事例紹介
株式会社TVQ九州放送 様
株式会社TVQ九州放送様は、報道スタジオにおけるメインカメラとして、リモートカメラであるCinema Lineカメラ『FR7』と、周辺のコントロール機器を導入しました。生放送を担うスタジオでの『FR7』採用までの経緯や、導入の成果・感想などを、設備計画から現場での制作技術まで幅広くご担当される、同社技術局 柿山 翔一様に伺いました。
ー報道スタジオの更新で3台の『FR7』を導入
当社には、バラエティ番組の収録などを扱っている制作スタジオと、平日夕方の帯のニュース番組を扱っている報道スタジオの2つがあります。このうち、今回は報道スタジオに『FR7』を3台導入しました。3台の『FR7』のうち1台は、プロンプターを備えたメインのキャスター向け、もう1台は同じくプロンプターを備えた天気キャスター向け、残る1台はスタジオ全体の画角を押さえるためのカメラとして使っています。レンズは全て『FE PZ 28-135mm F4 G OSS』を装着しています。導入のきっかけは設備の老朽化に伴う更新で、将来的な運用更新の可能性を踏まえながら、社内で検討した結果によるものです。
現在のシステム構成としては、3台の『FR7』に対して、2台の『RM-IP500』、システムカメラRCPシリーズとの色調整用に『RCP-3501』、ブラウザ上で設定などを行うためのノートPC、特注のプリセットポジション呼び出し用スイッチボックスを2台備えています。
番組放送中においては、ディレクターがスイッチボックスを操作し、必要に応じてスイッチャーが『RM-IP500』で画角やパン・チルトの微調整を行う運用が主流です。ノートPCは、3台のカメラの設定をまとめて行いたい場合や、NDや絞りなど、数値を見ながら調整したい場合に使用しています。
ー求めていたのは「システムカメラと組み合わせて」使えること
リモートカメラの導入にあり、私たちが必須条件としていたのは「今までと同じリモートオペレーションができること」、「パン・チルト・ズーム動作中でも放送に使える動きの良さ」でした。設備更新前は、ポータブルのシステムカメラとリモート雲台を組み合わせて運用していましたが、その構成をリモートカメラにするために、『FR7』を検討に加えました。
ソニーのカメラは、今までENGカメラや取材用のハンドヘルド型カメラなどでは数多く使ってきていましたが、『FR7』は昨年、報道取材用カメラとして被写界深度が浅く撮れる大判カメラが欲しいと思い、Cinema Lineカメラ『FX30』を導入した際に存在を知りました。
ー実機を通じて画質と操作感の良さを確信
実際に『FR7』の実機を確認したところ、画質が素晴らしく、色調整機能やトーンの選択肢も充実しており、システムカメラに色味を合わせて運用することもできそうだと感じました。さらに、システムカメラRCPシリーズのリモートコントロールパネル『RCP-3501』も組み合わせて使えることが強みに感じました。リモートコントローラー『RM-IP500』の操作感も良く、カメラの動き出しから止まり方まで滑らかで、「これなら生放送中のカメラワークとしても使えそうだな」という好印象を持ちました。
一方で、ニュース番組では被写界深度を深く撮りたいため、大判のイメージセンサーを搭載している部分が気になっていました。しかし、その点も、感度の高さから、被写界深度を十分に深くすることもできるオールマイティさがあることがわかり、安心しました。
当社では今までスタジオでリモートカメラを使ったことはありませんでした。そのため、当初は現場のスタッフから導入を不安視する声もありました。しかし『FR7』を実際に見て触ってもらったところ、すぐにその抵抗感は解消され、納得してもらえたことから導入を決めました。
ー充実した色調整機能でシステムカメラと色合わせ
画質については、『FR7』はS/N比がすごく良いと感じています。これは真っ先に感じた部分です。色調整の機能も充実していて、システムカメラと違和感なく色合わせができています。基本的にシステムカメラ側の色に『FR7』を合わせる調整を行っているのですが、導入当初にソニー業務用カメラの分光特性に沿った色を再現するための新ルック『709tone』を選択した上で、カラーマトリクス調整などを活用して追い込み、以後はその設定のままで運用しています。カメラが違うことに社内の誰からも気づかれていません。
ースタジオ生放送の運用に耐えられるオートフォーカス
設備更新前のシステムカメラ+リモート雲台の組み合わせと比べて『FR7』が優れている点は、オートフォーカス(AF)が使えることです。どの程度実用的になるのか不安に感じていましたが、実際に使い始めてみると、その不安は払拭されました。設定に試行錯誤しましたが、今は「顔・瞳優先」のAFを常時ONにして運用しています。出演者が動いたりしてもしっかりと追従し、正確に素早くフォーカスを合わせてくれます。顔認識のAF性能があるリモートカメラという点では、『FR7』ならではだと感じます。
ー制作スタジオへの『FR7』導入も計画中
今後『FR7』は他の番組でも用途を広げていける実感があります。実際、当社では制作スタジオの更新計画も進んでいますが、そちらにも『FR7』に加えて、ソニーのHDCシリーズのシステムカメラを導入する方向で検討を進めています。いずれも、マスターセットアップユニット『MSU-3000』やリモートコントロールパネル『RCP-3501』を使って設定できる点がプラス要素になっています。
ー固定カメラで運用をしてきた野球中継の解説者席にも
当社では野球中継の番組なども抱えおり、この解説者席にも『FR7』は設置できるのではないかと考えています。解説者席はスペースが狭く、スタッフが入れないので、今までは固定カメラでの運用をせざるを得ませんでした。『FR7』ならば、解説者だけでなくグラウンドを解説者席から引きで見せるなど、カメラに動きをつけたり、新しいアングルの映像を見せたりすることができるようになります。
今回の報道スタジオへの『FR7』の導入は、当社で初めてのリモートカメラの導入でしたが、『FR7』で生放送ができるということを、技術局として社内にアピールできたのは最大の収穫でした。そして『FR7』は、さらに幅広い用途での活用の可能性を感じさせてくれるカメラです。
使用機材紹介
株式会社TVQ九州放送
※本ページ内の記事・画像は2024年2月に行った取材を基に作成しています。
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