京都府宮津市字鶴賀2059番地の1
TEL:0772-22-2157(代)
日経ヘルスケア12月号より転載
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医療法人財団 宮津康生会
宮津武田病院 病院経営管理士 事務長
岸本 真氏
京都府下で8病院を展開する武田病院グループの一つである医療法人財団 宮津康生会 宮津武田病院では、ソニーの4KブラビアとVLOGCAMを活用して、認知症外来における病院間を結んだオンライン診療を始めた。その様子をレポートするとともに、導入の目的や効果、ソニーの機器を選択した理由などについて、同病院・事務長の岸本真氏に話を聞いた。
京都府下で医療・保健・福祉(介護)の各事業を総合的に展開している武田病院グループの中で、府の北部地域に位置するのが宮津武田病院だ。宮津市の中心部、宮津湾に近接した国道沿いにある同病院は、市内で唯一の病院として病床数65床を備え、グループ病院間で連携をとりながら、人口減少や高齢化が進む地域住民の健康を支えている。
同病院は京都市内から電車で2時間半近くかかる位置にあるため、京都市内のグループ病院から派遣される医師の時間的なロスや労力の負担が大きな課題だった。また、冬場は荒天で電車が止まり、医師が来られなくなることもあった。
そこで同病院では、2021年の春からソニーの機器を活用して病院間をつなぐ「オンライン診療」を始めた。在宅の患者と医師とをつなぐオンライン診療はすでに導入していたが、グループ病院間をつなぐオンライン診療は初の試みである。
実施しているのは老年内科の認知症・もの忘れ外来。月に1回、京都市南区にある同じグループの医道会 十条武田リハビリテーション病院とオンラインでつなぎ、診察を行っている。それぞれの診察室にあるのは、PCと接続したソニーの4Kブラビア(43V型)。その画面の下には動画撮影に特化したソニーのカメラ、VLOGCAMを設置。双方をライトフレッシュボイスでつなぎ、医師と患者がお互いに相手を画面で確認し、話し合いながら診療できるようにしたのだ。
この「オンライン診療」を提案したのは、同外来を担当する医師の濱川慶之氏だ。同氏は十条武田リハビリテーション病院に勤務し、以前は週1回、患者が落ち着いてからは月2回ほど宮津武田病院まで足を運んでいた。
宮津武田病院の事務長 岸本真氏は、「以前より濱川医師から、ITの力で通勤にかかる労力を軽減し、その分、より多くの患者さんを診たいという話がありました。そこへ新型コロナウイルス感染症の影響も重なり、月2回のうち1回をオンライン診療とすることにしました」と語る。
ソニーの機器を選択した理由について岸本氏は、「患部などを確認する必要があるため、医療現場で使うモニターにはとりわけ高画質であることが求められます。すでにグループ本部では会議室でソニーの4Kブラビアを活用しており、その画質に対する高い評価が導入につながりました」と話す。また、明るい部屋でも見やすい画面や、相手の声をクリアに聞き取れる音質の良さもブラビアを採用するポイントとなった。
撮影用のカメラ「VLOGCAM ZV-1」は、発売後すぐに購入。手術の処置手順を撮影し、動画で記録を残したり、マニュアル作りなどに活用したりしていた。コンパクトなボディで取り回しが良く、三脚はシューティンググリップとしても使えるため、手元を撮影する際などさまざまな用途で重宝しているという。
実際にオンライン診療の様子を見てみよう。
付き添いの家族に促されると、患者は診察室にあるソニーの4KブラビアとVLOGCAMの前に置かれた椅子に座る。「おはようございます。お元気にされていましたか」
画面の向こうから濱川医師がにこやかに挨拶し、いつもの診察と同じように、自然と会話が始まる。「食欲はどうですか」「血圧はいかがですか」など、濱川医師は普段どおりに問診を行っていく。
しばらくすると、濱川医師は人差し指と小指でキツネの形をつくり、「この形、できますか。これが何の動物に見えますか」と画面を通して患者に質問。患者は画面を確認すると指で同じ形をつくり、「キツネですか」と和やかな雰囲気のなかで答えていた
濱川医師は問診を行いながら、PCの電子カルテに所見や薬の処方などを入力していく。そのデータはグループ病院間で共有され、採血などの検査オーダーがあれば、宮津武田病院側で検査を実施し、結果を濱川医師にフィードバックする。
岸本氏は、「今回のオンライン診療を導入して一番よかったのは、高齢の患者さんが『ふつう』に診察室に入り、目の前に先生がいるように『ふつう』に会話をしていることです」と、その効果を話す。認知症・物忘れ外来の診療では患者との対話やコミュニケーションが重要になる。ブラビアとVLOGCAMによる明るく鮮明な画像と聞き取りやすい音質は、患者に大きな安心感を与え、円滑な診療を可能にしているという。
岸本氏は、病院運営という視点から「今回のオンライン診療の導入は、過疎地域や立地的に不便な地域における医療人材の確保という点でもメリットがあります」と語る。また、機器の導入コストが低く、ランニングコストもほとんどかからないため、費用対効果が高いことも見逃せないポイントだという。
今後の展開について同病院では、皮膚科など外形的な患部から判断する分野でも、4K高画質のブラビアと機能性の高いVLOGCAMを活用できるのではないかと考えている。
また現在は、宮津武田病院と十条武田リハビリテーション病院をつないで認知症・物忘れ外来のオンライン診療を行なっているが、同じグループの本院・康生会 武田病院と医仁会武田総合病院にも同様のシステムが整備されている。医療人材の確保、安定的な診療の実現に向けて、さらにこれらの病院との連携も図っていきたいという。
「医師だけでなく、絶対数の少ない言語聴覚士や健康体操やリハビリなどの指導を行う健康運動指導士などの専門職にもオンラインで活躍してもらうことが考えられます」と、岸本氏は今後の可能性を示唆した。
医療現場の声
十条武田リハビリテーション病院
医師 濱川 慶之氏
片道2時間半かかる通勤から解放されて、心身ともに負担が軽減しました。また、診察ではコミュニケーションが大切なので、導入前は画像が鮮明に見えるか心配でしたが、モニターとカメラの性能が良くて臨場感があり、患者さんの様子や声をしっかりと確認できるので、とても満足しています。
宮津武田病院
看護師 横川 美香氏
患者さんも付き添いの方も高齢の方が多いので、導入前はオンラインでのやりとりについて心配していました。しかし使ってみると、明るい部屋でも画面が見やすく、先生の声もよく聞こえるので診察はスムーズに進んでいます。患者さんも先生の顔がきれいに見えるので安心しています。