事例紹介
JCOM株式会社 様
ケーブルテレビ、IPリニアを手がける企業として、業界を牽引するJCOM株式会社。数多く手がけるオリジナル番組の中でも人気の全国高等学校野球選手権大会地方大会の中継において、2023年、Cinema Lineカメラ『FR7』を導入しました。高い映像クオリティを維持しながら、従来よりも制作費の有効活用を目指した経緯、導入で生まれたメリットについて、技術統括グループ 制作技術チームの鈴木 照彦 様にお話を伺いました。
ー制作費の使い方を見直し、リモートカメラを導入
近年、制作費の使い方がケーブルテレビ業界共通の課題になっています。リモートカメラはコスト抑制でのメリットが大きく、業界内で活躍の場が広がっています。当社も同様です。野球以外の中継では既にリモートカメラを導入しており、使い勝手のノウハウや確かな導入実績がありましたので、私が担当する夏の高校野球中継でもその効果は生かせるだろうと考えました。
夏の高校野球中継は従来、複数の球場で長期間に渡りカメラマンが常に張り付いてオペレーションする運用になっており、この状況を改善することで制作費が抑制できると考えました。特に、バックスクリーン側からピッチングやバッティングを捉えるカメラ(PC間カメラ)のリモート化が、その解決策になると判断しました。
固定カメラを置く案もありますが、野球場という広いスペースで展開するため、画角がずれた際にカメラアシスタントが都度直す必要が生じます。リモートカメラなら、そうした心配はありませんが、一般的なリモートカメラでは画質の低下が懸念され、搭載レンズのズーム倍率も足りず、従来のクオリティを維持できないと考えました。この位置から狙う映像は、野球中継においてメインの役割を果たすベースの画を担うため、クオリティの妥協ができませんでした。
ー高画質とレンズ交換式が『FR7』の魅力
『FR7』について、ソニーから実機を用いたご紹介を受けた際に、フルサイズセンサーによる映像のクリアさと素晴らしいレンズ性能がもたらす映像のキレの良さを体感しました。また、レンズ交換式なので望遠レンズに交換できる点が導入を後押しました。多くの要望を満たしてくれるカメラで、野球中継におけるメインカメラを十分に任せられると感じました。
ー導入前の不安や疑問をすべて払拭
『FR7』は美しいぼけ味が得られるのが大きな特長ですが、私たちケーブルテレビ業界は画全体にフォーカスが合うことを望みます。それに関しては、絞り値にさえ気をつければ運用できるものでした。
また、野球場のピッチング風景を撮影する際には、バックスクリーンまでケーブルを300mほど引かなければなりません。この点は当社が独自に開発を進めていた光伝送装置を組み合わせることで解決できると判断し、『FR7』の導入を決断しました。
ー信頼性と機能性で、導入の社内手続きはスムーズに進展
リモートカメラは既に複数台の導入実績があり、社内でも有用性が認知されていました。また、以前からソニー製品への信頼性を高く評価していました。今回の『FR7』導入は、目的がはっきりとしていましたし、高画質であることや望遠レンズに対応でき必要な画角までズームできることをアピールすることで社内での購入検討がスムーズに進展しました。
ー効率的にカメラを運用しながらもクオリティの高い映像配信が可能
夏の高校野球中継で運用した際には、『FR7』に『FE 70-200mm F2.8 GM OSS』と2X テレコンバーター『SEL20TC』を取り付け、バックスクリーンのセンター付近に設置しました。PC間用に『FR7』1台、打者・走者用の有人カメラを1台にすることで、従来と同様のシーンを、オペレーターを含めて3人から2人の体制で撮影することが可能になりました。
『FR7』の導入によって効率的な体制を組むことができ、制作費の抑制をしつつも、品質の良い映像クオリティを手に入れました。システムカメラと混在した中継環境でしたが、階調表現や色味も問題ありませんでした。それらのメリットが多くありながらも、トラブルなど一切なく、これまでの生中継と同様に届けられています。放送番組においては、「当たり前」であることは重要です。機材もスタッフも少ない環境で、従来と遜色ない映像を担保できていることが、社内でも高く評価されています。
カメラオペレーションの面でも滞りなく取り入れることができています。以前からリモートコントローラー『RM-IP500』を使用しており、『FR7』特有の機能を覚えるだけで、すんなりと馴染めました。
ー高い感度性能やレンズ内手ブレ補正などすぐれた機能に納得
フルサイズセンサーならではの明るさは野球中継において便利なものでした。感度性能に頼ることで絞り込みによる暗さを補い、希望通りのパンフォーカスを実現できています。
さらに、レンズ内手ブレ補正機構が効果的に作用してくれたのではないかと感じています。現場が野外のため、風の影響を受けやすい条件下での望遠撮影だったのですが、揺れをほぼ感じることはありませんでした。優秀なカメラだと感じています。
ー『FR7』導入で撮影環境が改善
野球中継は、炎天下の球場で長時間の放送体制が求められます。さらに、試合が何日も続くことから、スタッフの疲労が蓄積していきます。『FR7』を取り入れた運用は、スタッフの休憩やローテーションに余裕が生まれ、就業環境の向上にも役立ちました。その結果、より質の高い映像表現を考えるなど、スタッフの集中力や気力の維持にもなっていると思います。
ー今後、活躍の場が大きく広がる『FR7』
今回は『FR7』を4台購入しました。夏の高校野球中継では千葉大会と茨城大会に2台配置しました。これをテストケースとし、今後検証を行い、関西エリアでも積極的に運用していきたいと思っています。このカメラの運用によって、中継体制の「幅」が今まで以上に増えていくと感じています。
他の番組ジャンルにおいても、『FR7』の豊かな表現力や高画質といった特長を発揮する花火大会、MC席と背景の山車の姿を立体的に映し出す地域の祭りやイベントなどの実況中継、ぼけ味を生かした対談、さらには、新たな表現方法を採り入れたニュース番組などにも活用領域は広がると思います。『FR7』はテレビ放送を変える力を持っていると思いますし、私たちにも、従来の概念や手法にとらわれることなく、もっと魅力のある新しいテレビの表現方法を創造したいという意欲がわいています。
総合的に考えて、『FR7』は満足度の高いカメラだと感じています。今後、どんな撮影で力を発揮してくれるのか、大きな希望を抱かせてくれます。ケーブルテレビ業界に一石を投じてくれるのはもちろん、これまでに経験したことのない撮影にも、意欲的にチャレンジしてみたいと思わせてくれる、さまざまな可能性を持ち合わせたカメラです。
使用機材紹介
JCOM株式会社
※本ページ内の記事・画像は2023年10月に行った取材を基に作成しています。
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