日本大学 芸術学部は、国内初の芸術総合学部として誕生して以来、100年以上にわたって多くの映像制作の関係者を輩出してきました。映画学科では、実習用にCinema Line カメラ『FX9』、『FX6』、『FX30』を導入。映画制作の実習のために導入した目的や背景について、映画学科技術員 海部 光一 様にお話を伺いました。
ー映画撮影の基盤を固める土台作りに重点
映画学科は、映像表現・理論、監督、撮影・録音、演技の4コースに分かれ、それぞれに独自のカリキュラムがあり、専門性のある各分野でスペシャリストを目指す学科です。個性豊かな学生が多く、みんな映画が好きで入学してきますが、カメラに触れたことのある学生は決して多くありません。映画学科の中でも「撮影・録音コース」という専攻では、表現、映像技術の基礎、カメラの仕組み、レンズなどの光学的技術論などを学ぶことができ、「撮影者としての土台作り」にかなり重点をおいて教えています。
ースキルに合わせて選択できる幅広いラインアップ
Cinema Line カメラの中で最初に導入したモデルは、当時ソニーから発売して間もない『FX9』でした。性能の高さには満足していましたが、カメラに親しみの少ない学生には、さらに前段のカメラそのものの仕組みや扱い方を学ぶことが必要なため、操作性はそのままによりサイズが小さく取り回しのしやすいカメラから慣れた方が良いと考え、『FX6』も導入することにしました。『FX6』は小型にも関わらず、物理ボタンが側面にしっかりとあるため、直感的に操作でき、また撮影の技術的指導にも非常に向いています。『FX9』の操作感もそのまま引き継いでいるので、『FX9』へ移行しても学生が理解しやすいというメリットもあります。
『FX30』も『FX6』と同じような経緯で導入していますが、カメラをより多くの学生に行き渡らせるための意味合いが大きいです。映画なので、レンズ交換ができることが大前提ですが、レンズに関しても、Cinema Line上位機種と共通のEマウントを採用しているため、交換レンズを共用できます。映画制作用のカメラに馴染みが浅い学生でも、ミラーレスカメラであるαシリーズに近い雰囲気の『FX30』であれば親近感が湧きやすく、とっつきやすいため、今後も増やしていく予定です。
また、『FX6』『FX9』と『FX30』ではセンサーのサイズが異なりますが、スーパー35mmセンサー搭載の『FX30』はそれほど被写界深度が浅くならないので、1年生を中心にまだカメラに慣れていない学生にはピントが合わせやすいと思います。ただ、これからはフルサイズセンサーが主力になっていく傾向があるため、学生のときから『FX6』『FX9』も使える環境は安心感があると思います。本学としては、今はまだ機材の移行期にあたるため、そのあたりの様子を見て導入の方向性を決めていきたいです。
ー「Cine EIモード」でフィルムカメラのようにシンプルな操作性
映画学科では、長年にわたり映画用フィルムを使用した授業を行なっている理由もあり、「Cine EIモード」のシンプルな操作性は、教材として優れていると思います。カメラが進化するにつれて覚える機能や設定が数多くなりましたが、「Cine EIモード」はそれらの煩雑さがなく、学生が設定より撮影や表現に集中しやすい環境をつくることができるため、重宝しています。本学が培った伝統と教育方針をそのまま引き継ぐことが可能になりました。
ーニュートラルな映像だからグレーディングしやすい
撮影では、Base ISOを低感度と高感度から選択でき、たとえば暗所での撮影でもノイズが気にならないクリアな映像が撮れます。加えて、S-Log3はダイナミックレンジが広いのでなめらかな階調で表現できます。
また、色の出方がとても「素直」なところも気に入っています。他社製シネマカメラでは特徴的なトーンの色合いのものがあり、個性的で良いときもあるのですが、逆にそのトーンを打ち消さないといけないときがあります。S-Log3/S-Gamut3.Cineで撮影した映像は、映画的でありながら色がニュートラルなため、そこからグレーディング作業がしやすいです。純粋に撮影機材としてみた場合にベースがしっかりしていることは重要なことで、そのような意味でも昔のフィルムカメラでの撮影に通ずるものがあります。
ー撮影への集中力を高める電子式可変NDフィルター
『FX9』『FX6』に関しては、電子式可変NDフィルターが搭載されています。映画なのでシーンに合わせてレンズ交換を行うことがありますが、光量調整のために物理的にマットボックスにNDフィルターを入れることがあります。レンズを交換する度に外す必要があり、手間がかかるのですが、『FX9』『FX6』ならNDフィルターが内蔵されているため、その分の手間が省けます。映画を撮るための便利な機能が搭載されていることで、作品づくりにより没頭できるのは学生にとってはありがたいです。
ー学生の成長を促すCinema Lineの優位性
学生にもCinema Lineの認知度は高く、アルバイト先の撮影現場で見たり使ったりしたことがあるため、本学に導入したときに好感触でした。αシリーズや小型ジンバルを個人で所有している学生にとっては、私物を追加で活用するなど、実習時の小規模撮影における可能性をより広げてくれることにも繋がっています。一昔前では手ブレなどを抑制するのに大変でしたが、ハンディータイプのジンバルなども小型化しており、現在は比較的プロ並みの映像を撮りやすい環境があります。これらの周辺機器は導入したCinema Line カメラとの相性もよく、学生でも映像作品のクオリティーが急速に向上します。
ー学生や教員から好評価のCinema Line
入学して初めてカメラに触れる学生にとっても、学生が操作を学ぶのに適したUIや物理ボタンなどが充実していますし、基本に忠実なボタンのレイアウトなので、学生に身につけてほしい基礎知識を吸収しやすいのが、Cinema Lineの魅力です。また、将来、『VENICE2』や『BURANO』など実際の撮影現場で運用されているハイエンドモデルを扱う際にも学びがつながることを期待しています。教員からの評判もよく、純粋に使いやすいカメラだという声が多いです。ワンマンオペレーションでも使いやすく、クオリティーも担保されているところが特に気に入っているようです。
ー産官学の外部連携型プロジェクトでも活躍
現在、本学では「産官学連携プロジェクト」というものを推進しています。8学科の学生、教員のみならず学外の方とも連携する実践型の授業で、既存のカリキュラムにない自主創造教育の「場」を創出する目的で行われています。今年は特に「地域」にフォーカスし、千葉県富里市や岩手釜石市などへ伺い、地域の魅力を引き出す映像作品づくりに映画学科の学生も参加しました。このように、本学では、校内のみならず、早い段階から実社会に参画し、自ら道をひらく能力を育んでいます。機動力の高いCinema Line カメラでこの活動を支え、これが学生の将来にとって大きな糧になることを期待しています。
映画業界全体では、従来よりも手軽に少人数で撮影できるようになったことで、撮影期間の短縮に拍車がかかっていると思います。また、カメラの進化が撮影の手間を省き、監督を長時間待たせる必要もなく、撮影者として表現力や創造力を発揮しやすくなっていくのではないでしょうか。ソニーのCinema Lineを使うことで、映画制作の可能性はどんどん広がります。そのためにも、まずは基礎力を大学で学び、それを応用していく知識や経験を少しでも積んでほしいと思います。学生を育ててくれるのが、Cinema Line カメラです。
使用機材紹介
日本大学 芸術学部 映画学科
※本ページ内の記事・画像は2024年2月に行った取材を基に作成しています。
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