映像界に多数のクリエイターを輩出し続ける日本大学 芸術学部。その中でも、最新のトレンドに敏感に反応し、映像の「今」を絶えず追究しているのが放送学科です。日本には2つの大学にしかない放送学科ならではの学習プログラムの教材として、Cinema Line カメラを導入。学生の成長や希望に合わせて、『FX6』と『FX30』を使い分けています。教育の現場で使われている実例を、放送学科主任 学務担当教授 安部 裕 様、技術員 安住 仁吾 様に伺いました。
ーテレビ、ラジオ好きな学生が専門技術を習得
安部:本学の放送学科は「テレビ制作」「ラジオ制作」「映像技術」「音響技術」「CM」「脚本」「アナウンス」といった7つの大きな柱を設けています。多種多様な「発信」分野に特化し、学生が関心にあわせてコースを選択し、それぞれ専門的な知識や技術を学ぶことができます。また、入学時からテレビやラジオが好きな学生が多く、入学前からよく研究している人が多い印象です。
安住:卒業生で多い就職先は、プロダクションです。テレビ番組制作のほか、カメラマン、照明、ディレクター、脚本家、広告企画など、幅広い職種を希望しています。4年間でやりたいことが変わる学生も多く、1、2年生で基礎をじっくり学び、その間に実際に自分が仕事としてどういうポジショニングになりたいのかを絞り込むイメージです。
ー流行の変化が学生の傾向に影響する
安住:放送学科では現在、Cinema Line カメラは『FX6』と『FX30』の2種類を使っています。以前までは、担ぐタイプのカメラ(ショルダーカムコーダー)を多用していた時期もありましたが、2014年頃から被写界深度の浅いシネマライクな表現も増えてきているように感じます。そのような流れがますます加速しているなかで、使い勝手、軽量、映りなどを勘案して、『FX6』を導入しました。
また、ここ数年でミラーレスカメラを使ったシネマムービーも流行しており、学生の傾向にも変化が見られました。学生自身がαシリーズを所有しているケースが増え、自分で映像作品を撮っている学生も多くいます。『FX30』は、それらと同じ操作感のため、使い慣れることが早く、また、Eマウントなので私物レンズも使えるというメリットがありました。学生が個人的に使っているレンズなので、画角なども理解しています。そのような背景があり、良いタイミングで発売されたため、『FX30』の導入に至りました。『FX6』よりも小型かつ軽量であることを生かした撮影が可能ですので、日々の課題などをこなす際にも活躍しています。
機材に詳しかったり撮影現場の情報を聞いたりした当時の学生からは、早くソニーのCinema Line カメラを導入してほしいという声があったほどです。特にテレビドラマやCMを撮影する際に、いわゆる格好のよい映像が撮れるカメラとしてソニーのCinema Line カメラが候補に挙がるため、現在も導入を続けています。卒業制作でも、最近多いシネマライクな撮影で作品を作りたいという希望が以前より増えているように感じます。
ー信頼性の高いオートフォーカスと追従性能
安住:『FX6』、『FX30』ともに、オートフォーカス性能が格段に向上していると思います。カメラのオートフォーカス性能が優れている点は、学生にとっては結果が出やすいので喜ばしいことです。画角の中に複数人いても、タッチフォーカスで被写体を選べば、問題なく追従し続けるので、映像作品のジャンルに関わらず、知識や技術を身につけた4年生の卒業制作でも率先して使っています。それほどオートフォーカス性能は信頼性が高いと思います。
また、オートフォーカスの追従の粘りや切り替えの速度などを調整でき、より自然なフォーカス送りがしやすいと思います。マニュアルフォーカスのシネマレンズなども学生に人気ですが、ソニー純正のEマウントレンズを使うことで、優れたオートフォーカス性能が手に入るわけですから、率先して純正レンズを使っています。
安部:放送学科では、むしろオートフォーカス性能を使わないと撮影が難しい場面が多いように思います。実習では、学生はまずは画角を見極めることに集中します。セッティングしてカメラを三脚につけるのが精いっぱいな学生に、フォーカスを追うことまで課すと、ハードルが上がってしまいます。
ー高画質であることは映像作品の向上につながる
安住:画質に関しては、色々なメーカーの機材を検討しましたが、Cinema Line カメラの画質の良さは秀でています。特に『FX6』に関しては有効約1026万画素の裏面照射型のフルサイズセンサーで、15+ストップというかなり広いダイナミックレンジなため、高いクオリティーの映像が手に入ります。現状、実習や卒業制作はHD画質での撮影をすることが多いのですが、4Kで撮影する場合にも基本的には60pです。テレビドラマの実習で4Kでの撮影をする場合も最終的にHDにダウンコンバートしますが、以前より数段クオリティーが上がっているように感じます。CM専攻が使う場合は30pの設定で使っていますが、いずれの場合も画質はやはりきれいです。
グレーディングなどの勉強をするのにもS-Log3を使うことで、編集の勉強にも役立てることができます。それほど編集に時間をとれない授業内容の場合には、課題を出すときにS-Cinetoneで統一して撮影するように指示しています。そうすることで、つなぎ合わせたときに一定の統一感を得ることができ、バランスの整った映像作品を生み出せます。
『FX30』は、現時点ではフォロー用という位置づけですが、CMなどの短編の制作は『FX30』のみで課題をこなしている学生もいます。ボディが小さいとはいえ、センサーサイズはスーパー35mmですので、画質面において問題はありません。音声入力に関しても、XLRハンドルユニットを装着すれば、グリップ部にXLR端子が着いているので、本格的な音声入力ができます。カメラで実現できることは、上位モデルと比べてもそれほど遜色はないため、フレキシブルな対応を求められる現場などで率先して使っています。放熱性などもミラーレスカメラよりも優れているので、野外撮影でのアドバンテージがあります。今後は難易度の高い卒業制作の作品づくりにも使えるのではないかと思っています。
ー小型であることを生かせる高感度性能
安住:通常のナイトシーン撮影において、昔の感度性能が低いカメラの場合、人物に照明を当ててベースを作り、そこから背景に対してさらに照明を当てていくようなことを繰り返します。その分、機材も人員も必要になるわけですから大変でした。
高感度性能の高い『FX6』の場合は、例えば現場にある街灯などの地明かりだけでもあらかた画ができてしまいます。そこから最低限の照明で補うという手法がとれます。カメラが小さくても、結局色々と機材を持っていかなくてはいけなくなると、あまり意味がありません。しかしこのカメラの場合には、ボディサイズのメリットのみならず、生かせる性能があります。また、ノイズ処理がとても良いので、解像感のあるクリアな映像を学生が体験できるのはいいですね。
ー『FX6』と『FX30』のクオリティーは学生の向上心を育む
安部:教えた通りとはいかずとも、自ら試行錯誤して撮って、一定のクオリティーに達することで、学生は手ごたえを得やすく、やっていて面白いと思います。自分たちの限られた知識でも、さながらプロが撮ったかのように見えるので、モチベーションも上がるのだと思います。学生なりに努力した結果が、作品の中に反映されやすい教材という観点からみても、放送学科の教材として『FX6』と『FX30』はいいカメラだと思います。
安住:学生は今の流行の映像表現にとても敏感です。現に、被写界深度が浅いシネマライクな表現に注目が集まっています。そういった映像が撮れるCinema Line カメラを触る学生たちは、とても生き生きしています。自分たちが撮りたいものを撮れる実感を積み重ねることで、意欲も作品の完成度もどんどん上がるため、向上心も育まれます。
ー就職後の現場を見据えた制作プロセスが味わえる
最近では、少人数で映像制作を行わなくてはいけないケースが増えています。それは学生でもプロの現場でも変わりません。映像の場合、撮影する際にカメラ本体だけではなく、三脚などの周辺機器も持ち込むことが多く、小型かつ軽量なCinema Line カメラはそのようなシーンに非常に重宝します。また、本学で触れ慣れている機材が、テレビ局やプロダクションなどのプロのシーンでも使われていることを学生が知ることで、将来への自信にもつながります。総じて、撮り手の想像力を掻き立ててくれるカメラがCinema Line カメラなのだと思います。
使用機材紹介
※本ページ内の記事・画像は2024年2月に行った取材を基に作成しています。
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