楽器の一音一音が生命をもったように、生き生きと音楽を紡いでいく。そして、いつの間にか演奏家の感情の高揚とひとつになった自分がいる。そんな音楽リスニングの原点を求めて、ステレオデジタルアンプTA-DR1は誕生しました。何の飾りもない、伸び伸びとした素直な音。音楽と構えることなく向き合える、シンプルなデザインと上質な操作性。素材や回路ひとつひとつを地道に吟味していくTA-DR1の開発は、いわば私達自身が物づくりの原点へ立ち返る作業だったのかも知れません。
CDからスーパーオーディオCDへ。このデジタルオーディオの成熟も、TA-DR1開発の大きな契機となりました。ディスクに封じ込められた音楽の美しさを、どこまでも自然に、あくまでも緻密に描き出すこと。その実現に向けて、TA-DR1には、ソニーが独自に開発したフルデジタルアンプS-Masterの特長を生かしながら、さらに音質を磨き上げた新開発32ビットS-Master PROを搭載しました。S-Master技術は、デジタルオーディオ信号をスピーカーを駆動するためのパワーパルスへとダイレクトに変換する、いわばパワーD/Aコンバーター方式。従来のアナログアンプでは避けられなかったひずみの発生がなく、特性補正のためのフィードバック回路も原理的に必要としません。
TA-DR1の伸びやかで自然な音質は、パワーアンプの理想を追求したノンフィードバック構成のシンプルかつストレートな信号増幅によるものです。さらに、スピーカーからの逆起電力がフィードバック回路に混入して発生する音質への影響を抑えることができ、幾度もの試聴で厳選した大型トロイダル電源トランスの搭載と相まって、スピーカーの個性に左右されない安定した駆動力を獲得。小音量から大音量まで音の印象が変わることなく、とくに小音量再生での空気感や音場の描写力を大きく向上させています。
新開発の32ビットS-Master PROでは、32ビット処理の高精度なクリーンデータサイクルを搭載。入力段でのジッターの発生をさらに減少させ、ピュアな信号伝送を徹底しました。また、入力端子にはSCD-DR1(2004年秋発売予定)をはじめ、i.LINKデジタル出力を装備したプレーヤーとのデジタル接続ができる、i.LINKデジタル入力を装備。スーパーオーディオCDのDSDデータとCDのPCMデータの両方に対応し、フルデジタルアンプの能力を存分に生かしたより高純度な再生がお楽しみいただけます。さらに、同軸4系統、光1系統、バランスドデジタル1系統のデジタル入力に加え、アナログライン入力も1系統装備し、お手持ちのスーパーオーディオCDプレーヤーなどとのアナログ接続も可能です。
300W+300Wのステレオアンプ。そんな予備知識だけで、TA-DR1を初めてご覧になると、そのスマートなサイズに驚かれる方が多いことでしょう。この大出力化とコンパクト化の両立も、S-Master PROによるフルデジタル構成のメリットであり、リスニングルームにさり気なく置けるサイズにすることが、開発テーマのひとつでもありました。いつもの位置にボリュームを回して、プレイボタンを押す。演奏が始まった途端、アンプの存在は消えて、音楽のありのままの姿だけが空間に浮かび上がる。あなたと音楽の間で、TA-DR1がそんな存在になることを、私達は願っています。