■業種:教育機関 ■用途:電子黒板
教育とICT 2021年秋号より転載
北海道岩見沢市は空知地方の中核都市で、札幌から東に32キロに位置し、人口は約7万8000人。市内には23の小・中学校があり、約5200人の児童・生徒が学んでいる。
岩見沢市教育委員会はGIGAスクール構想に基づき、小・中学校での1人1台端末の整備を2020年度までに完了。これに合わせて2021年8月までに、すべての小・中学校の普通教室、特別教室に、ソニーの4K大型提示装置(65V型)を計273台導入した。
導入の目的について、「1人1台端末による“学び”の効果をさらに高めることに加え、老朽化した提示装置を一新するのが狙いでした」と、同市教育委員会 学校教育課 総務係 主事の髙橋一起氏は説明する。
同教育委員会は、2009年度のスクール・ニューディール構想に沿って、すべての小・中学校に42インチの提示装置を導入していた。しかし、「導入から10年余りが経過して故障やトラブルが頻発するとともに、そもそも『42インチでは、画面が小さくて見にくい』という教育現場からの声があったことから、入れ替えることにしたのです」と、髙橋氏は振り返る。
数ある選択肢の中からソニーの4K大型提示装置を選んだのは、画面が大きく、教室の後ろにいる児童・生徒にもはっきりと見えること。さらに、高精細な4K画面に表示されるコンテンツにリアリティがあることや、輝度が高く、明るい場所で表示しても見やすいことなどを評価したからだ。「以前の提示装置は画面が暗く、使用する際にはカーテンを閉めて教室を暗くしなければなりませんでした。その点、ソニーの大型提示装置の画面はとても明るいので、カーテンと窓を開けっ放しにしても使用できます。コロナ対策として窓を開放しておかなければならない教室に置くのには最適だと思いました」(髙橋氏)
2020年度末に、先行して岩見沢市立南小学校に2台を導入して試してもらい、その感想をもとに正式導入を決定。2021年7〜8月の夏休み期間中に市内の全小・中学校への設置を完了し、夏休み明けから利用できるようにした。
先行導入にかかわった南小学校 教諭の黒坂俊介氏は、「とにかく画面の大きさ、映し出される画像や映像の美しさに感動しました。これなら子どもたちも喜んでくれるのではないかと感じたのが第一印象です」と語る。
実際に子どもたちに見せたところ、「大画面で迫力満点」「画面が大きいのに厚さは薄い」「画面の周りの枠が細いので、表示が見やすい」などと驚き、興奮してはしゃぐ児童もいた。「これなら興味を持って学習に臨んでくれるはずだと、すぐに確信しました」(黒坂氏)
正式導入からまだ日が浅いものの、黒坂氏はソニーの4K大型提示装置を使った授業の効果に手応えを感じている。以前の装置と比べて、まず決定的に違うのは、画面が大きくなり、後ろの児童でも表示内容が見やすくなったことだ。「すべての子どもが疎外感なく授業に参加できるので、教室の一体感が強まりました。1人1台端末が導入されて以来、画面が見えないと、つい手元の端末を見て、うつむいてしまう子もいたのですが、ソニーの4K大型提示装置に入れ替えてからは、ほぼ全員が前を向いて授業に参加するようになりました」(黒坂氏)
個別の教科においても、4K大型提示装置ならではのメリットをいくつも感じていると黒坂氏は語る。
たとえば国語。黒坂氏の授業では、グループごとに物語文の山場を探し、線を引かせる共同作業を行っている。「その部分のページを画面に表示すると、引かれた細い線もはっきりと見えるので、グループごとの違いが比較しやすくなりました」と、4Kブラビアによる高精細表示の効果を語る。
鮮明に見えることの効果が大きく発揮される授業の一つが理科だ。実物投影機を使って花粉の画像を4K大型提示装置に表示したところ、顕微鏡を使わなくても花粉の緻密で繊細な形状をはっきりと確認することができたという。
また社会の授業では、コロナの影響でリアルには実施できない社会科見学を、訪問先と教室をWeb会議システムでつなぐオンライン方式で行っている。
「高画質で鮮明な大画面なので、まるでその場にいるかのような臨場感を体験できますし、音量が大きく、音質もいいので、相手の言葉や周りの音もはっきりと聞こえます。子どもたちも『まるで現場にいるみたい』と、非常に喜んでくれています」と黒坂氏は語る。
このほか、子どもたちが自分の端末で調べた成果や考え方を、大画面に並べて表示できるのも、非常に大きなメリットだと黒坂氏は指摘する。
「発表したいことをいつでも簡単に表示できるので、授業中に『画面に映してもいいですか?』と自発的に申し出る子も増えてきました。意識せずに使える道具として使いこなし、積極性を身につけてほしいと思います」
同校では、校内放送や他校との遠隔交流授業、地域とのコミュニケーションなどにも、4K大型提示装置を活用している。また、それほど重くなく、移動させるのも比較的簡単なので、保護者の集まりの際などには体育館に設置し、インフォメーションボードとして活用しているという。
今後の大型提示装置の活用について黒坂氏は、「岩見沢市では現在、学習者用デジタル教科書の導入を検討しており、それを視野に入れながら1人1台端末と大型提示装置との連携を図り、教育の可能性を広げていきたいと考えています」と語る。
同市教育委員会ではデジタル教科書の導入だけでなく、オンライン授業や市内の学校同士による遠隔交流授業の実施など、大型提示装置の活用の幅をさらに広げていくことを検討中だ。髙橋氏は、「ICTは先生よりも、むしろ子どもたちに馴染みのある文化なので、子どもたちからも学びながら、学習効果を高めるための用途を考えていきたい」と今後を見据えている。
「映像」による教育効果を実感
子どもたちの発信力を高めたい
2020年度に1人1台端末が実現したことで、本校の授業もダイナミックになりました。しかし、端末でまとめた内容を発表する提示装置の画面が小さく、教室の後方の児童には見えにくいのが難点でした。画面が大きく、鮮明に映し出される4K大型提示装置が全教室に設置されたことで、ICT活用教育に必要なツールがまた1つそろったと満足しています。
導入後、先生方にアンケートを取ったところ、全員が「導入してよかった」と回答しました。かつての42インチの提示装置と比べて、子どもたちの授業に臨む雰囲気や集中度が明らかに違ってきたと聞いています。
実際、5年生の社会の授業で、サケの定置網漁の動画を映し出しているのを見たことがありますが、まるでその場にいるような、臨場感たっぷりの映像と音を体験できました。言葉だけではイメージしにくいことを映像で見せることの教育効果は大きいと実感しています。
今後は、地域コミュニティや他校との遠隔交流にも活用し、子どもたちの発信力を高めていきたいと考えています。
岩見沢市立南小学校
校長 菅原 伸介 氏