしてもデータの欠損が起き、音の密度が低下します。せっかくのハイレゾ音源も情報量が減り、立体感やライブ感が薄れ、本来のハイレゾ音源のクオリティーを確保しきれなくなってしまいます。
本機は、電源電圧を可変させ、データのサイズはそのままで、増幅率だけが変化しますので、高い密度を保ったままボリュームを絞ることができます。
この方式を採用することで、ボリュームを絞った時でも、元の音源の情報量を保ったまま、臨場感のある再生ができます。
この話を例えるならば、以下のような関係性になります。
Low Volume Mode(ローボリュームモード)
人間の耳は音量が小さくなると低域と高域がより聴こえにくくなり、人間の声などの中音域は逆に聴きとりやすくなるという特性があります。
これまでのオーディオ機器は、音量を上げたときによく聴こえるように設計されており、ボリュームを下げた際にバランスが崩れてしまうものも多くありました。
しかし、一般の家庭では音楽を聴く時間が夜間であったり、また都市部の集合住宅では近隣の迷惑になるという懸念からあまりボリュームを上げられないという現実があります。この問題を解決するために、本機では、ボリュームを絞った時でも高音質で再生できるよう、各ボリュームで音のバランスを補正する機能を搭載しました。これがLow Volume Modeです。ボリュームレベルによって、高域低域の聞こえづらさは異なりますので、この機能はすべてのボリュームステップで同じ補正量というのではなく、各ボリュームステップにあった補正量を設定しています。
この機能を有効にすると、ボリュームを絞った時にも、本機の特長である目の前に広がるステージ感、目の前で演奏しているかのような臨場感を損なうことなくお楽しみいただけます。また、各ボリューム位置における必要な補正量は、スピーカーによっても異なります。Low Volume Modeは本機の付属スピーカーに最適化した補正カーブを設定し、システムとして最大限に力が発揮できるよう、チューニングしています。
スピーカーの細部にまでいたるこだわりの数々
本機の商品コンセプトは、「デスクトップユース」。スピーカーとリスナーとの距離が近いため、通常のスピーカー以上に、耳障りなノイズの元となる歪(ひず)みの対策を徹底しました。
ボイスコイルが前後に動くとコイルに流れる電流(インダクタンス)が増減するのですが、この非対称性により歪(ひず)みが発生します。この歪みの処理に銅キャップと銅リングで徹底した対策を施しました。新規設計の高比重樹脂モールドフレームも渦電流の発生を抑え、歪みの低減に寄与しています。これらの歪み対策により、繊細な音の再現性を向上させました。
また、低減を増強するダクトを底面に設け、前方向に開口を向け、左右にもフレアを設けることでリスニングエリア全体に心地良く広がる低音を実現しました。さらに、口径の小さいダクトで発生しがちな風切り音やダクトノイズを、開口部の大きなフレアとダクト内部に施したテクスチャー処理により低減しています。
キャビネットのバッフルと背板には、振動をしっかり受け止めるため、12mm厚のMDF材を採用。胴面部には、キャビネットの美しい響きを引き出すため、9mm厚のバーチ合板を使用。高精度の木工加工を施し隙間なく組み立てることによって小さいながらも堅牢なエンクロージャーを作りました。さらに、内部に施したブレースと吸音材でキャビネットの響きをコントロールしています。仕上げには高級感のある塗装を採用し、長年愛用できる美しい仕上がりにもこだわって作り上げています。
他の部品もすべて徹底的に音質にこだわり、材質、形状等を吟味しました。その結果、デスクトップ上に豊かなサウンドステージを再現することに成功しました。
真鍮(しんちゅう)製スピーカースパイク
筐体を安定した状態で支えて接地面にしっかり立たせ、かつ美しい響きを得るために、高級機種で使用されるものと同様に真鍮(しんちゅう)を切削加工し3層メッキを施した、本格的なスピーカースパイク。
仰角8度上向きになることで、デスクトップでの使用に最適な角度となるスピーカースパイク(大)と、出荷時に装着されているスピーカースパイク(小)は、お客様のリスニング環境に合わせて、使い分けていただけるよう設計しました。ぜひ、音の広がり方を実際に試して、選んでいただければと考えています。
5mm厚のスチール製スピーカーベース
スピーカーが設置される机や棚は、材質や強度もさまざまで、設置面次第では、板面が共振したり、音が吸収されてしまったりと、再生音に影響が出てしまうことがあります。付属の重厚な専用スピーカーベースを敷くことで、そういった音の再現性のばらつきを最小化し、本機ならではの繊細なサウンドデザインをお楽しみいただけます。
ゆるまきのスピーカーケーブル
デスクトップ使用に最適な1.2mの長さ。ケーブル梱包時の巻の強さを従来より「ゆるまき」にすることで、ケーブルに巻癖をつきにくくし、音質と取り回しのしやすさに配慮しました。ケーブル先端もハンダ処理し、スピーカーとの接続がしやすくなっています。
交換可能なスパイクを付属
本機は目の前に豊かに広がる音場をお楽しみいただける本格的なスピーカーシステムです。
本機の性能を十分に発揮させるため、ご使用状況に応じて、スピーカーの仰角を適切に選択することをおすすめします。
出荷時に装着されているスピーカースパイクは、フラット設置用(仰角0度用)で、チェストの上など、視聴する位置から、80cm〜95cm程度の高い位置に設置する場合に有効です。
一方、デスクトップで使用する場合は、出荷時に装着されているスピーカースパイク(小)を外し、同梱の長い方のスピーカースパイク(大)に付け替えることで、8度の仰角がつき、机面での音の反射も軽減できるので、PCを使用しながら近接距離で音楽を楽しむのに最適なリスニング状態になります。
お客様のリスニング環境に合わせて、使い分けていただけるように配慮しました。
独立した専用ヘッドホンアンプ
家で音楽を聴く際も、ヘッドホンをメインにされる方が増える中で、ヘッドホンアンプの存在が見直されています。一般的なハイレゾ対応コンポでも、ハイレゾ出力に対応したヘッドホン端子を持った機器が多数ありますが、その多くは、スピーカー用アンプがメインとして設計され、スピーカー用アンプから電気抵抗によりヘッドホン出力を取り出す構造が多いです。このためヘッドホンアンプとしては最適な設計にはなっていないのです。本機は、スピーカー用アンプ基板とヘッドホン用アンプ基板が、それぞれ独立した専用の回路構成となっています。スピーカー用アンプとヘッドホン用アンプがほぼ同じ面積を占めるほど、ヘッドホンアンプにも力を入れているので、据置型のヘッドホンアンプとしても十分満足いただけるクオリティーに仕上がりました。
ポータブルヘッドホンアンプとして、評価の高い「PHA-2」に採用されたメインデバイスを本機にも搭載。
決して「脇役」ではなく、ヘッドホンアンプも「主役」として、設計しています。その一端として、ヘッドホンのインピーダンスに応じて切り替え可能なゲイン切替スイッチも設け、本格的なヘッドホンアンプに求められる要素をしっかり搭載しました。このゲイン切替スイッチは、これまでハイレゾ対応コンポには搭載されてこなかったものです。これにより、MDR-Z7のような、ドライブ能力を要求するヘッドホンもゆとりを持ってドライブできます。さらに外観にもこだわり、ヘッドホン端子部は、「PHA-1A」のデザインコンセプトを踏襲。ヘッドホンユースも強くイメージさせる仕様となっています。