日本でテレビ放送が始まった1963年に創業した東京テレビセンターのスタジオ事業(浜町スタジオ)と、時代に先駆けインターネット配信を手がけてきた秋葉原パンダスタジオが合併するかたちで2016年に誕生した株式会社PANDASTUDIO.TV。レンタルスタジオ事業を中核に中継・配信事業や機材レンタル、スタジオ構築支援など、映像作りの土台を支える存在として多くのプロフェッショナルから信頼を集めています。今春、その赤坂スタジオに『FX3』が導入された理由と狙いについて、同社、中村 央理雄 様にお話をおうかがいしました。
目次
―まずは、赤坂スタジオがどういう特徴を持ったスタジオなのかを教えてください。
中村:赤坂スタジオはPANDASTUDIO.TVのさまざまなスタジオの中でも、特にオンラインセミナーや企業の情報発信など、オンライン配信系コンテンツの撮影に特化したスタジオです。学識者や企業役員の登場する撮影が多いため、そうした方々がくつろいで撮影に臨めるよう、ゆったりとしたリッチな内装になっているのが大きな特徴のひとつですね。今回、STUDIO 3に『FX3』を導入させていただいています。
―どういった背景で『FX3』を導入することになったのかを聞かせていただけますか?
中村:実はそれまで赤坂スタジオではカムコーダーを中心に撮影を行ってきました。実際、STUDIO 1や2では今でも『PXW-Z280』などが活躍しているのですが、STUDIO 3での撮影は演者が1人の場合が多いため、カメラを振るような操作がほとんどなく、一段と品位の高い画質を求められるケースも多いことから、より高画質なシネマ系カメラ『FX3』の導入を決意しました。
実は当初、シネマ系のカメラをスタジオ導入することには懐疑的な面もありました。画質面で優れている反面、ピントが合わせにくいといった難しさがあるため、配信スタジオ用途には合わないと考えていたのです。ただ、あまりにお問い合わせが多いことから昨年、浜町の本社スタジオにいろいろなメーカーのシネマ系カメラを揃えて性能や使い心地を比較してみたところ『FX3』が飛び抜けて素晴らしくて。それでしばらく社内制作の動画撮影に活用した後、この4月に満を持して赤坂スタジオSTUDIO 3に『FX3』を3台導入しました。また、並行してレンタル機材としても11台の『FX3』を用意しています。ちなみに赤坂スタジオ以外では浜町スタジオに1台の『FX3』が常設されています。
―具体的にはどういった点が気に入っていただけたのでしょうか?
中村:やはりなんといってもオートフォーカス(AF)の精度の高さですね。他社のカメラだとモニター上でピントを合わせたつもりになっていても実際にはきちんと合っていない、ということがおこりがちなのですが、『FX3』だとAF任せでも本当にきれいに撮れるんです。このスタジオ規模の撮影ですとオペレーターひとりで全てをやらねばならないことも多いので、AF精度の高さにはとても助けられています。あと、個人的には同梱XLRハンドルユニットにいわゆるキャノン端子(XLRタイプコネクター)ケーブルを直接挿せるところが気に入っています。音声周りの取り回しがとてもシンプルになるので、現場の負担が大きく減らせるんですよ。
―実際に撮影に使ったお客さまの声で印象に残っているものはありますか?
中村:シリーズ累計で35万部を突破している『もっとすごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA刊)の解説動画をSTUDIO 3で撮影しました。このシリーズでは、前作『すごすぎる天気の図鑑』の時から書籍に盛り込めなかった情報や最新研究の知見を動画で紹介するという試みを行っています。以前は別のビデオカメラで撮影していたのですが、最新の動画用に『FX3』を使ったところ、出演している著者の荒木健太郎さんから「前回や前々回と比べてYouTube上で見たときに高品質に見えました。わりと一目瞭然レベルで素晴らしく高品質になっていると思いました」と喜んでいただけました。
参考:『もっとすごすぎる天気の図鑑』
https://www.youtube.com/c/arakencloud
―それはうれしいですね。
中村:『もっとすごすぎる天気の図鑑』の解説動画はグリーンバックで撮影し、背景に書籍で使われている美しく高精細な雲の映像などを合成しているのですが、『FX3』で撮ることによって、そうした映像に負けないクオリティになり、上手くマッチしたのだろうと考えています。特に色のメリハリや解像感に違いを感じますよね。なにか特別なことをせず、ただカメラを変えただけで画質がここまで向上するというのはありがたいです。コンテンツの画質が向上すると伝わり方もグッと良くなりますから。
―そのほか、撮影機材を『FX3』に変更したことで新しい価値が生み出せたというような話がありましたらお聞かせください。
中村:レンズを交換することで映像の味付けが変えられるのが面白いですね。基本的には『FE 24-105mm F4 G OSS』を使っているのですが、案件によってはF1.8とかのすごく明るいレンズで背景を思い切りぼかしてみたり……。まだ試行錯誤中なのですがそうした点に可能性を感じています。また、ここまでかっこいい映像が撮れるようになると4Kで撮ることに価値が生まれてきます。最近は5G通信の登場でスタジオ外でも4K生配信が現実的になってきましたから、『FX3』を持ち出して、生配信でも映画みたいに美しい映像を実現するということもありそうです。実際、先日撮影したeスポーツイベントの4K生配信では実験的に会場の一番引きの固定カメラに『FX3』を利用し、イベントの盛り上がりをドラマチックに伝えることができました。
―続いて、レンタル機材としての『FX3』についてもお話を聞かせてください。こちらはどういった方にご利用いただけているのでしょうか?
中村:映像制作会社が多いのはもちろん、一般企業からの引き合いを多くいただいています。
―一般企業のお客さまはどういった用途に『FX3』を使われているのでしょうか?
中村:我々と同様、オンラインセミナーなどの映像配信に使われているのではないでしょうか。レンタルを希望するお客さまは、これまでデジタル一眼カメラの「α」で撮っていたのだけど、ステップアップを意識して『FX3』に挑戦してみたという方が多い印象ですね。もちろん、シネマ系のカメラが話題になっているからちょっと触ってみたいという方もたくさんいらっしゃいます。一度使って、リピートするお客さまも多いですね。
―実際に使われたお客さまの感想はいかがでしょう?
中村:ここまででお話しした画質やAFが手軽に使えるところを評価するお客さまが多いですね。ボディがコンパクトなところが良いという方もいらっしゃいます。
―スタジオには『FX3』×3台と旋回型4Kカラービデオカメラ『BRC-X1000』がありますが、どのように使い分けられていますか。
中村:配信の内容や配信に登壇される方の特徴・リクエストに合わせて、使い分けを行っています。『BRC-X1000』は、ワンオペ運用かつ演者が動くような撮影で重宝していますね。PANDA STUDIO.TVは規模・予算感に応じて、さまざまな提案ができるスタジオとなっています。
―最後に今後、PANDASTUDIO.TVが「α」やソニーに期待することをお聞かせください。
中村:先日、事業者向けのイベントで『FX6』に5Gスマートフォンを接続して、撮った動画をその場でクラウドにアップして、別のスタッフがすぐに編集できるといったソリューションを紹介され、ものすごい未来を感じました。そういったことが『FX3』などでも当たり前にできるようになると活用がさらに広がっていきそうです。まだちょっと先の話だろうとは思うのですが、ネットワークやクラウドの活用にはPANDASTUDIO.TVとしてとても期待しています。
―西村正宏社長からもコメントをいただきました。
西村社長:『FX3』をスタジオに導入してまだ日が浅いのですが、すでに多くのお客さまからご好評いただいています。撮った画が明らかに違う、と。そんなふうに喜んでいただけるのは、我々にとって大きなメリットだと感じています。そしてその結果、最近はこの機種指定でスタジオ予約をされるお客さまが増えるという現象が起きているんですよ。これまでそんなことを言われるお客さまはほとんどいなかったのでとても驚いているところです。
使用機材紹介
株式会社PANDASTUDIO.TV
※本ページ内の記事・画像は2022年7月に行った取材を基に作成しています。
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