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MANUFACTURE 開発者インタビュー

h.ear go ワイヤレスポータブルスピーカー SRS-HG1 h.ear go ワイヤレスポータブルスピーカー SRS-HG1

低域から高域まで存分に鳴らせる構造

メカ設計 石澤 祐馬

──小さいスピーカーだとどうしても迫力に欠けるというイメージがありますがh.ear goで音を出すと低域の強さに驚かされます。

石澤 祐馬[メカ設計]

低音をいかにしっかり出すか、というのは今回の製品開発において非常に重要なテーマでした。低音を出すには、音箱の容積が大きな意味を持ってくるため、スピーカーの小型化と低音の両立は、とても難しくなってきます。そのため、製品のサイズを大きくせずに、いかに音箱の容積を大きくとるかに注力しました。ただし、小型化のために筐体の強度を弱くすると、共振しやすくなるという問題があります。そこで、共振による付帯音が乗らないように、前面のバッフルには樹脂の中で一番硬い高剛性樹脂を採用しています。それ以外の素材は音が広がりやすい材料を選び、音のメリハリを出すようにしています。

──音の広がりのために、どういった工夫がされているのでしょうか?

h.ear go 商品画像

石澤 祐馬[メカ設計]

共振させないために、強度のある素材で作るのはいいのですが、ガッチリ作りすぎると、音が外に出ていきません。バイオリンでもアコースティックギターでもボディーである箱の部分が共鳴し、音が広がって出ていくのです。この箱鳴りをうまく使うことが音を広げるための1つのポイントとなります。そのためにはどんな素材がいいのか、樹脂や金属など、過去の経験も元にしながら複数種類をピックアップし、さまざまな組み合わせでシミュレーションしたり、テストを繰り返したりして1年くらい評価をした結果が、この製品に反映されています。もう1つは左右の音をどのように分離させるか、という点です。世界最小ですから、当然左右チャンネルが近接していますが、内部空間での音圧の伝搬を防ぐことで、左右のセパレート感を出すようにしています。


スピーカーユニット設計 前田 奈津子

──h.ear goに搭載されているスピーカーは既存の部品を使用しているのですか?

前田 奈津子[スピーカーユニット設計]

このh.ear go専用に新しくスピーカーユニットを開発しています。高域まで出せるハイレゾ製品となると、通常であればスーパートゥイーターを搭載することになりますが、この小さなサイズの中に収めるということを考え、あえて40kHzまで再生可能なフルレンジハイレゾスピーカーの開発にチャレンジすることにしました。ただ、そこにはさまざまな課題がありました。

──確かにフルレンジの小さなスピーカーで、低域から40kHzもの高域までをカバーするのは難しそうです。

前田 奈津子[スピーカーユニット設計]

ハイレゾ音源からの入力信号に合わせ振動板を正しく振動させることが重要なのですが、従来の振動板では分割モードなどの影響でなかなかうまくいきません。今回開発をしたフルレンジハイレゾスピーカーは、シミュレーションを有効活用して形状を理想的なものにし、材質にはソニー独自の軽量でかつ高剛性なMRC(発泡マイカ振動板)を採用することで高域までフラットな特性を実現しています。また、高い周波数は波長が短く、ほんのちょっとした筺体形状の違いで物理特性が大きく違ってしまいます。そのため、メカ設計と一緒に実験を繰り返しながら開発していきました。

──低域はどのようにしているのですか?

前田 奈津子[スピーカーユニット設計]

パッシブラジエーターを使って低域を出す構造になっています。今までのハイレゾスピーカーはパッシブラジエーターを片面に配置するものが多かったのですが、小型スピーカーでパッシブラジエーターを大振幅させ低音を出そうとすると、セット全体にも揺れが発生し、異音の原因となります。そこで前面・背面の両面にパッシブラジエーターを配置することで、安定させています。低域での大振幅を実現させるためには大きな駆動力が必要となるためスピーカーユニットに強力なネオジウムマグネットを採用しておりさらにパッシブラジエーター自身も大振幅しても異音が発生しないような特殊な構造にしているのがこのスピーカーの大きな特長となっています。