事例紹介
イームズロボティクス株式会社 様
産業用ドローン(無人航空機)の開発から運航まで一貫して手掛けるイームズロボティクス株式会社。測量・点検・警備・物流など幅広い業種にサービスを展開し、実証実験や研究機関との開発も活発に行っています。測量や点検では、ドローンに搭載するカメラとしてデジタル一眼カメラαを長らく採用。さらにαを『Camera Remote SDK』で組み込み、その作業効率の加速化を実現しています。なぜαを使い続けるのか、その背景にある理由や、『Camera Remote SDK』によって実現した課題解決について、曽谷 英司 様、銭谷 彰 様、渋谷 国広 様、丸山 賢太郎 様にお伺いしました。
イームズロボティクス株式会社
代表取締役社長 曽谷 英司 様
曽谷:当社では、多方面の用途それぞれに特化したドローンの開発やドローンソリューションを手掛けています。以前は測量市場でのドローンの活用が伸びていましたが、近年は橋梁や風力発電設備といった構造物の点検でのドローン需要も増えてきています。
銭谷:それらのお客様に共通しているのが、高解像度での画像撮影です。写真測量では、画像をソフトウェア上で合成し、データを3D化する流れが一般的ですが、その精度を上げるために高解像度な画像が常に求められます。点検作業においても、建物や構造物などの細部の把握のため、やはり解像度の高さが求められます。
イームズロボティクス株式会社
(モニター)開発本部 技術開発担当部長 渋谷 国広 様
(右から)開発本部 丸山 賢太郎 様、代表取締役常務 銭谷 彰 様
丸山:解像度の高さはドローン操作やドローンを用いた点検作業においても重要な要件です。建物や構造物にドローンを至近距離まで近づけて撮影するには破損などのリスクがあるため、被写体から距離を取って撮影する必要があります。一方、望遠レンズは重量や筐体の大きさが影響してドローンへの搭載が困難です。従って、小型・軽量な標準から広角レンズで撮影せざるを得ないため、高解像度で撮影できるカメラが必要でした。
銭谷:ドローンは、ジンバルの性能の都合から、積載できる重量やバランスに制約があります。より高解像に撮影したいという要望と、小型・軽量という2つの要求を両立する、その最適解として当社ではミラーレスのデジタル一眼カメラ αにたどりつきました。
今でこそ、幅広いメーカーがミラーレス一眼カメラをラインアップしていますが、αを使い続けているのには理由があります。軽さはもちろんのこと、解像度やオートフォーカス・連写性能における速度と信頼性が優れている点です。ドローンは飛行時間が限られるため、短時間でより多くの枚数の画像を効率よく撮影しなければなりません。ピントが合う速度が遅いと撮影に時間がかかりますし、精度が低いと二度手間になる場合もあります。また、連写でバッファが詰まってしまうと、撮りこぼしにもつながります。オートフォーカス性能と連写性能はドローンでの点検作業の結果を左右させます。その点、ドローン機体の要件とお客様の要望に、αは応え続けてくれています。
銭谷:ドローンとαの組み合わせは、建物の外観点検、測量、一部で重要施設の監視や警備などで稼働しています。基本は画像データ納品ですが、私たちが3D化してから納品するケースもあります。αは、解像度優先の用途では『α7R Ⅳ』といったRシリーズ、監視や警備などの夜間での高感度性能が求められる用途には『α7S Ⅲ』といったSシリーズなどを中心に使用しています。
丸山:実証実験の段階では、お客様からいろいろな画角で撮影してみたいという要望があるため、用途や目的、現場の特徴を見てカメラやレンズを使い分けています。レンズは、最初にズームレンズを装着して、要望に見合った画角や解像度のバランスを探ります。そして、仕様が固まった段階で、軽量・コンパクトで要件にあった画像が撮れる単焦点レンズに替えて本格的な撮影を行うというケースが比較的多いと思います。
単焦点レンズは、24mm~50mmあたりの焦点距離のものを中心に使用しています。用途に応じて選べるレンズラインアップの豊富さもαの魅力だと感じます。
渋谷:導入の経緯は、フォーカスなどカメラのさまざまな設定を地上からコントロールしたい、撮影している画像をリアルタイムで確認したい、といったお客さまからの要望が背景にあります。当社の社員から『Camera Remote SDK』の存在を教えてもらい、普段から使用していた『α7R Ⅳ』などでも対応していたため、早速試してみました。
『Camera Remote SDK』は、当社製のドローンに搭載しているLinux ボードコンピューターとαをUSBインターフェースで接続することによって、簡単に使うことができました。これが導入に至った大きなポイントでした。また、SDKのドキュメントやサンプルコードが充実していたこともあり、コントロール機能の実装もスムーズにできました。プログラミング言語としても、当社で広く使っているC++言語ベースだったのも、とても良かったです。
渋谷:αと『Camera Remote SDK』を搭載したドローンは、風力発電設備の点検作業などで活用しています。シャッター速度や絞り、レリーズ、ファイル転送などを制御しながら画像撮影を行っています。導入が思っていた以上に簡単で、お客様からの要望をスピーディーに解決できたため、とても満足しています。
この結果、点検作業における生産性は向上したと思います。
以前までは、メモリーカードに保存された画像を全てのフライトを終えた後にお客様がチェックし、気になった点検箇所などは翌日以降に再フライトして詳細に再撮影する、といった手間がかかっていました。現在はHDMI出力端子からの映像を無線で地上にストリーミングして状況を確認し、SDKを活用してリモートでカメラ制御ならびに撮影をしています。上空で画像が撮影される度にリアルタイムで地上に転送されるので、ドローンを飛行させながらその場で画像を目視確認できるようになりました。
また、風力発電設備に限らず点検作業では、撮影画像の均質性を確保するため、露出はオートではなく固定で撮影をします。しかし、実際はさまざまなアングルからの撮影が必要となるので、アングルによっては順光になったり、逆光になったりします。今までは、その都度、ドローンを下ろして露出の設定を変えていました。しかし、『Camera Remote SDK』を導入してからは、ドローンを地上に下ろすことなく、シャッター速度や絞りを調整できるようになりました。これらの作業工数の短縮はとても大きなメリットだと思います。
渋谷:αと『Camera Remote SDK』の組み合わせは始めて間もないですが手ごたえを感じています。未実装のリモートズーム制御など、今後は機能の拡張を進めていく予定です。
銭谷:まだCamera Remote SDKを実体験していないお客様からも活用したい要望が出ているので、積極的に提案し、この組み合わせの活用幅を拡げたいと考えています。
曽谷:当社では、2023年度に1人で5台、2024年度には10台、2025年度には20台といった複数のドローンを同時コントロールできる技術開発を進めています。点検や測量においては、αと『Camera Remote SDK』の組み合わせを視野に入れています。
銭谷:業界内では、ドローンのオペレーションに極力人員を割さかない方法を模索する傾向が強くなっています。現在は、フライト前に行っている細かなセッティングなども『Camera Remote SDK』を活用しながら、一層の自動化を進めていきたいと検討している最中です。
使用機材紹介
イームズロボティクス株式会社
https://www.eams-robo.co.jp/※本ページ内の記事・画像は2023年5月に行った取材を基に作成しています。