ソニーのワイヤレスコンポ「CAS-1」は、「CAS(Compact Audio System)」の名のとおり、非常にコンパクトなオーディオシステムだ。本来、パソコンデスクの上に設置して、ニアフィールドリスニングでの使用を主眼として開発された製品ではあるが、スタイリッシュでコンパクトなボディには、深夜に小音量で聴いても音のバランスを保つ「Low Volume Mode」や、ワンタッチでさまざまな機器とBluetooth接続できる手軽さを備えるなど、パソコンデスクだけでなく、実はリビングユースでも心ゆくまで音楽を楽しめる機能が搭載されている。ここでは、時間や場所に制約されることなく、家族の共有スペースであるリビングルームで、みんなが利用できる「CAS-1」の実力を徹底検証してみた。
コンパクトなボディはリビングルームでも
スタイリッシュにスッキリ置ける
仕事から帰ったら、お気に入りの音楽をゆっくりと楽しみながら1日の疲れをいやしたい。音楽ファンなら誰でもそう思うはずだ。しかし、夜間だと大音量で音を鳴らすわけにもいかず、かといって小音量では音のバランスが崩れて思うように音楽を堪能できない。
また、現代の住宅環境を考えると、専用のオーディオルームや自分だけの書斎が用意されているのはごくまれなはず。となると、リビングルームにオーディオ機器を設置するしかないのだが、家族の共有スペースとなるリビングルームには、極めて限られたスペースしかない場合が多く、かつテレビも大画面化。そうなると大きなスピーカーをドンと構える場所もない。結局、ノートパソコンの内蔵スピーカーから音を出したり、開放的な気分はあきらめて、ヘッドホンに手を伸ばしたりすることが多いのではないだろうか。
つまり、家族を持つ多くの音楽ファンは、仕事から帰ってきてからの貴重な夜の時間に、心ゆくまで音楽を楽しめていないのである。これは由々しき問題だ。
そこで、価格.comが注目したのが、ソニーのワイヤレスコンポ「CAS-1」。価格.comの「コンポ」カテゴリーにおいて、満足度ランキング1位(2016年5月23日現在)に支持される人気製品である。本来、パソコンデスク上に設置して使用するコンセプトが目立っている「CAS-1」だが、このコンパクトサイズと、小音量でも高音質を実現している点は、リビングルームで音楽を楽しむのにも大きな武器となるはず。というわけで、実際にリビングルームに設置して、「由々しき問題」を解決すべく、その実力のほどをじっくりと検証してみた。
検証を始める前に、価格.comの「CAS-1」ページに寄せられたユーザーレビューをチェックしてみよう。実際のユーザーは、どのように「CAS-1」を使い、どのような点を気に入っているのだろうか。
- コンポとスピーカーを合わせてもB5サイズの紙の上に収まる程度のコンパクトさです。 テレビ台の上に設置していますが、場所を取らないので気に入っています。また、高さが20cmほどしかないという点も購入の決め手となりました。
- コンパクトサイズこそが、「CAS-1」の最大の長所でしょう。ヘッドホンアンプも兼ねていることを考えればかなりのコンパクトさです。 また、シンプルなデザインのため、威圧感なく部屋に溶け込んでいます。
- 住宅環境の問題からスピーカーをあきらめていた人、小音量しか出せず音質に不満を持っている人、 よりよいスピーカーにしたいけどスペースがない人、スピーカーもヘッドホンも両方よく使う人、 スピーカーとアンプの組み合わせに悩みたくない人、そんな人にぜひおすすめしたいです。
- 省スペースや、音質、ニアフィールドに特化したデザイン、機能性、「SongPal」での操作性、 これらのバランスが高い次元で取れたデスクトップオーディオシステムだと思います。 設置スペースに制約があるけれど音質にもこだわりたい人、シーンによってスピーカーとヘッドホンを使い分けている人には特におすすめの製品です。
「テレビ台の上に設置していますが、場所をとらないので気に入っています」「よりよいスピーカーにしたいけどスペースがない人にぜひおすすめしたいです」などのコメントからもわかるように、価格.comユーザーの多くも、「CAS-1」のコンパクトさを評価しているようだ。
これなら、設置スペースに限りのあるリビングルームにも設置できそうだ。ということで、早速、セッティングを開始。まず、箱から取り出してみると、想像以上のコンパクトさに驚かされた。「CAS-1」のサイズは、コンポ部が約55(幅)×210(奥行)×178(高さ)mm、2つのスピーカーがそれぞれ約95(幅)×172(奥行)×178(高さ)mm(標準スパイク装着時)と、すべてを横に並べても幅30cmを超えないサイズなのである。これなら、シェルフやテレビ台、出窓などのちょっとしたスペースにも設置可能。「CAS-1」のために改めて場所を確保する必要はなさそうだ。
また、見た目はシンプルだが、大き目のボリュームつまみやロゴにはシルバーを、トゥイーターを囲うリングやヘッドホン端子部にはゴールドを配色するなど、落ち着いたマット仕上げの中にも配色のメリハリを付けているのがわかる。全体的にスタイリッシュで、飽きのこないデザインだと感じた。
「CAS-1」の最大の特長はそのコンパクトさにあるが、 いっぽうで、スピーカーがコンパクトだと、動かせる空気の量が少なくなるため、どうしても音の広がりに制約が出てしまう。 特にリビングルームでは、スピーカーの前に座って音楽としっかり向き合うというよりも、 ほかのことをしながらBGMとして音楽を楽しむことが多いので、音の広がりは欠かせない。 これに対応するため、「CAS-1」には標準のスピーカースパイクのほかに、仰角を8度上向きにできるスピーカースパイク(大)が付属している。 これを使うことで接地面の反射が減り、音が遠くまで届くので、リビングルームでも広がりのあるサウンドを楽しむことができるのだ。 実際にスピーカースパイク(大)をつけて試聴してみたところ、このコンパクトなスピーカーが鳴らしているとは思えないほど、 広がりと奥行きのあるサウンドをリビングルーム全体で体感することができた。
Bluetooth対応だからスマホに保存した音楽が
手軽に「高音質で」楽しめる、家族みんなで使える
リビングルームでの設置が完了したので、実際に音楽を楽しんでみることにした。 Bluetooth接続により、さまざまな機器と連携できる「CAS-1」だが、その使い勝手はどうなのだろうか。 まずは、価格.comの「CAS-1」ページに寄せられたユーザーレビューから、その使い勝手に関するコメントをチェックしてみよう。
- 音楽CDを聴いていたときはあまり興味を示さなかった妻が、 自分のスマホに保存した音楽を、Bluetoothで簡単に再生できると知って、興味を示すようになりました。
- 機能が絞られている分、本体での操作はシンプルです。 普段はUSB-B経由でパソコンと接続していますが、 パソコン操作ができない場所で音楽を聴きたい場合は、スマートフォン内に保存した音楽を、Bluetooth接続して聴いています。
- スマホ用操作アプリ「SongPal」は、機能自体はシンプルながらUSBメモリー内の楽曲の一覧表示や選曲が快適に行えます。 もちろん、Bluetoothのペアリングも手軽で便利ですね。
せっかくリビングルームにオーディオ機器を置くのだから、妻や子どもにもいい音で音楽を楽しんでほしいもの。 しかし設定や操作が面倒だとうまく使いこなせないかもしれない。その点、「CAS-1」は設定や操作が簡単で、誰でも手軽に音楽を楽しめるのも大きな特長だ。
注目したいのは、スマートフォンやタブレット端末などのデジタル機器とワイヤレス接続できるBluetoothに対応していること。しかも、スマートフォンやタブレット端末をかざすだけで接続(ペアリング)できるNFCポートを搭載している。「音楽CDを聴いていたときはあまり興味を示さなかった妻が、自分のスマホに保存した音楽を、Bluetoothで簡単に再生できると知って、興味を示すようになりました」といったコメントがあるように、細かい設定や操作が苦手な人でも簡単に音楽を再生できるのだ。音楽を楽しむ時間は家族でもそれぞれ。昼間にBGMとして利用したり、夕方は子どもが楽しんだりすることもあるだろう。また、家族それぞれが所有するハードウェアにお気に入りの楽曲を保存しているケースも多いので、「CAS-1」は今の時代にぴったりなのかもしれない。
「CAS-1」は、話題のハイレゾ音源にも対応している。 ソニー独自の高音質Bluetoothコーデック「LDAC」を採用しており、対応機器との間でなら、 標準的なBluetoothコーデックである「SBC」の約3倍の情報量によって、 最高96kHz/24bitの周波数/ビット数を維持したまま音声信号を伝送することが可能。 Bluetooth経由でありながら、ハイレゾ相当のクオリティで音楽を再生することができる。
また、「CAS-1」は、パソコンとUSBケーブルで接続することで、 パソコンから出力されるデジタル音声信号をアナログ信号に変換する「USB-DAC」機能も搭載。 パソコンに保存してあるハイレゾ音源はもちろん、オンラインゲームや動画配信サービスなどの非ハイレゾのサウンドも高音質で楽しむことができる。 なお、「CAS-1」が対応するハイレゾ音源のファイル形式は、DSD 2.8MHz(リニアPCM変換)のほか、WAV/AIFF/FLAC/ALACが最大192kHz/24bitと豊富。 できるだけ高音質で楽しみたい音楽ファンも納得の仕様となっている。
夜も安心、小音量時でも高音質を堪能できる
「Low Volume Mode」を試す
最後に、コンパクトな「CAS-1」に凝縮されたソニーならではの高音質技術についてチェックしていこう。 ここでも、まずは価格.comの「CAS-1」ページに寄せられた、音質に関するユーザーレビューをチェックしてみよう。
- 「Low Volume Mode」の効果が絶大で、どこまで音量を絞っても音のバランスが崩れることなくクリアで繊細な音を楽しめます。 この機能があるだけで買ってよかったと思えるほどです。
- かなり小さい音量で聴く場合も「Low Volume Mode」がとてもうまく働き、 ボーカルや演奏全体がきちんとバランスよく厚みを持って聴こえ、音場も大音量時そのままのコンパクト版という感じでとてもよいです。
- 音質はすばらしいのひと言です! クセがなくミュージックモニターに近い音質です。 それぞれの音の輪郭がはっきりしているので、ジャズやオーケストラも存分に楽しめますが、 ボーカルの声やソロパートの音などが入ってきた時のクッキリとした音質には非常に驚きました。
ユーザーのコメントで、特に目を引くのが、小音量で音楽を聴く時でも、サウンドのバランスを崩すことなく高音質で楽しめる「Low Volume Mode」だ。 一般的に、スピーカーから発せられる音は、音量が小さくなるにつれて高域と低域が聴こえにくくなる。 ボリュームを絞れば絞るほど、中域が強調されたような、バランスが崩れた音に聴こえるのはこれが原因だ。
そこでソニーは、ボリュームレベルに合わせて低域と高域を最適に補正し、音のバランスをフラットにする技術を開発。 ボリュームを絞っても臨場感を失わず、バランスよく楽しめるモードを生み出した。 それが「Low Volume Mode」だ。ユーザーのコメントを見ても、「『Low Volume Mode』の効果は絶大で、 どこまで音量を絞っても音のバランスが崩れることなく楽しめます」「小さい音量で聴く場合も『Low Volume Mode』がうまく働き、 バランスよく厚みを持って聴こえ、とてもよいです」など、その評価は高い。
この「Low Volume Mode」を実現しているのが、ソニー独自のデジタルアンプ「S-Master HX」だ。 さらに、ソニーの10年以上にわたるデジタルアンプ開発技術の成果を結集した新開発のICを使用し、 アンプ全体の仕様を細部まで見直すことで、徹底的にノイズを低減。 こうした技術によって、ハイレゾの圧倒的な情報量も余すことなく再現することに成功したという。 さらに、一般的なデジタルアンプは音量を下げる際、データの情報量を間引くことによって音量を下げる仕組みが採用されているが、 「CAS-1」には、情報量を間引かず、フレーム単位で縮小する「パルスハイトボリューム」が採用されている。これも小音量時の高音質を実現するための技術のひとつだ。
さらに、「CAS-1」はヘッドホンアンプ部にも力を入れており、ヘッドホンリスニングでも高音質で楽しむことが可能だ。「CAS-1」のスピーカーアンプ部とヘッドホンアンプ部は、基板そのものが分離されており、それぞれノイズの影響を受けないように設計されている。そのうえ、ポータブルヘッドホンアンプとして評価の高い「PHA-2」に採用されたメインデバイスを本機にも搭載しているというのだから、何とも贅沢だ。ゲイン切り替えスイッチを搭載するなど、本格的なヘッドホンアンプ顔負けの機能を備えており、単体のヘッドホンアンプと比べてもヒケを取らない仕上がりとなっている。
アンプやスピーカーのスペックを確認したところで、実際のサウンドはどうなのかをチェックしてみよう。 まずはパソコンに入っている女性ボーカルのハイレゾ音源を再生。一聴して、その定位のよさに驚かされた。 2つのスピーカーの間が狭いにもかかわらず、スピーカーの後ろにステージが大きく広がり、 女性ボーカリストがステージのど真ん中で歌っている姿がありありと浮かび上がってくる。 広い指向性を持つソフトドームトゥイーターのおかげかスイートスポットも広く、頭を横に振ってみても定位はビシっと決まったままだった。 もうひとつ感心したのが、思った以上に臨場感のある低域だ。 コンパクトな筐体を目の前にすると、どうしても「低域はいまひとつなのでは?」という先入観にとらわれてしまうが、 ウッドベースが特徴的なジャズの楽曲を鳴らしてみたところ、キレのある低域がスピーカーを置いた机いっぱいに大きく広がった。 クリアで解像感の高い中高域と低域がバランスよくマッチして、非常に聴きやすい。
続いて、同じジャズの楽曲を「Low Volume Mode」をオンにして聴いてみた。 徐々にボリュームを絞っても、低域や高域がやせることはなく、全体の厚みや臨場感にほとんど変化はない。 小音量でありながら、音の広がりが感じられる臨場感あふれるサウンドを楽しめるのには驚かされた。
最後に、ソニーのハイレゾ対応ヘッドホン「MDR-1A」を使ってヘッドホンアンプの実力を確かめてみた。 音数の多い交響曲のハイレゾ音源を聴いてみたが、クリアなうえ分解能が抜群で、 ヘッドホンでありながらひとつひとつの楽器がどこで鳴っているのかもわかるくらい広大なステージを描き出してくれる。 ヘッドホンを活用することの多い深夜だけでなく、いつでも聴きたくなるほど満足度の高い音であった。
まとめ
忙しいビジネスパーソンにとって、仕事から帰って寝るまでの夜の時間は貴重なくつろぎのひととき。 音楽ファンであれば、1日の疲れをいやすために、お気に入りの曲をリビングルームでゆっくり楽しみたいはずだ。 しかし、リビングルームで心ゆくまで音楽を楽しむためには、場所を取らないコンパクトさや、家族みんなで楽しめる使い勝手のよさ、 そして家族が寝静まった後でも高音質で楽しめる機能性が求められる。 どれも一筋縄ではいかないが、今回の検証を通じて、ソニーのワイヤレスコンポ「CAS-1」なら、これらすべてを高いレベルで実現できることがよくわかった。
コンパクトでスタイリッシュなボディに、ソニーならではの高音質テクノロジーが詰まっており、 特に小音量で聴いても低域と高域のバランスがしっかりと取れる「Low Volume Mode」の実力は想像以上。 これなら、家族や近所に気兼ねすることなく、深夜でも好きな音楽を存分に楽しめるのは間違いないだろう。 また、NFCポートを装備しており、機器の設定が苦手な家族でも簡単にスマートフォンやタブレット端末とBluetooth接続できるようになっているのも便利だ。 さり気なく設置できて、しかも簡単によい音が楽しめる「CAS-1」があれば、リビングルームに音楽があふれた、華やかな生活が始まることだろう。