良質な客室映像空間を提供する宿泊施設
HUBHUBプロジェクト
三井不動産(株)と三井不動産グループの(株)Share Tomorrowは移動式ユニットを活用することで遊休不動産にリアルに人々が集う場所を創出する「HUBHUB(ハブハブ)プロジェクト」を始動した。2021年11月22日には同プロジェクトの実証実験施設として、東京・中央区に「HUBHUB 日本橋人形町」をオープン。宿泊ユニット「GUEST ROOM」、パーティーユニット「BBQ KITCHEN」、プールユニット「BADE POOL」の3種類を組み合わせることで、泊まるだけではない “遊べる宿泊施設 ”をコンセプトにした都心部で唯一の移動型宿泊施設を展開する。さまざまな機能を持つ移動式ユニットを組み合わせ、場所や期間に応じた最適な “にぎわい拠点 ”を創出する HUBHUBプロジェクトは、周辺エリアの街に新たな魅力を付加する役割も果たそうとしている。大勢のゲストを呼んでの BBQなど、自宅で楽しむのは難しいけれど潜在的なニーズが高いコンテンツを生活圏内に設置することで、日常の生活に豊かさを提供する。
HOTERES 2022年2月4日号より転載
※掲載されておりますサービス内容などは、掲載日または更新日時点のものです
三井不動産グループ Share Tomorrowの佐藤貴幸氏(左)とパークホームズの池田裕史氏
HUBHUBプロジェクトは、三井不動産グループ内から幅広く事業アイデアを募集する事業提案制度「MAG!C(マジック)」から生まれた。ブランドの名称は、同じ目的を持つ仲間と一緒に利用することができる自宅以外の拠点(HUB)を提供することで、日常の暮らしをもっと豊かで快適なものにしていくサービスであることを表現している。
HUBHUB日本橋人形町の開業準備は、2020年4月からビジネスイノベーション推進部の主導で進められてきた。本来はインバウンド向けのホテルを想定してスタートしたプロジェクトだったが、同じタイミングで新型コロナウイルスのパンデミックが発生したこともあり、HUBHUBの方向性を模索するためのユーザーテストを重ねてきた。その結果、主に近隣の住民やオフィスワーカーに利用してもらえる施設としての可能性を追求することになった。
2021年11月22日に HUBHUBプロジェクトの実証実験施設第1号として開業し、予約ベースでの稼働率は 2021年 12月の時点で 90%超と順調な滑り出しを見せている。遊休地の有効活用事業に位置付けられる中、HUBHUB日本橋人形町はコインパーキングだった土地を活用した。今後も移動式ユニットを組み合わせる手法によって、一定の事業期間しか使うことのできない土地や狭小地など、一般的な不動産開発が困難な土地の活性化を図る。
宿泊ユニット「GUEST ROOM」、パーティーユニット「BBQ KITCHEN」、プールユニット「BADE POOL」の組み合わせにより、宿泊のためだけの施設ではなく、近隣の人々がホームパーティーやサウナ体験などを日常的に楽しむことのできる拠点を提供する。「友人が遊びに来たときには近くの HUBHUBでパーティーを開き、そのまま泊まってもらうといった使い方を提案しています」と (株)Share Tomorrow新規事業部プロジェクトリーダーの佐藤貴幸氏は言う。「例えば帰省した娘と HUBHUBで会って、宿泊もしてもらえるような施設というイメージを持っています。家に広いリビングがなくても、HUBHUBを活用することで生活の幅を広げることができる。そうした役割を果たしたいと考えています」
ユニットのタイプは3種類にとどまらず、HUBHUB日本橋人形町における実証実験の結果を受けて将来的に拠点を増やすにあたっては、例えばワークスペースとして利用できるユニットを導入するといった世界観も視野に入れていく。実際に HUBHUB日本橋人形町の開業後は、平日の昼と夜、休日の昼と夜とでは客層も利用目的も異なるという。
開業前に繰り返し行なってきた「どのようなユニットが求められているのか」についてのアンケート調査によってニーズが見えてきた。家の近所にBBQやサウナ、ボードゲームを気軽に楽しめるベストな場所を求める人々の気持ちに応える施設という方向性が正しかったことは、HUBHUB 日本橋人形町によって実証されつつある。「24時間営業のフィットネスジムはありますが、女性の場合、夜間は怖くてなかなか使えないといった不満もあるようです。そこで HUBHUBを友人同士で貸し切り、トレーナーを呼んでパーソナルトレーニングをしてもらうといった使い方も考えられると思います」と佐藤氏は将来的なビジョンを描く。
HUBHUBのユニットは、トレーラーハウスのデザインと製造を行なっている (株)パークホームズが提供している。「トレーラーハウスは輸送を前提に製造する必要があります」とパークホームズ東京本社営業本部部長の池田裕史氏は解説する。「HUBHUBのユニットも ISO規格のコンテナに載せて、鉄道貨物や船、トラックで国際輸送ができる設計になっているので、中国工場から出荷後、港から日本各地の内陸まで問題なく運ぶことができます」
コンテナ規格の枠内で三井不動産グループが求めるグレード感を表現していく点が、デザイン面における最大のチャレンジとなった。重量鉄骨造のコンテナモデルという限られた空間を、質の高い空間に仕立てるために、パークホームズはデザイナーとともに何度も図面を描き直しながら試行錯誤を重ねた。その結果、コンパクトでありながらトレンドを押さえたデザインでグレード感を漂わせる施設を生み出すことに成功している。
HUBHUB日本橋人形町の GUEST ROOMはバンクベッドを採用することで、コンパクトでありながらも居住性を高めた定員2名の客室を2室用意。貸し切りで最大4名の利用が可能となっている。ベッドはシモンズ製のマットレスを採用し、快適な睡眠につなげる。機能性の高いパウダールームもある。
ソニーの法人向け4Kテレビブラビアを備えたソファスペースも設置。ソニーでは法人向けブラビア(4Kテレビ)の画面を通じて、宿泊施設と街をつなぐ「まちじゅうホテル」という施策を実施している。今回の HUBHUBプロジェクトがまちじゅうホテルの構想と調和したことで、ブラビアの価値や取り組みが生かされるシーンが生まれた。
具体的にはブラビアのインターネット接続で動画配信サービスを視聴できるほか、将来的にはおすすめの飲食店や地域のイベントカレンダーなど、周辺のエリア情報を客室のテレビで観られる機能と連携し、その土地に応じた情報発信拠点として、HUBの機能に貢献していく計画だ。
BBQ KITCHENは、天候に左右されずにBBQやパーティーを気軽に楽しむことができる。デッキには大型のガスBBQグリルを備え、ゲストは無料で食材、飲料を持ち込むことができるほか、デリバリーも自由に利用できる。さらに、事前予約制のBBQ食材のデリバリーや出張シェフの手配などのサービスも予定している。
本格的なフィンランド式ヒーティングルームを設けたBADE POOLは、家族やグループで貸し切り利用ができる。ヒーティングルームは天窓付きの檜張りで、フィンランドの HALVIA社製のストーブに白樺エキスを抽出したヴィヒタ水を用いたセルフロウリュも楽しめる。プールにはチラー(冷却水循環装置)を完備し、1年中安定した水温で利用できる。
HUBHUB日本橋人形町で都市型のにぎわい拠点づくりの成功事例を創り上げた後、HUBHUBプロジェクトは引き続き都市部における拠点づくりを進めていくことになる。その先には、郊外型の実証実験の可能性も見えてくるかもしれない。街に新たな魅力を与え、人々の暮らしをより豊かなものにしていく HUBHUBプロジェクトは、日常のライフスタイルが楽しく変化した未来を実現していきそうだ。
HUBHUBプロジェクトにおいて都市型のにぎわいを生み出すにあたっては、新たな経済活性化の仕組みとして「人」と「情報」をつなぐことが重要なポイントとなる。その実現を支える一つのポイントがデジタルツールの活用。ブラビアの表現力と連携する複数のソリューションによる機能の充実により HUBHUBプロジェクトの成功をサポートしていくことになるだろう。