事例紹介
ブルーイノベーション株式会社 様
ドローンやロボットを駆使したソリューションによって、現場業務の自動化や社会課題の解決に取り組み続けてきたブルーイノベーション株式会社。同社独自のデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(以下、BEP)」は、ドローンやカメラ、センサーなど、異なるメーカーの異なるデバイスを一元管理し、これらを協調・連携させることで複雑な業務を行えるようにするものです。このBEPを活用した、広大な施設の設備点検ソリューション「BEPサーベイランス」において、ソニーのαと遠隔でカメラを制御できる「Camera Remote SDK」(Software Development Kit)がどのように活用されているのかを、同社顧問の那須 隆志 様、開発の荒田 智行 様、櫻庭 隆史 様に伺いました。
目次
ブルーイノベーション株式会社
顧問 那須 隆志 様
那須:「BEPサーベイランス」とは、我々が「BEP」と名づけたデバイス統合プラットフォームを用いて実現した大規模施設を対象とした設備点検ソリューションです。カメラを始めとするさまざまなセンサー類を搭載したロボットを統合的にコントロールできる「BEP」の特性を利用し、それぞれの施設に合わせて柔軟にカスタマイズされたロボットによる設備点検を提供することを目指しました。
那須:「BEPサーベイランス」のはじまりは、電力会社のお客さまから発電所の巡回点検を自動化したいという相談を受けたことでした。その発電所では当時3名の点検員が1日1回、3時間かけて設備に異常がないかを確認する巡回業務を行っており、それが大きな負担になっていました。開発当初はドローンでの巡回を検討していましたが、施設が広く点検箇所も多いため、より長時間動作できるAGV(Automatic Guided Vehicle/無人搬送車)に切り換え、そこに『α7C』を搭載しました。その発電所では2019年から実証実験開始し、現在も実証実験とサービスのリリースを繰り返しながら、提供内容をブラッシュアップしています。
那須:「BEP」の売りの一つに、さまざまなメーカーのデバイスをインテグレーションできる柔軟性の高さがあるのですが、これは移動や撮影など、個々のデバイスが持つ機能の制御をむやみに独自開発せず、SDKを積極的に用いることで実現しています。
荒田:今回、「BEPサーベイランス」で使用するAGVに搭載するカメラの選定にあたり、さまざまな選択肢を比較・検討したのですが、「Camera Remote SDK」は他のデバイスと組み合わせて使うことを想定して作られており、ほとんどの操作を人間が操作するのと同じように実現できる点を高く評価しました。また、AGVの小型化・低コスト化のためにRaspberry Piを活用していたので、その点でソニーの「Camera Remote SDK」が組み込みやすかった点も大きいです。
ブルーイノベーション株式会社
システム開発部マネージャー 荒田 智行 様
荒田:AGVが点検するメーターの前など目的地に到着した後、カメラのシャッターを切って静止画を撮影するというコマンドをBEPから出すことに使っています。この際、同時に複数枚高速連写し、その中から最も安定した画質が期待できる最後の1枚をサーバーに転送するようにしています。こうしたシーンにおいて、「Camera Remote SDK」は非常に安定しており、想定外の動作をして対策に苦慮したといったことは起きていません。
ブルーイノベーション株式会社
システム開発部シニアロボットエンジニア 櫻庭 隆史 様
櫻庭:画質の良さです。点検(撮影)内容には、デジタルメーター、アナログメーターのほか、水流計のような測量もあるため、目盛りなどをしっかり確認できなければなりません。この際、AGVが毎回、メーターの近くまで寄れれば良いのですが、設備によってはAGVが入り込めない場所にメーターが配置されていることもあるため、拡大表示に耐えられる、αの高解像度、高画質が必要だったのです。
「BEPサーベイランス」開発初期は産業用カメラの利用を想定していたのですが、昨今、トンネルなど大型建造物壁面の亀裂検査などに、デジタル一眼カメラを使う流れを当時ニュースで見て、我々も取り入れました。
那須:そうですね。本件とは別件なのですが、お客様に『α7C』を積んだロボットで撮影したデモ映像と、産業用カメラを搭載した実機で撮影した映像の両方をお見せして、αの画質の良さに感心されていたことがありました。
荒田:「BEPサーベイランス」開発のきっかけとなった発電所は、撮影したデータを人間が目視でしっかり点検・確認することをとても重視しています。その点、αは暗かったり逆光だったりする場所でもフルオートで美しく記録してくれるので助かっていますね。本当に真っ暗な場所ではLEDライトで照らす必要があるのですが、ほとんどの場合、照明なしでも明るく、ブレなく撮影できます。
那須:そのほか、「BEPサーベイランス」をご利用いただいているお客さまの要望に、将来的にはAGVで撮影した写真をAIで解析(機械学習)し、点検・確認作業そのものを自動化したいというものがあります。その際、学習データは高画質な方が精度を上げられますから、αの高画質はありがたいです。
那須:「Camera Remote SDK」に対応するαの中で最もコンパクトで軽量だったからです。AGVそのものはドローンよりもかなり重い荷物を載せられますが、カメラを載せて向きを変えるための雲台(カメラ台)ユニットには厳しい重量制限があります。そのため、将来的に重いズームレンズを装着する可能性も考えると、小型軽量な『α7C』は理想的な選択肢でした。また、我々としては「BEPサーベイランス」を低価格に提供したいという思いもあったことから、『α7C』の入手性に優れているところにも助けられています。
那須:現在は電力関係を中心に5~6社に導入いただき、実証実験として使っていただきながら実用化に向けて機能を向上、追加しています。お客さまからは『α7C』のおかげでしっかりメーターが読めると好評で、特に僻地での点検作業をリモートで行うことによる業務効率向上、コスト低減の効果は高くご評価いただいています。
那須:いえ、すでに鉄道会社で車両の点検に使っていただくことが決まっています。そのほか、細かいことはまだお話できないのですが、今後さらに多くの業界や用途に拡大していく見込みです。「BEPサーベイランス」はAGV限定のソリューションではなく、ドローンや据え置きカメラを使った監視も想定しており、そこでもαが活躍してくれるのではないかと期待しています。
荒田:ズーム自体はすでに「Camera Remote SDK」で制御できるのですが、AGVの停止位置がどうしても細かくずれてしまうため、機械的な操作でピタっと真ん中にメーターを収めた状態でズーミングするといったことができません。それをカメラ側で点検設備を識別して、ズーム倍率や向きを自動制御してくれるようになると開発の効率がさらに大きく高まるため、いつかそういう未来が来てくれることに期待しています。
那須:また、現在は「BEPサーベイランス」での利用に留まっていますが、今後は「Camera Remote SDK」の柔軟性やαの高画質を活かして、ドローンを使った高所点検や、オルソ画像(ひずみ等を補正した航空写真)を用いた測量などに活用していけるのではないかとも考えています。
使用機材紹介
ブルーイノベーション株式会社
https://www.blue-i.co.jp※本ページ内の記事・画像は2023年1月に行った取材を基に作成しています。